114 第102話

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Manage episode 291253084 series 2621156
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「どうです。気分が悪いとかありませんか。」
「まぁ…。」
「頭痛はまだあると聞きましたが。」
「はい。」
「どんな感じの頭痛ですか?」
「…突然、頭の奥深くからズキンと来る感じです。」
「あぁ…。」
ーなんだこのやり取り。無表情だけど普通じゃん。片倉さんから聞いているコミュ障って話と違うぞ。
「詳しい検査をしないことには頭痛の原因はわかりません。明日、検査しましょうか。」
「はぁ。」
「いまは検査できる人間がいませんので、明日MRI撮りましょう。それまで三波さん。こちらでお休みください。」
「あ…でも…。」
「お仕事ですか?」
「はい。」
「死にたいんだったら行ってもいいですよ。」
「はい?」
「死にたければこのまま退院してもいいですよ。」
「え?それ…どういうことですか。」
「殺されるってことです。」
突拍子もないこの光定の発言に三波は唖然とした。
「あなた妙な男と接触したでしょう。」
なぜそのことを知っている。
背筋が寒くなった。
「…はい。」
「そこでその男の目を見た。」
なんだ。まさか現場を見たというのかこの男は。
「…なんでそのことを。」
光定はふうっと息をついた。
「何を隠そう私も、その男にあなたと同じことをされたんで。」
「え?」
「ついさっきですよ。」
「だから私もあなたと同じ。頭がズキンって痛くなる。」
そう言うと光定はしかめっ面になり、自分の頭に指を当てた。
「いいですか。」
彼は病室の椅子を指差す。
「どうぞ。」
そこに掛けた光定は大きくうなだれた。
「不完全なんですよ…。」
「はい?」
「不完全なんだ。」
「な…ん…の…ことですか。」
「鍋島ですよ鍋島。」
「鍋島?」
「瞬間催眠とでも言えばおわかりでしょうかね。」
「しゅ、瞬間催眠?」
「三波さん。あなたさっきまで東京第一大学で小早川先生と会ってたでしょう。」
「え…。」
「なにかめぼしいネタでも引っ張れましたか。」
どうもこの目の前の光定公信。今日の自分の行動とその目的を把握しているようだ。
三波は覚悟を決めた。
「まぁまぁです。」
「そうですか。」
「で、なんですか。その鍋島が不完全ってのは。」
「知りたいですか。」
「はい。」
「知ったらちゃんフリで流すんですか。」
「もちろん。」
「いつ?」
「できるだけ速やかに。」
「金曜までに流せますか。」
「は?金曜?」
「はい。」
GWに突入する前日の5月1日。この金曜日までになぜその瞬間催眠に関する報道を彼は希望するというのだ。
「え、なんですか金曜って。」
「…。」
「なにかあるんですか金曜に。」
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携帯が震える
「はい。」
「相馬さんですか。」
「あ、はい。」
「わたくしケントクの富樫と申します。古田さん、ちょっと体調崩したみたいでして、しばらく自分が代わりを務めさせていただきます。」
「え?」
「相馬さんは特高の方ですが、今はケントクにレンタルされているご身分。管理監督はあくまでもケントクにあります。古田さんと私の交代は、ケントクの長である岡田課長の命令でございます。」
「岡田課長…。」
「はい。なのでよろしくおねがいします。」
「あの、古田さんの体って。」
「頭の病気です。」
「はい?」
「急性の認知症とでもいいましょうか。」
「急性?認知症?」
「はい。急に整わんこと言うようになってまして。」
「んなダラな…。それって天宮のところに行ったときに言われたやつなんじゃないですか。」
「そうじゃないんです。リアルに業務に支障が出てるんです。」
「いや、そんなはずない。ついさっきまで自分、古田さんと連絡取り合っていましたよ。」
「どんな感じでした?」
「特に変わったことは…。」
「あらそう?」
「なんです?そのオネェ言葉。」95
「…そう。なの?」
「何なんですか古田さんさっきから、その変な話し方。」95
「え…まさかあれって…。」
「どうしました。なにか思い当たる節でも。」
相馬は古田が妙な話し方をしていたことを富樫に話した。
「オネェ言葉ですか…。」
「はい。」
「古田さんにそのケがあるってのは聞いたことはありませんねぇ。」
「自分もです。」
「ま、そのあたりは頭の片隅にいれておくとしましょう。」
「はい。」
「で相馬さん。あなた今どこですか。」
相馬の目の前には安井さやかが住むアパートがあった。
「笠舞あたりに居ます。」
「そこで何を?」
「三波さんの手がかりがないかと思って。」
「三波?」
相馬は安井の妻を三波が追っていたことを富樫に報告した。
「安井ねぇ…。」
「はい。ちゃんフリのカメラマンです。」
