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耳の野外学習#3|「はじく」 Hajiku/Pluck|Yasuhiro Morinaga

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「たたく」「ふく」「はじく」とは、楽器またはモノを鳴らすための行為である一方、働くこと、生活すること、遊ぶための、最も原始的な人間本来の生きていくための営み=技術だといえるはずだ。今回のDJミックスは、そんなことを考えながら、ここ数年アジアを中心にレコーディングしてきた民族の音楽や環境音をセレクト(アジアの音ではないものもいくつか含まれているが)し、ポストプロダクションでミキシングや電子的な加工を施しながら、リニアな音の時間を創造した。
人類学者たちは、調査地で現地語を学び、長期間地域に密着し、そこの情報をくまなく記述・記録した上で、ラボで検証・実験しながら論文や民族誌としてまとめあげていく。僕の場合は、現地の言葉もわからないし地域に密着しながら文字で記述をしていくような形も採用していない。むしろ楽器や音を軸に、その文脈や周縁を追い続けながらレコーディングしているに過ぎない。自身の目と耳を頼りに作品のゴールをゆるやかに想像しながら記録をし、素材を持ち帰ってスタジオで実験・検証しながら作品を制作していく過程は、どことなく人類学者の研究手法と似ている部分があることを以前から意識していた。
コクヨ野外学習センターがどれだけ実践者としての自分を勇気づけてくれただろう。新型コロナウイルスの感染症が収束した後もきっと、僕自身はフィールドでの活動を継続しながら、音に対する実践を技術の視点から考えていくような作品を創作していくはずだ。(2021.2.7 森永泰弘)

1:Playing Guembri, Gnawa sound
Location: Marrakesh, Morocco
Recorded: 26th August 2012

この頃はヨーロッパを拠点にしていたので欧州圏内を移動するのがとても楽だった。そのため、友達と一緒にスペインを電車で横断し、最南端のタリファからジブラルタル海峡を船で渡り、半日かけてモロッコのマラケシュにやってきた。旧市街のジャマ・エル・フナ広場の夜は無数の屋台が立ち並び、至る所で音楽が演奏されていた。この広場を毎夜ウロウロしながらバイノーラル録音をしていると、広場で演奏していた若い音楽家と知り合い意気投合。ゲンブリという弦楽器のことを教えてもらい、グナワ音楽をいくつか即興で弾いてもらった。最終的にゲンブリを購入することになるのだが、空港のチェックイン時で重量オーバーとなったもののなんとか持ってこれた思い入れのある旅だった。

2: Oh Dear Mother (played by Kong Nay)
Location: Phnom Penh, Cambodia
Recorded: 5th July 2015

プロジェクトのリサーチでカンボジアの首都、プノンペンを訪ねた。マーケットで大量のカセットテープを購入したり、地域の音楽コミュニティーの人たちの話を聞いているうちに、メコン・デルタ・ブルースというジャンルがあることを知り、その代表格であるチャパイ奏者のコン・ネイを紹介してもらい、彼とのレコーディングが実現した。メコン川を渡った近くのパコダで10数曲をフィールドレコーディングしたが、そのなかでも一番のお気に入りが、ここに収録した「Oh Dear Mother」だ。

3: Talimaa Talimaa (played by Tamaan Ensemble)
Location: Pontianak, West Kalimantan of Borneo Island, Indonesia
Recorded:30th March 2016

カチャピは、ここに収録されているボルネオ島のものだけでなく、ジャワ島西部やスマトラ島など、東南アジア島嶼部で代表的なツィター楽器である。ボルネオ島の西カリマンタンで精力的に活動する音楽家ヌルサリム・ヤディに、この地の少数民族のダヤック族について教えてもらいながら、実際にカチャピを使ってダヤック族の伝統音楽を演奏してもらった。

4: Folksong
Location: Đắk Đoa, Gia Lai, Central Highland of Vietnam
Recorded: 1st September 2017

ゴング文化の現地調査のため、ベトナム中央部をひろく調査したが、バナ族の集落で唯一レコーディングさせてもらった弦楽器がTing Ningというものだった。無数にある弦を器用に指で弾きながら、小型のコブ付きゴングで拍を刻んでうたうフォークソングは、土着的なメロディーに素朴な歌声が相俟って大きな感動を与えてくれた。少数民族の音楽は、音楽を生業とするプロフェッショナルなものではなく、日々の生活や労働に溶け込んだコミュニティの音楽であることを教えてくれた大切なレコーディングだった。このTing Ningの音色に感動し、近隣に居住しているジャライ族の友人に頼んでこの楽器を購入したが、日本の気候に順応できずヒビがはいってしまい、思うような音が出せなくなってしまった。

