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ブックレビュー(15) カミュ(宮崎嶺雄訳)『ペスト』新潮文庫

 
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今回のまとめ: この小説は、他人の死に間接的にもせよ意図せずに関わってしまう可能性があるパンデミックのような状況の下で、人間はいかに生き、職務に関わるべきかを問いかけています。  今日は、フランスの作家アルベール・カミュの『ペスト』という小説をご紹介したいと思います。カミュは、1913年に当時フランス領であったアルジェリアに生まれ、苦学してアルジェ大学を卒業した後、パリの新聞で記者として活躍しますが、1940年にはドイツ軍がフランスに侵攻したため、ナチスに占領されたパリでレジスタンス運動に参加しています。戦後は1942年に刊行した『異邦人』という作品で一躍注目を集め、その後も人間が理性的な期待に反して直面する事態を意味する「不条理」という概念と、不条理への抵抗を軸とした文筆活動を展開し、1957年にはノーベル文学賞を受賞しますが、3年後の1960年には自動車事故のため47歳の若さで亡くなっています。  『ペスト』はカミュが1947年に発表した初期の代表作です。いま日本で普及している新潮文庫版の翻訳書の初刷は1969年で、私が初めて読んだのも40年以上前のことになるのですが、今年の1月に新型コロナウィルスの感染拡大により中国・武漢市が都市封鎖されたという報道に接したとき、真っ先に思い出されたのはこの小説でした。そのため、2月頃からこの小説が販売部数を伸ばし、出版社が15万部を越える増刷を行ったと聞いたときには、それだけの新たな読者を獲得したというよりも、私のようにかつてこの小説に深い感銘を受けた読者が、日本でもコロナウィルス感染が急速に深刻化する中で、そこに書かれていたことを読み返してみたいと思ったからではないかと想像しました。原著が出版されたフランスなどでも再びベストセラーになったそうです。  さて、この小説の舞台はアルジェリアのオラン市という実在の都市で、主人公は最後に語り手であることが明かされるベルナール・リウーという医師です。物語は、4月のある朝、リウーが診療室から出かけようとしたときに、階段で一匹の死んだ鼠に躓いたことを予兆として始まります。やがて大量の鼠の死に次いで人間の死者が出始め、その原因がペストであることを市当局も認めざるを得ない状況になったとき、突然市が閉鎖されます。  そして死者数が急速に増加し、市の保健課が深刻な人手不足に陥ったとき、リウーはジャン・タルーという旅行者の訪問を受け、志願者による保険隊を組織することを提案されます。こうして組織された保険隊に、様々な背景を持つ人物が参加していきます。例えばグランという甚だ風采の上がらない役人は、保険隊の幹事役のような仕事を引き受けると、目立たないながら不可欠の役割を担うようになります。リウーが熱意を込めて礼を言うと、グランは怪訝な顔をしてこう言うのです。--「こんなことは一番大変な仕事ってわけじゃありませんからね。現にペストってものがあるんですから、とにかく防がなきゃなりません。・・まったく、なんでもこれくらい簡単だといいんですがね。」  また、パリで待つ妻に会うために密輸業者の手引きを受けて市から脱出しようとする新聞記者のランベールという人物が登場します。リウー達の活動を、ヒーローを気取っているのだと批判するランベールに対して、リウーは、これはヒロイズムなどではなく、ペストと戦う唯一の方法である誠実さの問題だと言います。そして誠実さとは何かと反問されると、「つまり自分の職務を果たすこと」だと答えるのです。このランベールも、リウーが自分と似た境遇にあることを知って保険隊に参加し、最後まで市に止まることになります。  11月のある夜、リウーは海が見渡せるテラスで、初めてタルーから彼自身の話を聞きます。タルーは17歳のとき、検事の職にあった父親が、ある裁判で貧相な被告に死刑を求刑する姿を目撃し、以来、政治運動などの経験を通じて、人間は誰でも直接的にせよ間接的にせよ、人を死なせるペストの病毒のようなものから免れることができないことを知ったと言います。そして、この災厄に出来る限り与しないようにするため、あらゆる場合に犠牲者の側に立つことに決めたのだと語るのです。  しかし、保険隊の立ち上げと活動を献身的に担ってきたタルーは、ペストが突然終息に向かい始めたとき、その病毒に冒されて死んでしまいます。市の門が2月のある朝に開かれ、街が喜びに湧く中で、リウーはタルーと語り合ったテラスに立ち、この災厄の中で自分達が教えられたこと、すなわち人間の中には軽蔑すべきものよりも賛美すべきものの方が多くあるという記録を残すためにだけ、この物語を書こうと決心します。  この小説はナチズムに対するレジスタンス運動の闘争をモチーフに構想されたと言われており、実際そのように読み解くこともできるわけですが、そうした歴史的事実との結ぶ付きにのみ作品の価値があるわけではないでしょう。人を殺すものと闘う唯一の方法は自分の職務に誠実であることだというメッセージは、切実に訴えるものがあります。コロナウィルス対策の下では、そもそも多くの人が職務を遂行できないという状況にある訳ですが、このパンデミックの後に、自分自身とその職務を生き残らせるために、いま休業に耐え感染防止を徹底して行うことが、自分の職務に誠実であることだと言えないでしょうか。
