Artwork

コンテンツは 藤 真一 によって提供されます。エピソード、グラフィック、ポッドキャストの説明を含むすべてのポッドキャスト コンテンツは、藤 真一 またはそのポッドキャスト プラットフォーム パートナーによって直接アップロードされ、提供されます。誰かがあなたの著作権で保護された作品をあなたの許可なく使用していると思われる場合は、ここで概説されているプロセスに従うことができますhttps://ja.player.fm/legal
Player FM -ポッドキャストアプリ
Player FMアプリでオフラインにしPlayer FMう!

143 第132話

15:26
 
シェア
 

Fetch error

Hmmm there seems to be a problem fetching this series right now. Last successful fetch was on March 29, 2024 21:48 (28d ago)

What now? This series will be checked again in the next day. If you believe it should be working, please verify the publisher's feed link below is valid and includes actual episode links. You can contact support to request the feed be immediately fetched.

Manage episode 336817701 series 2621156
コンテンツは 藤 真一 によって提供されます。エピソード、グラフィック、ポッドキャストの説明を含むすべてのポッドキャスト コンテンツは、藤 真一 またはそのポッドキャスト プラットフォーム パートナーによって直接アップロードされ、提供されます。誰かがあなたの著作権で保護された作品をあなたの許可なく使用していると思われる場合は、ここで概説されているプロセスに従うことができますhttps://ja.player.fm/legal
このブラウザでは再生できません。
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら

