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142 第131話

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「はい。夜の警邏中に発見しました。」
朝の港町は騒然としていた。
事情聴取を受けるのはこの港町の駐在、矢高慎吾。
「発見時からのこの状態でしたか。」
「はい。」
港の浜に立つ彼の前には横たわる2体の遺体があった。
「過去にこの浜から姿を消した特定失踪者がいますので、毎晩巡回を怠らないようにしとりました。」
「昨日の晩は特に変わったことはありませんでしたか?これらの遺体を発見するまでに。」
矢高はしばらく考える。
「いえ。特には。」
「そうですか…。」
「あ。」
「なんです?」
「いや、気のせいです。」
「何でも良いです。気になったこと教えてください。」
「言われてみれば、珍しいものを見たかもしれません。」
「珍しいもの?」
「はい。たばこ吸っとる人居ました。」
ーえ…?
「ほらあすこの民宿あるでしょう。」
矢高は指さす。
「ここらの人は夜は基本外に出ません。台風が来るとかでどうしても船の様子を見ないかん時くらいしか、夜に外出んがです。」
「…。」
「けど昨日の夜はあそこの宿泊客ですかね。そとでたばこ吸っとる人居ったんです。多分宿の主人にも止められたと思うんですが。」
ーこいつ見とったんか…。
「んにしても物騒ですね。ふたりとも殺られた形跡ありますから、どこかにホシが潜伏しとる可能性がありますね。」
このときの矢高は聴取する佐々木から目をそらし、海の方を見つめた。
ーお前だ。お前しか居らんやろ。矢高。
ーにしてもひとりでふたりをこうもあっさりと返り討ちにあわせる…。
ー相当の腕の持ち主なんか?
「矢高巡査部長のおっしゃるとおりです。帳場を開いて対応する必要があります。」
矢高への聴取をひととおり終えた佐々木は彼に背を向けた。
その瞬間、彼は得も言われぬ感覚を背後に覚えた。
姿は見えないが何か獣のようなものがこちらを見ている。
ひとつではない。そこかしこに視線を感じる。
佐々木の死線は前方を捉えているが、すべての感覚は背中にあった。
ーなんや…この感覚は…。
プレッシャーに耐えかねて佐々木は振り返る。
矢高が付近の住民と何やら話し込んでいた。
佐々木の様子に気がついた彼は敬礼をして、佐々木に敬意を払った。
ー気のせいか…。
帰路につこうと再び振り返る。
すると昨日宿泊していた民宿の姿が目に入ってきた。
主人がこちらの方を見てたばこを吸っている。
昨日の自分を見ているようだ。
宿の主人が煙を吐き出して、その吸い殻を地面に落とし足で踏みつける。
すると民宿の影から2名の漁師風の男が現れた。
「な…に…。」
おもわず佐々木は動きを止めた。
現れた漁師風の男らは佐々木の様子をよそに、駐在所側に駐車されている軽トラに乗り込んでその場から走り去っていった。
気のせいか宿の主人がこちらに向かってほくそ笑んだように見えた。
「まさか…この町は…。」
佐々木はしばらくその場から動けなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あのときに感じた恐怖ともいえる感覚を、俺はいま受けとるわけなんやが…。」
目を開くと仁川征爾の写真がそこにある。
「決して直接的な威嚇はせん。すべてが遠回し。わかる人間だけにはわかるように…。静かに林のように…。」
「継承者がいるなら彼をして研究を続ければいい。だから転んだ光定は消した方が良い。」
「えぇおっしゃるとおりです。」
「深謀遠慮の仁川さんにしては随分と短絡的に見えますが。」
「いやいやいや、高橋さんのことを思ってのことですよ。」
「勇介にひとことはありますか。」
「心配いりません。お任せください。」124
「仁川が勇介の何を思って任せろ言うとるか正直わからん…。」
「勇介はオフラーナの協力者。オフラーナは鍋島能力の実用化を目下のところ最優先事項としとる。仁川の発言、額面取りに受け取れば、鍋島能力の実用化の最短ルートは光定抹消であると判断したと言うことやが…。」