DJミックス by 森永泰弘
Produced by 若林恵
Commissioned by コクヨ野外学習センター

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「たたく」「ふく」「はじく」とは、楽器またはモノを鳴らすための行為である一方、働くこと、生活すること、遊ぶための、最も原始的な人間本来の生きていくための営み=技術だといえるはずだ。今回のDJミックスは、そんなことを考えながら、ここ数年アジアを中心にレコーディングしてきた民族の音楽や環境音をセレクト(アジアの音ではないものもいくつか含まれているが)し、ポストプロダクションでミキシングや電子的な加工を施しながら、リニアな音の時間を創造した。
人類学者たちは、調査地で現地語を学び、長期間地域に密着し、そこの情報をくまなく記述・記録した上で、ラボで検証・実験しながら論文や民族誌としてまとめあげていく。僕の場合は、現地の言葉もわからないし地域に密着しながら文字で記述をしていくような形も採用していない。むしろ楽器や音を軸に、その文脈や周縁を追い続けながらレコーディングしているに過ぎない。自身の目と耳を頼りに作品のゴールをゆるやかに想像しながら記録をし、素材を持ち帰ってスタジオで実験・検証しながら作品を制作していく過程は、どことなく人類学者の研究手法と似ている部分があることを以前から意識していた。
コクヨ野外学習センターがどれだけ実践者としての自分を勇気づけてくれただろう。新型コロナウイルスの感染症が収束した後もきっと、僕自身はフィールドでの活動を継続しながら、音に対する実践を技術の視点から考えていくような作品を創作していくはずだ。(2021.2.7 森永泰弘)

1:Playing Guembri, Gnawa sound
Location: Marrakesh, Morocco
Recorded: 26th August 2012

この頃はヨーロッパを拠点にしていたので欧州圏内を移動するのがとても楽だった。そのため、友達と一緒にスペインを電車で横断し、最南端のタリファからジブラルタル海峡を船で渡り、半日かけてモロッコのマラケシュにやってきた。旧市街のジャマ・エル・フナ広場の夜は無数の屋台が立ち並び、至る所で音楽が演奏されていた。この広場を毎夜ウロウロしながらバイノーラル録音をしていると、広場で演奏していた若い音楽家と知り合い意気投合。ゲンブリという弦楽器のことを教えてもらい、グナワ音楽をいくつか即興で弾いてもらった。最終的にゲンブリを購入することになるのだが、空港のチェックイン時で重量オーバーとなったもののなんとか持ってこれた思い入れのある旅だった。

2: Oh Dear Mother (played by Kong Nay)
Location: Phnom Penh, Cambodia
Recorded: 5th July 2015

プロジェクトのリサーチでカンボジアの首都、プノンペンを訪ねた。マーケットで大量のカセットテープを購入したり、地域の音楽コミュニティーの人たちの話を聞いているうちに、メコン・デルタ・ブルースというジャンルがあることを知り、その代表格であるチャパイ奏者のコン・ネイを紹介してもらい、彼とのレコーディングが実現した。メコン川を渡った近くのパコダで10数曲をフィールドレコーディングしたが、そのなかでも一番のお気に入りが、ここに収録した「Oh Dear Mother」だ。

3: Talimaa Talimaa (played by Tamaan Ensemble)
Location: Pontianak, West Kalimantan of Borneo Island, Indonesia
Recorded:30th March 2016

カチャピは、ここに収録されているボルネオ島のものだけでなく、ジャワ島西部やスマトラ島など、東南アジア島嶼部で代表的なツィター楽器である。ボルネオ島の西カリマンタンで精力的に活動する音楽家ヌルサリム・ヤディに、この地の少数民族のダヤック族について教えてもらいながら、実際にカチャピを使ってダヤック族の伝統音楽を演奏してもらった。

4: Folksong
Location: Đắk Đoa, Gia Lai, Central Highland of Vietnam
Recorded: 1st September 2017

ゴング文化の現地調査のため、ベトナム中央部をひろく調査したが、バナ族の集落で唯一レコーディングさせてもらった弦楽器がTing Ningというものだった。無数にある弦を器用に指で弾きながら、小型のコブ付きゴングで拍を刻んでうたうフォークソングは、土着的なメロディーに素朴な歌声が相俟って大きな感動を与えてくれた。少数民族の音楽は、音楽を生業とするプロフェッショナルなものではなく、日々の生活や労働に溶け込んだコミュニティの音楽であることを教えてくれた大切なレコーディングだった。このTing Ningの音色に感動し、近隣に居住しているジャライ族の友人に頼んでこの楽器を購入したが、日本の気候に順応できずヒビがはいってしまい、思うような音が出せなくなってしまった。

DJミックス by 森永泰弘
Produced by 若林恵
Commissioned by コクヨ野外学習センター

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