その危険判断は正しいか?~我々の思い込みと危険判断~

 
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今日は、私達の思い込みと危機意識について話していきたいと思います。私達の日常生活には、事故・犯罪・災害等、本当に様々な危険が溢れています。日常生活から自分達の身をどのように守るかは、とても大切なことです。今私達が備えるべき危険とは、やはり感染症。そして災害ですよね。しかし、これで私達が身の回りの全ての危険に気付けているかと言われると、ちょっと自信が無くなってしまいます。そこで、今日はリスク学の観点から、この話を深く考えてみたいと思います。 まず、客観的な判断を私達は出来ているかいないかですが、リスク学の立場から結論を言えば、人は自分達にとって危険なことを客観的に判断しづらいと言えます。何故かと言えば、私達はどうしても判断の際に思い込みとか先入観(これらを専門用語でバイアスと言うのですけど)、これの影響を受けて考えたり判断してしまう事があるからです。これは長年のリスク学で様々に指摘されている事ですが、人が自分達にとって危険なことを判断するにあたって影響を与える思い込みの代表例の中に、利用可能性ヒューリスティックというバイアスがあります。簡単に言えば、人が思い浮かべやすい物やよく接触する物、または、身の回りにある物が世界に沢山存在すると思い込んでしまう傾向のことです。 例えば、日本全国で不動産屋とコンビニエンスストアのどちらの方が多いと思われますか? やはりコンビニではないかと思うのですが、実際に調べてみると不動産屋の方が多いということが分かります。では美容室とコンビニ、こちらはどちらが多いと思いますか? これも美容室なのです。私もよく学生に聞くのですけど、皆さん大抵コンビニと答えます。何故この様に私達が実際の数値と判断が異なって解釈してしまうかと言うと、この原因に利用可能性ヒューリスティックバイアスが影響しているからだと考えられています。つまり、日常生活において、私達が美容室や不動産屋よりもはるかに多くコンビニを利用してしまう。つまり、接触する回数が多いから、この世界にはコンビニの方が多くあるのだと思い込んでしまうというのです。 それでは何故、危険なことを判断するにあたって、利用可能性ヒューリスティックが影響を及ぼすのでしょうか? 具体的には、テレビやネット、新聞等においてクローズアップされる事故・犯罪・災害が自分の周りにも発生しやすい、あるいは最も危険なことであると思い込んでしまう可能性が指摘されています。例を話してみますと、例えば9.11同時多発テロ事件は航空機がハイジャックされてビルに衝突させるという悲劇的なテロだったのですが、この瞬間がテレビで捉えられ、新聞などで連日報道されました。多くの人が航空機のぶつかる映像を観て、航空機の利用は危険であると判断したのでしょう。同時多発テロ以降は、航空機での移動がアメリカ国内で激減し、長距離の移動にも自動車を用いるということが非常に多く確認されました。 確率論的に見れば、飛行機事故よりも自動車事故の方が、移動距離あたりの事故に遭う確率が高く、はるかに危険であったにも関わらずこのような行動が見られました。事後的には、同時多発テロ以降、同様の事件は発生せず一般的な航空機の墜落事件も起きず、犠牲者はほぼほぼ増加することがありませんでした。他方で自動車事故の方を見てみると、それまで六年連続で減少傾向にあった米国における自動車事故は、翌年大きく増加して、凄く多くの人が犠牲となりました。この事例は、クローズアップされる事故・犯罪・災害がやはり危険であると思い込んでしまう。まさに、利用可能性ヒューリスティックが影響して作られた悲劇だったと考えられます。 どうすればこの様な思い込みによる判断ミスを防げるのでしょうか? 大切なことは、このような先入観が人にあるということを意識しておくことです。勿論、危機迫る状況では何も考えずまず逃げるとか、安全を確保するということが重要ですが、時にはこういう先入観があることを意識しながら、一度立ち止まってみて広い視点と客観的なデータを見る姿勢を持って、何が今の自分にとって危険か、そして自分はどんな危険に晒されているか考える機会を設けることが重要だと思います。特に現在は、社会的状況から様々なメディアで新型コロナウイルスの被害が大きくクローズアップされています。勿論これに対する備えや危機意識を持つことは重要であることは明白です。しかし、その反面でこのような状況下では、豪雨や洪水、地震など、変わらずに存在する他のリスクに対して我々の危機意識が低下してしまうことが懸念されます。この点はやはり注意していかなければいけないと言えると思います。 今日のまとめです。私達は、テレビやネット、新聞などにおいてクローズアップされる事故・犯罪・災害が自分の周りにも発生しやすい、危険だと思い込んでしまう傾向があります。最も差し迫った危機から、まずは身を守るということも重要ですが、時には立ち止まってみて広い視点と客観的なデータを見る姿勢を持って、何が今、自分にとって危険かについて改めてよく考える機会を設けることが重要だと思われます。

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