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ブックレビュー(26)  玄田有史『仕事のなかの曖昧な不安:揺れる若年の現在』中公文庫

 
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 今回は、玄田有史さんの『仕事のなかの曖昧な不安:揺れる若年の現在』と言う本を取り上げます。著者の玄田さんという方は、1964年のお生まれで、現在、東京大学社会科学研究所の教授の任にある労働経済学者です。『仕事のなかの曖昧な不安』は、2001年に中央公論新社から出版され、サントリー学芸賞と日経・経済図書文化賞をダブル受賞した本で、現在は中公文庫に入っています。  玄田さんは、専門分野で学術論文を発表するとともに、それらに基づいた問題提起的な内容を含む多くの本を、単著または共著の形で出版しています。例えば2004年に幻冬舎から出版された『ニート:フリーターでも失業者でもなく』という共著は、若年の無業者を意味する「ニート」という言葉を広めるきっかけになった本として、良くも悪くも話題になりました。  『仕事のなかの曖昧な不安』は玄田さんの最初の著書に当たるようですが、やはり問題提起的な本で、自身が行った現状分析の結果や様々な統計データを分かりやすく解説しながら、特に30歳代前半までの若年者の就業に関する問題を捉え直そうとしています。  ただ、今回この本を紹介するために読み返してみて、つくづく思ったのですが、マクロ経済環境が非常に早い速度で変化しているため、経済学的な現状分析の結果から導出される知見の賞味期限は驚くほど短くなってしまったようです。この本が刊行された当初、私は非常に新鮮な印象を持って読んだ記憶があるのですが、そこで展開された現状分析の結果には、今日アップデートを必要とする点が少なくないようです。本書が刊行されてから既に20年が経過しているので、これは当然と言うこともできるでしょうが、初読の印象が鮮やかだっただけに、賞味期限の短さに驚かざるを得ない訳です。  例えば、この本の中心的な主張は、1990年代の後半以降、フリーターと呼ばれる定職に就かない若年者が増加していることに対して「けしからん」と決めつける風潮が強くなっているけれども、フリーターが増加しているのは若年者の就業意識の問題以前に社会構造的な問題があるのだということです。それは高齢化が進展する中で、企業が大学卒の中高年社員の雇用を維持するために若年採用を抑制してきたという問題です。若年者の就業機会が少なくなると、自分の能力や価値観に合った仕事がなかなか見つからないという「就業のミスマッチ」が発生し、不本意な就職をしても、ちょっとした不満やトラブルで転職を決意しやすくなると説明されています。  しかし、本書の刊行当時、既に企業は中高年社員の雇用を維持することも困難な状況に直面し、むしろ雇用調整を行いやすくするために非正規雇用に依存する方向に向かっていました。一方、本書の刊行から数年後には、いわゆる「団塊の世代」が一斉に退職する2007年問題と呼ばれる時期がありました。こうした状況の変化を考えると、若年と中高年の間での雇用の置き換えという発見事実は、改めて検証すべき余地があると思います。  ただ、著者がデータ分析を手がかりにしながら、直接データからは窺い知れない「曖昧な不安」という領域に踏み込み、その渦中に置かれている若年者に向けて発信したメッセージの全てが陳腐化してしまった訳ではありません。そのメッセージの中には、「働き方」が問い直されている今日、益々重要な意味を帯びているものがあるので、その点をここでは取り上げてみたいと思います。  玄田さんが本書を通じて特に若年者に向けて発信したメッセージは、ある都立高校で行われた講演の記録として本書の最後に収録されている「十七歳に話をする」という文章に集約されています。この講演の中で玄田さんは、フリーターにせよ正社員にせよ、働く上で知っておくと良いことについて語っていますが、それを「こうしなければならない」という形ではなく、「こうしないほうがいい」、「こうしなくてもいい」という話にしています。  まず、しないほうがいいのは、仕事の中で「頑張る」とか「頑張れ」という言葉を簡単に使わないようにしてみることだと言います。