「…わかった。」
佐々木死亡の報が陶にもたらされたのは4月29日の夜になった頃だった。
「注意を怠るな。」
電話を切ると陶は天を仰いだ。
「佐々木統義警部補。こいつは俺の石川の分身だ。」
「本部長の…。」
「ああ石川における…な。こいつを貴様に紹介する。俺の分身だと思って気軽に話してくれ。きっと貴様の力になるはずだ。」118
「キャプテンの分身が死んだ…。」
佐々木は陶の石川における工作のハブ役を担っていた。
捜査一課である彼は同部署に数名の協力者をつくり、彼らをたくみにコントロールし、チェス組と言われる仁川、光定、空閑、朝戸、紀伊のハンドリングをしていた。そしてかれらが暴走をしないようその監視を行っていた。
明後日、5月1日金曜。この日の夕刻に朝戸が金沢駅でヤドルチェンコらとテロを起こす手はずとなっている。
あと二日。あと二日で重大な局面を迎えるというときの主力戦力の喪失。
陶の喪失感は想像を絶するものだった。
「一旦自由の身になってアルミヤプラボスディアの動きに目を光らせたいのです。5月1日。ここで石川の部隊が金沢駅で何らかのテロを起こします。やつらはそれで今手一杯です。おそらくマルトクも何かしらの兆候を見つけてそれを阻止するよう動いているでしょう。石川部隊、マルトクこの両者が睨み合う中、奴らだけノーマークとなるのはまずいです。」116
「アルミヤプラボスディア…。」
受話器を手にした陶は電話をかけ始めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
携帯バイブ音
助手席に置かれた携帯電話が震えた。
非通知の表示がされている。
ーお構いなしの直電。相当焦ってると見た。
イヤホンを装着した椎名はそれをそれを膝上に起き、通話ボタンを押した。
--・-- -・--・ ・・-・- ・-- --・・ ・・--・ ・・・ -・・ ・・ ---・- ・-・-- ・・ --・-- -・-・  ・・-・ ・・- ・- ・---・ --
「アルミヤプラボスディアニ チュウイセヨ」
椎名はマイク部分を指でなぞる。
「ナニガアッタ」
「トウホウノ エス サツガイサレタ」
「イツノコトダ」
「サンンジカンマエ」
椎名は時計を見る。
時刻は18時半。
高橋勇介を名乗る電話を会社で受けたのは昼頃だ。
「タカハシユウスケカラ デンワアッタ」
「コロサレタノハ ソイツダ」
「イシカワノ ハブカ?」
「ソウダ」
「タイミングガ ワルイ」
「ゲンザイ ゲンバハ コンラン トウホウカラノシジハダセナイ」
「リョウカイ コチラノウゴキハ マカセテクレ」
「リョウカイ イチニンスル クレグレモ チュウイサレタシ」
電話を切った椎名はそれを再び助手席に置く。
ー実の兄が殺されてもまったく感情を出さない。
ーさすがプロ。
ーいや、それとも…。
ーま、どこかで確かめてみよう。
ーそれまではあんたの言うとおり一任されますよ。高橋さん。
椎名の車は郊外のネットカフェに滑り込んだ。
車のドア音
歩く音
自動ドア
「いっらしゃいませ。」
「個室開いてますか。」
小声で
「なんで来たんですか。それらしい人間がマークしてますよ、この店。」
「心配ない。いつもの部屋空いてる?」
端末を操作し部屋の空き状況を確認した店員はこくりと頷く。
「迷惑はかけないよ。」
ドア閉める音
個室に入った椎名は荷物を置き、部屋の隅にあるコンセント口に手を伸ばす。
カバー部分を指でつまみ、上下左右に揺らすとそれは簡単に外れた。
外れた場所は空洞であり、隣の部屋と繋がっていた。
隣の部屋から携帯電話が差し出された。
椎名はそれを受け取り、自分の持っていたものを向こう側に渡す。
続いて向こう側からメモ用紙が送られてきた。
紙を広げる音
「всё чистоオールクリア…。」
「その部屋の中は調べ済みです。盗聴器も何もありません。安心して話せます。」
となり部屋から声が聞こえた。
「そうか。」
「矢高さんが公安特課の攪乱をしているとのベネシュ隊長からの伝言です。」
「三時間前に陶の石川におけるハブ役を殺害したそうだな。」
「はい。」
「残念ながらそのハブ役は公安特課の人間ではない。捜査一課だ。」
「その件は矢高さんの本来の仕事じゃありません。」
「行きずりの犯行だとでも?」
「矢高さんは矢高さんの考えが合ってのことでしょう。」
「では彼は具体的に何を。」
「公安特課の古参に古田という人物がいます。70過ぎの老人ともいえるベテランです。この人物とチェス組の朝戸を引き合わせるよう誘導しました。」
「それがなぜ公安特課の攪乱になると言うんだ。朝戸はテロの実行部隊。テロが未然に防がれる恐れがあるではないか。」
「古田は暴走しています。」
「なに?」
「例のアレの影響を受け、公安特課の捜査から外されました。」
「例のアレか…。」
「はい。石川大学病院のルートのほうです。」