「空閑は本当に鍋島能力を継承したんですか。」
「ええ。」
「証拠はありますか。」
「いいえ。」
「でも継承していると?」
「はい。」
「あなたなりのなんらかの根拠があっての判断ですか。」
「あーそれですか、それはすいませんクリエイティブのことは理屈で説明できることばっかりじゃないんですよ。それに関しては感覚的なもんです。」
「空閑の言っていることは確からしいと?」
「うーんそうですねぇ。」124
「あまりにも感覚に頼りすぎとるんやって…。大事な決定であるにもかかわらず…や。」
「何をするにも慎重を期する仁川の発言とは思えんがや…。」
「ここにきて雑なんやって…。」
佐々木は髪をかき上げる。
「その雑さが妙に怖い…なんか、奴の手の内で転がされとるような気がしてしょうがないんや…。」
「矢高慎吾。」
「矢高?」
「はい。ご存じでしょうか。」
「あ、いや…。」
「能登署を辞め、以降行方知らずのこの矢高、先日の千種の事故死の時、ひょっこり現場に姿を現した。」
「なんだそのもの言い。佐々木、おまえその矢高の知り合いなのか。」
「はい。」
「どういう関係だ。」
「同じ穴のムジナですよ。」
「同じ穴のムジナ…。」116
「仁川…こいつ矢高と同じニオイがすれんて…っちゅうことは、こいつも同じ穴の…。」
手にしていた仁川の写真を彼は懐にしまった。
「…杞憂であってくれればそれでいいんやが。」
そのときである。
一発の銃弾が運転席側のガラスを貫通し、佐々木のこめかみを穿った。
助手席にもたれかかった彼はピクリとも動かない。
静寂な時間だけがそのまま流れていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「よくやった。」
車を運転していた矢高は電話を切り、そのままハンドルを握る。
「さすがに少佐に直接コンタクトはマズい。佐々木警部。」
「10年前から変わってない…どこか自分の力を過信してるきらいがある…。」
「その点、古田の方がまだマシだ。」
彼の運転する車は県警本部の前を通過した。
「やはり一色という男が異常だった…だけか…。」
矢高の車はかつて本多善幸事務所が入っていたビルの前で信号待ちとなった。
「それとも政治が水面下で我々を牽制していた…。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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朝の港町は騒然としていた。
事情聴取を受けるのはこの港町の駐在、矢高慎吾。
「発見時からのこの状態でしたか。」
「はい。」
港の浜に立つ彼の前には横たわる2体の遺体があった。
「過去にこの浜から姿を消した特定失踪者がいますので、毎晩巡回を怠らないようにしとりました。」
「昨日の晩は特に変わったことはありませんでしたか?これらの遺体を発見するまでに。」
矢高はしばらく考える。
「いえ。特には。」
「そうですか…。」
「あ。」
「なんです?」
「いや、気のせいです。」
「何でも良いです。気になったこと教えてください。」
「言われてみれば、珍しいものを見たかもしれません。」
「珍しいもの?」
「はい。たばこ吸っとる人居ました。」
ーえ…?
「ほらあすこの民宿あるでしょう。」
矢高は指さす。
「ここらの人は夜は基本外に出ません。台風が来るとかでどうしても船の様子を見ないかん時くらいしか、夜に外出んがです。」
「…。」
「けど昨日の夜はあそこの宿泊客ですかね。そとでたばこ吸っとる人居ったんです。多分宿の主人にも止められたと思うんですが。」
ーこいつ見とったんか…。
「んにしても物騒ですね。ふたりとも殺られた形跡ありますから、どこかにホシが潜伏しとる可能性がありますね。」
このときの矢高は聴取する佐々木から目をそらし、海の方を見つめた。
ーお前だ。お前しか居らんやろ。矢高。
ーにしてもひとりでふたりをこうもあっさりと返り討ちにあわせる…。
ー相当の腕の持ち主なんか?