それは頑張ってもどうしようもないことが直感的に分かっているときに、さらに人を追い詰めてしまうからであり、この言葉を使うのを止めることで、励ましたい相手に伝えるべき自分なりの表現を見つけようとすることが大切だと語っています。  しかし、頑張らずに適当にやっていればいいということではなく、何か自分なりの意思を持つことは大切なのだけれども、よく大人が若年者に対して言う「夢を持て」という言葉は使わず、むしろ夢なんか持たなくてもいいと敢えて言いたいと述べています。そして、夢を持つことよりも、もっと大事なのは「自分で自分のボスになる」という意思をはっきり持つことだとしています。それは結局、自ら仕事を始めるという困難な決断を行うことを意味している訳ですが、そのような決断を正しく下す際に必要になるのは、信頼できる友達の励ましや助言だと言います。ただ、できれば、いつも頻繁に連絡を取り合う友達だけでなく、たまにしか会えないけれども本心から話ができる友達をたくさん作って欲しいとも述べています。そういう友達は、自分とは全く違う考え方をしていることが多く、何か行動するときに新しい考え方を提供してくれたりするので、将来、自分のボスになって成功するための役に立つという訳です。  このメッセージの背後には、独立開業して経済的に成功するのは、学卒から20年程度、関連した仕事を経験し、40歳前後で開業に踏み切るパターンだという分析結果があります。また、淡い縁の友人が有益な情報を提供するという示唆は、前にキーワード解説で取り上げたグラノヴェターの「弱い紐帯の強さ」という知見を踏まえています。私は開業に関する玄田さんの示唆に基本的な異論はないのですが、ただ役に立つ友人関係を作れという言い方は絶対にしません。自分の役に立つという理由で友達を作ろうとする者には、碌な友人関係ができないことが知れているからです。その代わり、知識を学び合おうとする姿勢で社会に出て行けば、そういう友人関係は自然にできていくものだと言うだろうと思います。ビジネススクールで学ぶことには、結果的にそういう友人関係を持てるという意義もあるでしょう。 今回のまとめ: 若年者に向けて本書が発信した働き方をめぐるメッセージには、今日なお読み直されるべき価値があります。
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 今回は、玄田有史さんの『仕事のなかの曖昧な不安:揺れる若年の現在』と言う本を取り上げます。著者の玄田さんという方は、1964年のお生まれで、現在、東京大学社会科学研究所の教授の任にある労働経済学者です。『仕事のなかの曖昧な不安』は、2001年に中央公論新社から出版され、サントリー学芸賞と日経・経済図書文化賞をダブル受賞した本で、現在は中公文庫に入っています。  玄田さんは、専門分野で学術論文を発表するとともに、それらに基づいた問題提起的な内容を含む多くの本を、単著または共著の形で出版しています。例えば2004年に幻冬舎から出版された『ニート:フリーターでも失業者でもなく』という共著は、若年の無業者を意味する「ニート」という言葉を広めるきっかけになった本として、良くも悪くも話題になりました。  『仕事のなかの曖昧な不安』は玄田さんの最初の著書に当たるようですが、やはり問題提起的な本で、自身が行った現状分析の結果や様々な統計データを分かりやすく解説しながら、特に30歳代前半までの若年者の就業に関する問題を捉え直そうとしています。  ただ、今回この本を紹介するために読み返してみて、つくづく思ったのですが、マクロ経済環境が非常に早い速度で変化しているため、経済学的な現状分析の結果から導出される知見の賞味期限は驚くほど短くなってしまったようです。この本が刊行された当初、私は非常に新鮮な印象を持って読んだ記憶があるのですが、そこで展開された現状分析の結果には、今日アップデートを必要とする点が少なくないようです。本書が刊行されてから既に20年が経過しているので、これは当然と言うこともできるでしょうが、初読の印象が鮮やかだっただけに、賞味期限の短さに驚かざるを得ない訳です。  例えば、この本の中心的な主張は、1990年代の後半以降、フリーターと呼ばれる定職に就かない若年者が増加していることに対して「けしからん」と決めつける風潮が強くなっているけれども、フリーターが増加しているのは若年者の就業意識の問題以前に社会構造的な問題があるのだということです。