「光定の人体実験か。」
「古田は捜査から外されたことに不服だそうで、何かしらの功を立てて周囲を見返そうと必死です。」
「功を焦っているか…。」
「はい。そこにテロ事件の実行予定の人物をぶつけ、その古田の暴走を煽り混乱を巻き起こす算段のようです。」
「最終的に潰し合えばそれでよいということか。」
「はい。」
「だがそれはリスクが高い。もしも古田が暴走しなかったらどうする。テロは実行されず計画はぱあになるぞ。」
「その煽りに矢高さんは傾注する。そのための佐々木殺害だとも聞いています。」
「佐々木…。佐々木というのかその三時間前に殺された男は。」
「はい。この佐々木がチョロチョロ動いているのが目障りだったようです。」
「深謀遠慮の仁川さんにしては随分と短絡的に見えますが。」
「いやいやいや、高橋さんのことを思ってのことですよ。」
「勇介にひとことはありますか。」
「心配いりません。お任せください。」124
「まぁ俺も目障りだったんだがね。」
「ベネシュ隊長からまだあります。」
「なんだ。」
「自衛隊の情報部隊に注意されたし。」
「自衛隊?」
「はい。オフラーナ系の公安特課の情報は矢高さんが目を光らせてますので、その動きは察知できます。」
「うん。」
「オフラーナ系のチェス組によるテロの決行は明後日の18時。光定公信が公安特課に転んだと思われる状況から、ある程度は奴らはそれをつかんでいると判断して良いでしょう。」
「だな。」
「ただその中で公安特課の連中がわれわれトゥマンをマークしている節が全く見えないんです。」
「というと。」
「あえて泳がされているのではないかと思えるほど、我々に触れる捜査をしている形跡が見えない。」
「なるほど。公安特課と自衛隊の情報部で役割を分担していると。」
「はい。我々トゥマンは自衛隊情報部の監視対象になっている可能性があります。」
「だとしたら日本の情報機関の動きというのも、なかなか優秀であるな。」
「はい。」
「秘密警察には秘密警察。軍には軍。やるじゃないか。」
「したがって十分に注意をされたいとのベネシュ隊長からの伝言です。」
「問題ない。任せてくれ。」
「頼もしいお言葉です。ベネシュ隊長は仁川少佐に全幅の信頼を寄せています。」
「Заслуженный. 光栄だ。」
「あとこれを。」
壁の向こう側から洋型の封筒がねじ込まれた。
「プリマコフ中佐からです。」
仁川はそれ開き、目を落とした。
同志少佐。
君のように深く謀を巡らせることができる人材が、日本という東方の国には数多く存在する。そのことを君から聞かされたとき、私は絶望と共に光明を見いだした。
なぜなら君が我が共和国人民であるからだ。
君がこの遠大なる作戦を私に提案してきたのはいつの頃だっただろうか。私は君の時空を超越した作戦内容を聞き、心躍らせずにはいられなかった。作戦はすぐに私から参謀本部へご提案申し上げた。
共和国人民としての模範的価値観に基づいた君の深謀に舌を巻く彼らの様子を見たとき、私は同志少佐を部下に持ったことを誇らしく思った。あれから6年。同志少佐の作戦は実行に移され、今まさにその成功を見ようとしている。
同志少佐よ。作戦が成功の暁には、日本で共に祝杯を挙げよう。
そして堂々たる威厳を持って凱旋しよう。
英雄のひとりとして君の名前はベルゼグラードの戦勝碑に刻まれることだろう。
同志少佐。今こそ撃鉄を起こせ。反共主義者に鉄槌を下すのだ。
我が祖国に栄光あれ。
「これは人目に触れると不味い。」
こう言って仁川はそれを壁の向こうに返した。
「焼却処分を命ず。」
「はい。」
「中佐には仁川、命に代えてもこの作戦成功させますとお伝えしてくれ。」
「かしこまりました。」
「ベネシュ隊長とは今後はこの携帯を使えば良いのだな。」
仁川は先ほど渡された携帯を触る。
「はい。メッセージアプリも音声通話も他には漏れない仕様となっています。」
「これで矢高とは連絡は取れないのか。」
「矢高さんですか?」
「ああ。隊長に確認してくれ。」
「はい。」
ここらへんでおしまいだと言い、仁川はコンセント口の蓋を閉めようとした。
「Слава Отечеству.祖国に栄光あれ。」
「…。」
「少佐?」
「Слава Отечеству.祖国に栄光あれ。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【Twitter】
https://twitter.com/Z5HaSrnQU74LOVM
ご意見・ご感想・ご質問等は公式サイトもしくはTwitterからお気軽にお寄せください。
皆さんのご意見が本当に励みになります。よろしくおねがいします。
すべてのご意見に目を通させていただきます。
場合によってはお便り回を設けてそれにお答えさせていただきます。
  continue reading