「矢高巡査部長のおっしゃるとおりです。帳場を開いて対応する必要があります。」
矢高への聴取をひととおり終えた佐々木は彼に背を向けた。
その瞬間、彼は得も言われぬ感覚を背後に覚えた。
姿は見えないが何か獣のようなものがこちらを見ている。
ひとつではない。そこかしこに視線を感じる。
佐々木の死線は前方を捉えているが、すべての感覚は背中にあった。
ーなんや…この感覚は…。
プレッシャーに耐えかねて佐々木は振り返る。
矢高が付近の住民と何やら話し込んでいた。
佐々木の様子に気がついた彼は敬礼をして、佐々木に敬意を払った。
ー気のせいか…。
帰路につこうと再び振り返る。
すると昨日宿泊していた民宿の姿が目に入ってきた。
主人がこちらの方を見てたばこを吸っている。
昨日の自分を見ているようだ。
宿の主人が煙を吐き出して、その吸い殻を地面に落とし足で踏みつける。
すると民宿の影から2名の漁師風の男が現れた。
「な…に…。」
おもわず佐々木は動きを止めた。
現れた漁師風の男らは佐々木の様子をよそに、駐在所側に駐車されている軽トラに乗り込んでその場から走り去っていった。
気のせいか宿の主人がこちらに向かってほくそ笑んだように見えた。
「まさか…この町は…。」
佐々木はしばらくその場から動けなかった。
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「あのときに感じた恐怖ともいえる感覚を、俺はいま受けとるわけなんやが…。」
目を開くと仁川征爾の写真がそこにある。
「決して直接的な威嚇はせん。すべてが遠回し。わかる人間だけにはわかるように…。静かに林のように…。」
「継承者がいるなら彼をして研究を続ければいい。だから転んだ光定は消した方が良い。」
「えぇおっしゃるとおりです。」
「深謀遠慮の仁川さんにしては随分と短絡的に見えますが。」
「いやいやいや、高橋さんのことを思ってのことですよ。」
「勇介にひとことはありますか。」
「心配いりません。お任せください。」124
「仁川が勇介の何を思って任せろ言うとるか正直わからん…。」
「勇介はオフラーナの協力者。オフラーナは鍋島能力の実用化を目下のところ最優先事項としとる。仁川の発言、額面取りに受け取れば、鍋島能力の実用化の最短ルートは光定抹消であると判断したと言うことやが…。」
「空閑は本当に鍋島能力を継承したんですか。」
「ええ。」
「証拠はありますか。」
「いいえ。」
「でも継承していると?」
「はい。」
「あなたなりのなんらかの根拠があっての判断ですか。」
「あーそれですか、それはすいませんクリエイティブのことは理屈で説明できることばっかりじゃないんですよ。それに関しては感覚的なもんです。」
「空閑の言っていることは確からしいと?」
「うーんそうですねぇ。」124
「あまりにも感覚に頼りすぎとるんやって…。大事な決定であるにもかかわらず…や。」
「何をするにも慎重を期する仁川の発言とは思えんがや…。」
「ここにきて雑なんやって…。」
佐々木は髪をかき上げる。
「その雑さが妙に怖い…なんか、奴の手の内で転がされとるような気がしてしょうがないんや…。」
「矢高慎吾。」
「矢高?」
「はい。ご存じでしょうか。」
「あ、いや…。」
「能登署を辞め、以降行方知らずのこの矢高、先日の千種の事故死の時、ひょっこり現場に姿を現した。」
「なんだそのもの言い。佐々木、おまえその矢高の知り合いなのか。」
「はい。」
「どういう関係だ。」
「同じ穴のムジナですよ。」
「同じ穴のムジナ…。」116
「仁川…こいつ矢高と同じニオイがすれんて…っちゅうことは、こいつも同じ穴の…。」
手にしていた仁川の写真を彼は懐にしまった。
「…杞憂であってくれればそれでいいんやが。」
そのときである。
一発の銃弾が運転席側のガラスを貫通し、佐々木のこめかみを穿った。
助手席にもたれかかった彼はピクリとも動かない。
静寂な時間だけがそのまま流れていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「よくやった。」
車を運転していた矢高は電話を切り、そのままハンドルを握る。
「さすがに少佐に直接コンタクトはマズい。佐々木警部。」
「10年前から変わってない…どこか自分の力を過信してるきらいがある…。」
「その点、古田の方がまだマシだ。」
彼の運転する車は県警本部の前を通過した。
「やはり一色という男が異常だった…だけか…。」
矢高の車はかつて本多善幸事務所が入っていたビルの前で信号待ちとなった。
「それとも政治が水面下で我々を牽制していた…。」
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