それは高齢化が進展する中で、企業が大学卒の中高年社員の雇用を維持するために若年採用を抑制してきたという問題です。若年者の就業機会が少なくなると、自分の能力や価値観に合った仕事がなかなか見つからないという「就業のミスマッチ」が発生し、不本意な就職をしても、ちょっとした不満やトラブルで転職を決意しやすくなると説明されています。  しかし、本書の刊行当時、既に企業は中高年社員の雇用を維持することも困難な状況に直面し、むしろ雇用調整を行いやすくするために非正規雇用に依存する方向に向かっていました。一方、本書の刊行から数年後には、いわゆる「団塊の世代」が一斉に退職する2007年問題と呼ばれる時期がありました。こうした状況の変化を考えると、若年と中高年の間での雇用の置き換えという発見事実は、改めて検証すべき余地があると思います。  ただ、著者がデータ分析を手がかりにしながら、直接データからは窺い知れない「曖昧な不安」という領域に踏み込み、その渦中に置かれている若年者に向けて発信したメッセージの全てが陳腐化してしまった訳ではありません。そのメッセージの中には、「働き方」が問い直されている今日、益々重要な意味を帯びているものがあるので、その点をここでは取り上げてみたいと思います。  玄田さんが本書を通じて特に若年者に向けて発信したメッセージは、ある都立高校で行われた講演の記録として本書の最後に収録されている「十七歳に話をする」という文章に集約されています。この講演の中で玄田さんは、フリーターにせよ正社員にせよ、働く上で知っておくと良いことについて語っていますが、それを「こうしなければならない」という形ではなく、「こうしないほうがいい」、「こうしなくてもいい」という話にしています。  まず、しないほうがいいのは、仕事の中で「頑張る」とか「頑張れ」という言葉を簡単に使わないようにしてみることだと言います。それは頑張ってもどうしようもないことが直感的に分かっているときに、さらに人を追い詰めてしまうからであり、この言葉を使うのを止めることで、励ましたい相手に伝えるべき自分なりの表現を見つけようとすることが大切だと語っています。  しかし、頑張らずに適当にやっていればいいということではなく、何か自分なりの意思を持つことは大切なのだけれども、よく大人が若年者に対して言う「夢を持て」という言葉は使わず、むしろ夢なんか持たなくてもいいと敢えて言いたいと述べています。そして、夢を持つことよりも、もっと大事なのは「自分で自分のボスになる」という意思をはっきり持つことだとしています。それは結局、自ら仕事を始めるという困難な決断を行うことを意味している訳ですが、そのような決断を正しく下す際に必要になるのは、信頼できる友達の励ましや助言だと言います。ただ、できれば、いつも頻繁に連絡を取り合う友達だけでなく、たまにしか会えないけれども本心から話ができる友達をたくさん作って欲しいとも述べています。そういう友達は、自分とは全く違う考え方をしていることが多く、何か行動するときに新しい考え方を提供してくれたりするので、将来、自分のボスになって成功するための役に立つという訳です。  このメッセージの背後には、独立開業して経済的に成功するのは、学卒から20年程度、関連した仕事を経験し、40歳前後で開業に踏み切るパターンだという分析結果があります。また、淡い縁の友人が有益な情報を提供するという示唆は、前にキーワード解説で取り上げたグラノヴェターの「弱い紐帯の強さ」という知見を踏まえています。私は開業に関する玄田さんの示唆に基本的な異論はないのですが、ただ役に立つ友人関係を作れという言い方は絶対にしません。自分の役に立つという理由で友達を作ろうとする者には、碌な友人関係ができないことが知れているからです。その代わり、知識を学び合おうとする姿勢で社会に出て行けば、そういう友人関係は自然にできていくものだと言うだろうと思います。ビジネススクールで学ぶことには、結果的にそういう友人関係を持てるという意義もあるでしょう。 今回のまとめ: 若年者に向けて本書が発信した働き方をめぐるメッセージには、今日なお読み直されるべき価値があります。
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