100 つのエピソード

Artwork

143 第132話

オーディオドラマ「五の線3」

0-10 subscribers

published

iconシェア
 

Fetch error

Hmmm there seems to be a problem fetching this series right now. Last successful fetch was on March 29, 2024 21:48 (28d ago)

What now? This series will be checked again in the next day. If you believe it should be working, please verify the publisher's feed link below is valid and includes actual episode links. You can contact support to request the feed be immediately fetched.

Manage episode 336817701 series 2621156
コンテンツは 藤 真一 によって提供されます。エピソード、グラフィック、ポッドキャストの説明を含むすべてのポッドキャスト コンテンツは、藤 真一 またはそのポッドキャスト プラットフォーム パートナーによって直接アップロードされ、提供されます。誰かがあなたの著作権で保護された作品をあなたの許可なく使用していると思われる場合は、ここで概説されているプロセスに従うことができますhttps://ja.player.fm/legal
このブラウザでは再生できません。
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら

「…わかった。」
佐々木死亡の報が陶にもたらされたのは4月29日の夜になった頃だった。
「注意を怠るな。」
電話を切ると陶は天を仰いだ。
「佐々木統義警部補。こいつは俺の石川の分身だ。」
「本部長の…。」
「ああ石川における…な。こいつを貴様に紹介する。俺の分身だと思って気軽に話してくれ。きっと貴様の力になるはずだ。」118
「キャプテンの分身が死んだ…。」
佐々木は陶の石川における工作のハブ役を担っていた。
捜査一課である彼は同部署に数名の協力者をつくり、彼らをたくみにコントロールし、チェス組と言われる仁川、光定、空閑、朝戸、紀伊のハンドリングをしていた。そしてかれらが暴走をしないようその監視を行っていた。
明後日、5月1日金曜。この日の夕刻に朝戸が金沢駅でヤドルチェンコらとテロを起こす手はずとなっている。
あと二日。あと二日で重大な局面を迎えるというときの主力戦力の喪失。
陶の喪失感は想像を絶するものだった。
「一旦自由の身になってアルミヤプラボスディアの動きに目を光らせたいのです。5月1日。ここで石川の部隊が金沢駅で何らかのテロを起こします。やつらはそれで今手一杯です。おそらくマルトクも何かしらの兆候を見つけてそれを阻止するよう動いているでしょう。石川部隊、マルトクこの両者が睨み合う中、奴らだけノーマークとなるのはまずいです。」116
「アルミヤプラボスディア…。」
受話器を手にした陶は電話をかけ始めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
携帯バイブ音
助手席に置かれた携帯電話が震えた。
非通知の表示がされている。
ーお構いなしの直電。相当焦ってると見た。
イヤホンを装着した椎名はそれをそれを膝上に起き、通話ボタンを押した。
--・-- -・--・ ・・-・- ・-- --・・ ・・--・ ・・・ -・・ ・・ ---・- ・-・-- ・・ --・-- -・-・  ・・-・ ・・- ・- ・---・ --
「アルミヤプラボスディアニ チュウイセヨ」
椎名はマイク部分を指でなぞる。
「ナニガアッタ」
「トウホウノ エス サツガイサレタ」
「イツノコトダ」
「サンンジカンマエ」
椎名は時計を見る。
時刻は18時半。
高橋勇介を名乗る電話を会社で受けたのは昼頃だ。
「タカハシユウスケカラ デンワアッタ」
「コロサレタノハ ソイツダ」
「イシカワノ ハブカ?」
「ソウダ」
「タイミングガ ワルイ」
「ゲンザイ ゲンバハ コンラン トウホウカラノシジハダセナイ」
「リョウカイ コチラノウゴキハ マカセテクレ」
「リョウカイ イチニンスル クレグレモ チュウイサレタシ」
電話を切った椎名はそれを再び助手席に置く。
ー実の兄が殺されてもまったく感情を出さない。
ーさすがプロ。
ーいや、それとも…。
ーま、どこかで確かめてみよう。
ーそれまではあんたの言うとおり一任されますよ。高橋さん。
椎名の車は郊外のネットカフェに滑り込んだ。
車のドア音
歩く音
自動ドア
「いっらしゃいませ。」
「個室開いてますか。」
小声で
「なんで来たんですか。それらしい人間がマークしてますよ、この店。」
「心配ない。いつもの部屋空いてる?」
端末を操作し部屋の空き状況を確認した店員はこくりと頷く。
「迷惑はかけないよ。」
ドア閉める音
個室に入った椎名は荷物を置き、部屋の隅にあるコンセント口に手を伸ばす。
カバー部分を指でつまみ、上下左右に揺らすとそれは簡単に外れた。
外れた場所は空洞であり、隣の部屋と繋がっていた。
隣の部屋から携帯電話が差し出された。
椎名はそれを受け取り、自分の持っていたものを向こう側に渡す。
続いて向こう側からメモ用紙が送られてきた。
紙を広げる音
「всё чистоオールクリア…。」
「その部屋の中は調べ済みです。盗聴器も何もありません。安心して話せます。」
となり部屋から声が聞こえた。
「そうか。」
「矢高さんが公安特課の攪乱をしているとのベネシュ隊長からの伝言です。」
「三時間前に陶の石川におけるハブ役を殺害したそうだな。」
「はい。」