「個人を特定できないような普段とは違う身なりで石大病院におって、その後同僚の奥方の家の前に立つ。…何か調べとりますね。三波。」
「はい。」
「安井ですね。わかりました。すぐにケントクでマークします。」
「お願いします。」
「三波の行方不明は我々の方で調べます。とにかく相馬さん。あなたは元の通り光定マークに戻ってください。」
「ですが。」
「いまは個人的な用向きを優先している場合じゃありません。それとも何か。三波の行方に心当たりが?」
「いえ…。」
「あなた一人でできることは限られる。ここはケントクにまかせてください。」
「わかりました。石大に戻ります。」
「さてと…。」
相馬との電話を切った富樫は目の前にある複数のモニターの中のひとつを見る。
「ちゃんフリの安井ねぇ。それと今朝接触した椎名がただ今ご帰還ってわけか。」
椎名の住むアパートの部屋の中が映し出されたそれを見ながら、富樫はつぶやいた。
「ケントクから北署。」
「はい北署。」
「ネットメディアのちゃんねるフリーダム。こちらの安井というカメラマンをマーク。動きを随時報告されたい。」
「了解。」
「いい加減ガキみたいなことやめろよ…クソ国家が…。」
「絶対に許さねぇ…。」23
「立憲自由クラブのサイト見て思わずついて出たあのセリフ。ワシをすっ飛ばして特高のどいつかと連絡をとっとること。ちゃんフリのカメラマンと接触を持っとること。こいつのこれらをワシはどう理解すればいいんや。」
富樫は装着していたインカムを一旦外して、顔を両手で擦った。
「ふぅー。しっかし古田さん。こんなハブなんかようやっとるわ。処理する情報が多すぎる。んなもん爺がすることじゃないわ。そりゃ頭もおかしくなるわ。」
電話がなる
「はい富樫です。」
「おうマサさん。どうや。」
「どうって…無理ですよすでに。」
「ほうか。」
「でも課長命令ですから…。」
「すまんな。」
「ってか、どうも古田さん。あなたがほんな認知症やとは自分は思えんがですが。」
「んなもん体の良いあれやわい。」
「あれ?」
「おいや。あれや。」
「え?あれって。」
「クビ。」
「…。」
「ま、そもそもこんなジジイにハブやらせとる時点で、この組織お察しなんや。」
「古田さん…。」
「マサさんもほどほどにしとけや。こき使われるだけこき使われてポイやぞ。」
「まぁ…。」
らしくない。こんな発言古田らしくない。
「これでワシもようやく肩の荷が下りた。ちょっくらカメラでも持ってブラブラするわ。」
「え、でも古田さん、別に本当にクビになったわけじゃなくて、少し休めって言われただけでしょう。」
「だからクビなんやって!」
感情的を顕にする古田のこの発言に富樫は素直にショックを受けた。そのため言葉が出なかった。
しばらく沈黙を経て、その電話は古田の方から切られた。
「ハブのお役がごめんになったことはちゃんと理解しとる。物事をちゃんと理解しとるように見えるけど、ときどきかなり怪しい言動…。斑ボケってやつかな…。」
窓に映る自分の顔。
どうみてもいいジジイだ。
富樫はふと自分も大丈夫だろうかと不安になった。
「瞬間催眠…急性認知症…。んなもん急に聞かされて信じろっちゅうほうが無理や。」
彼は画面が真っ暗のスマホに目を落とす。
「けど、それをリアルに体験すると受け入れざるを得なくなる…。」
つぶやいたと同時にその液晶が光った。
岡田からだ。
「はい富樫。」
「三波、石大病院に搬送された。」
「えぇっ!?」
「頭が割れるとかで自分で救急車呼んだらしいんやわ。」
「容態は。」
「今ん所安定しとるって。片倉さんにも報告してやってください。」
「了解。あ。」
「なんです。」
「いま相馬が石大病院に向かっています。」
「お、タイムリーですね。引き継ぎ早々いい仕事しますねマサさん。」
「いえ…。」
「相馬の手綱はマサさん。あなたに任せましたよ。」
「はい。」
「俺は三好さんと動く。」
「三好と?」
「あぁ。なんで椎名の監視の方も同時並行でお願いします。」
「椎名も…。」
「心配せんといてください。古田さんみたいな無茶苦茶な仕事はさせません。ここでマサさんに倒れられでもしたら、ウチもうお手上げですから。」
「はぁ…。」
「古田さんは抱え込みすぎです。」
「まあ確かに。あの方は全部引き受けてしまうきらいがあります。」
「断れない性分なんでしょう。  あの人はここいらで休んだほうがいい。認知症の症状も体がサインを発してるのかも知れんし。」
「あ、聞いたことあります。忙しさが限界に達すると健忘症が出るとか。」
「今回のマサさんの措置、俺と三好さんのタッグ。一応負担を分散させる意図があるんですわ。」
「あぁ。」
「マサさんは相馬と椎名。んで片倉さんと俺、んで百目鬼理事官の連絡役。」
「とケントクの司令塔ですか。」
「はい。」
「ただ自分の仕事が増えたような気がしますが…。」
「あ、バレた?」
「ま、でもこうやってパソコンと無線機の前で座ってできる仕事です。嫌いな仕事じゃありません。」
「そう行ってくれると助かります…。」
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