お母さんのための原発資料探訪(4) 1年1ミリと「正当化の原理」

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先回の探訪で、1年1ミリは「安全」ではなく「我慢できる tolerable」被曝量であることを書きました。つまり「100ミリまで大丈夫」という人もいますが、世界的に、また日本の専門家でも100ミリどころか、1年1ミリすら「大丈夫」ではないとしているのです。
それではなぜ、法令は1年1ミリまでOKとしているのでしょうか? 民主主義の社会ですから、国民が「理由なく我慢する」ということはありえません。この点、日本はまだ封建的思想が残っていますが、欧米はみずからが戦って獲得した国民の権利はしっかり守ろうとします。
そうすると、「どういう理由で我々は危険を承知で我慢しなければならないのか?」と聞かれたとき、日本のように(たとえば石原元都知事)「黙れっ!」などといえば、それは野蛮なのです。
そこで国際的な委員会であるICRPは、「我慢しなければならない被曝は、それが正当化される範囲に限定される」としました。これを「正当化の原理」と言います。この正当化の原理はきわめて明確な原理なので、英語で書くと厳密に定義できます。そこで少しややこしいのですが、ICRPの公式書類を日本語に翻訳した文章を示します。
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ややこしいですね。でも、よくよく読むと簡単で、「被曝は害だから、それを変化させる時には、害に見合う便益が必要だ」ということです。「一般の人に我慢させるのだから、それに見合う利益がいる」ともいえます。
どの程度の我慢が、どの程度の利益とイコールになるのかは、その国によって違うので、世界的には「考え方」だけは明確に書くことができるのです。この約束は現在のところ、ほぼ全世界の国が合意していて、もちろん日本も同意しています。
日本では、害と便益を次のようにしています。
1)害=1年8000人の致命的発がんと重篤な遺伝性疾患の発生
2)益=6000万キロワットの原子力発電・再処理・貯蔵や放射線利用
「そんなこと、だれが決めたんだ!」と怒る人もいると思いますが、これは放射線審議会などの国の機関で専門家が決め、国のしかるべきルートにしたがって認められているものです。
今後、たとえば原発がなくなると、放射線利用だけになりますので、国民の便益が減るので、現在の1年1ミリからかなり低くなると思います。いずれにしても、線量限度と言うのは「大丈夫」というのではなく、「危険だけれど我慢する」という量であることがわかります。
そして、1年8000人の犠牲者ということが決まれば、それはいったい、1年に何ミリシーベルトの被ばくに相当するかということを学問的に決めなければなりません。それは国立がんセンターから発表されている次の表でわかります。
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この表では専門家が使用する数値(10万人当たりの犠牲者数)が書かれていて、1年1ミリシーベルトで、10万人当たり致命的発がんが5人、重篤な遺伝性疾患が1.3人で合計6.3人となっています。これを1270倍(1億2700万人)すると日本人全体になり、約8000人ということを意味しています。
つまり、1年1ミリという限度は、
6000万キロワットの電気をもらうので → 1年8000人の犠牲者は我慢する → それを専門家に聞いたら1年1ミリという
ということで決まっているのです。
だから、どの法律でも、どの装置でも、原発、廃棄物、アイソトープなどすべてのものがこの数値以下にならなければいけないことが分かります。また、1年1ミリというのは「個人の被ばく量」ですから、たとえば原発からの放射線だけなら、それだけで1ミリなら良いのですが、外部から被曝し、食品から被曝しというような場合はそれをすべて合算した被曝が1ミリでなければならないのも、容易に理解できます。
よく「1年1ミリって外部被曝だけですか?」と聞かれますが、ここまで説明してきたことで良く理解できると思いますが、「数値は人間の健康の方から決まっている」ので、外部でも内部でも、なんでも、個人の人が被曝するものを合計したものであることも理解できます。
(平成26年1月27日)

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