「残念ながらそのハブ役は公安特課の人間ではない。捜査一課だ。」
「その件は矢高さんの本来の仕事じゃありません。」
「行きずりの犯行だとでも?」
「矢高さんは矢高さんの考えが合ってのことでしょう。」
「では彼は具体的に何を。」
「公安特課の古参に古田という人物がいます。70過ぎの老人ともいえるベテランです。この人物とチェス組の朝戸を引き合わせるよう誘導しました。」
「それがなぜ公安特課の攪乱になると言うんだ。朝戸はテロの実行部隊。テロが未然に防がれる恐れがあるではないか。」
「古田は暴走しています。」
「なに?」
「例のアレの影響を受け、公安特課の捜査から外されました。」
「例のアレか…。」
「はい。石川大学病院のルートのほうです。」
「光定の人体実験か。」
「古田は捜査から外されたことに不服だそうで、何かしらの功を立てて周囲を見返そうと必死です。」
「功を焦っているか…。」
「はい。そこにテロ事件の実行予定の人物をぶつけ、その古田の暴走を煽り混乱を巻き起こす算段のようです。」
「最終的に潰し合えばそれでよいということか。」
「はい。」
「だがそれはリスクが高い。もしも古田が暴走しなかったらどうする。テロは実行されず計画はぱあになるぞ。」
「その煽りに矢高さんは傾注する。そのための佐々木殺害だとも聞いています。」
「佐々木…。佐々木というのかその三時間前に殺された男は。」
「はい。この佐々木がチョロチョロ動いているのが目障りだったようです。」
「深謀遠慮の仁川さんにしては随分と短絡的に見えますが。」
「いやいやいや、高橋さんのことを思ってのことですよ。」
「勇介にひとことはありますか。」
「心配いりません。お任せください。」124
「まぁ俺も目障りだったんだがね。」
「ベネシュ隊長からまだあります。」
「なんだ。」
「自衛隊の情報部隊に注意されたし。」
「自衛隊?」
「はい。オフラーナ系の公安特課の情報は矢高さんが目を光らせてますので、その動きは察知できます。」
「うん。」
「オフラーナ系のチェス組によるテロの決行は明後日の18時。光定公信が公安特課に転んだと思われる状況から、ある程度は奴らはそれをつかんでいると判断して良いでしょう。」
「だな。」
「ただその中で公安特課の連中がわれわれトゥマンをマークしている節が全く見えないんです。」
「というと。」
「あえて泳がされているのではないかと思えるほど、我々に触れる捜査をしている形跡が見えない。」
「なるほど。公安特課と自衛隊の情報部で役割を分担していると。」
「はい。我々トゥマンは自衛隊情報部の監視対象になっている可能性があります。」
「だとしたら日本の情報機関の動きというのも、なかなか優秀であるな。」
「はい。」
「秘密警察には秘密警察。軍には軍。やるじゃないか。」
「したがって十分に注意をされたいとのベネシュ隊長からの伝言です。」
「問題ない。任せてくれ。」
「頼もしいお言葉です。ベネシュ隊長は仁川少佐に全幅の信頼を寄せています。」
「Заслуженный. 光栄だ。」
「あとこれを。」
壁の向こう側から洋型の封筒がねじ込まれた。
「プリマコフ中佐からです。」
仁川はそれ開き、目を落とした。
同志少佐。
君のように深く謀を巡らせることができる人材が、日本という東方の国には数多く存在する。そのことを君から聞かされたとき、私は絶望と共に光明を見いだした。
なぜなら君が我が共和国人民であるからだ。
君がこの遠大なる作戦を私に提案してきたのはいつの頃だっただろうか。私は君の時空を超越した作戦内容を聞き、心躍らせずにはいられなかった。作戦はすぐに私から参謀本部へご提案申し上げた。
共和国人民としての模範的価値観に基づいた君の深謀に舌を巻く彼らの様子を見たとき、私は同志少佐を部下に持ったことを誇らしく思った。あれから6年。同志少佐の作戦は実行に移され、今まさにその成功を見ようとしている。
同志少佐よ。作戦が成功の暁には、日本で共に祝杯を挙げよう。
そして堂々たる威厳を持って凱旋しよう。
英雄のひとりとして君の名前はベルゼグラードの戦勝碑に刻まれることだろう。
同志少佐。今こそ撃鉄を起こせ。反共主義者に鉄槌を下すのだ。
我が祖国に栄光あれ。
「これは人目に触れると不味い。」
こう言って仁川はそれを壁の向こうに返した。
「焼却処分を命ず。」
「はい。」
「中佐には仁川、命に代えてもこの作戦成功させますとお伝えしてくれ。」
「かしこまりました。」
「ベネシュ隊長とは今後はこの携帯を使えば良いのだな。」
仁川は先ほど渡された携帯を触る。
「はい。メッセージアプリも音声通話も他には漏れない仕様となっています。」
「これで矢高とは連絡は取れないのか。」
「矢高さんですか?」
「ああ。隊長に確認してくれ。」
「はい。」
ここらへんでおしまいだと言い、仁川はコンセント口の蓋を閉めようとした。
「Слава Отечеству.祖国に栄光あれ。」
「…。」
「少佐?」
「Слава Отечеству.祖国に栄光あれ。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【Twitter】
https://twitter.com/Z5HaSrnQU74LOVM
ご意見・ご感想・ご質問等は公式サイトもしくはTwitterからお気軽にお寄せください。
皆さんのご意見が本当に励みになります。よろしくおねがいします。
すべてのご意見に目を通させていただきます。
場合によってはお便り回を設けてそれにお答えさせていただきます。
  continue reading

100 つのエピソード

すべてのエピソード

×
 
Loading …

プレーヤーFMへようこそ!

Player FMは今からすぐに楽しめるために高品質のポッドキャストをウェブでスキャンしています。 これは最高のポッドキャストアプリで、Android、iPhone、そしてWebで動作します。 全ての端末で購読を同期するためにサインアップしてください。

 

クイックリファレンスガイド