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今回のまとめ: この小説は、他人の死に間接的にもせよ意図せずに関わってしまう可能性があるパンデミックのような状況の下で、人間はいかに生き、職務に関わるべきかを問いかけています。  今日は、フランスの作家アルベール・カミュの『ペスト』という小説をご紹介したいと思います。カミュは、1913年に当時フランス領であったアルジェリアに生まれ、苦学してアルジェ大学を卒業した後、パリの新聞で記者として活躍しますが、1940年にはドイツ軍がフランスに侵攻したため、ナチスに占領されたパリでレジスタンス運動に参加しています。戦後は1942年に刊行した『異邦人』という作品で一躍注目を集め、その後も人間が理性的な期待に反して直面する事態を意味する「不条理」という概念と、不条理への抵抗を軸とした文筆活動を展開し、1957年にはノーベル文学賞を受賞しますが、3年後の1960年には自動車事故のため47歳の若さで亡くなっています。  『ペスト』はカミュが1947年に発表した初期の代表作です。いま日本で普及している新潮文庫版の翻訳書の初刷は1969年で、私が初めて読んだのも40年以上前のことになるのですが、今年の1月に新型コロナウィルスの感染拡大により中国・武漢市が都市封鎖されたという報道に接したとき、真っ先に思い出されたのはこの小説でした。そのため、2月頃からこの小説が販売部数を伸ばし、出版社が15万部を越える増刷を行ったと聞いたときには、それだけの新たな読者を獲得したというよりも、私のようにかつてこの小説に深い感銘を受けた読者が、日本でもコロナウィルス感染が急速に深刻化する中で、そこに書かれていたことを読み返してみたいと思ったからではないかと想像しました。原著が出版されたフランスなどでも再びベストセラーになったそうです。  さて、この小説の舞台はアルジェリアのオラン市という実在の都市で、主人公は最後に語り手であることが明かされるベルナール・リウーという医師です。物語は、4月のある朝、リウーが診療室から出かけようとしたときに、階段で一匹の死んだ鼠に躓いたことを予兆として始まります。やがて大量の鼠の死に次いで人間の死者が出始め、その原因がペストであることを市当局も認めざるを得ない状況になったとき、突然市が閉鎖されます。  そして死者数が急速に増加し、市の保健課が深刻な人手不足に陥ったとき、リウーはジャン・タルーという旅行者の訪問を受け、志願者による保険隊を組織することを提案されます。こうして組織された保険隊に、様々な背景を持つ人物が参加していきます。例えばグランという甚だ風采の上がらない役人は、保険隊の幹事役のような仕事を引き受けると、目立たないながら不可欠の役割を担うようになります。リウーが熱意を込めて礼を言うと、グランは怪訝な顔をしてこう言うのです。--「こんなことは一番大変な仕事ってわけじゃありませんからね。現にペストってものがあるんですから、とにかく防がなきゃなりません。・・まったく、なんでもこれくらい簡単だといいんですがね。」  また、パリで待つ妻に会うために密輸業者の手引きを受けて市から脱出しようとする新聞記者のランベールという人物が登場します。リウー達の活動を、ヒーローを気取っているのだと批判するランベールに対して、リウーは、これはヒロイズムなどではなく、ペストと戦う唯一の方法である誠実さの問題だと言います。そして誠実さとは何かと反問されると、「つまり自分の職務を果たすこと」だと答えるのです。このランベールも、リウーが自分と似た境遇にあることを知って保険隊に参加し、最後まで市に止まることになります。  11月のある夜、リウーは海が見渡せるテラスで、初めてタルーから彼自身の話を聞きます。タルーは17歳のとき、検事の職にあった父親が、ある裁判で貧相な被告に死刑を求刑する姿を目撃し、以来、政治運動などの経験を通じて、人間は誰でも直接的にせよ間接的にせよ、人を死なせるペストの病毒のようなものから免れることができないことを知ったと言います。そして、この災厄に出来る限り与しないようにするため、あらゆる場合に犠牲者の側に立つことに決めたのだと語るのです。  しかし、保険隊の立ち上げと活動を献身的に担ってきたタルーは、ペストが突然終息に向かい始めたとき、その病毒に冒されて死んでしまいます。市の門が2月のある朝に開かれ、街が喜びに湧く中で、リウーはタルーと語り合ったテラスに立ち、この災厄の中で自分達が教えられたこと、すなわち人間の中には軽蔑すべきものよりも賛美すべきものの方が多くあるという記録を残すためにだけ、この物語を書こうと決心します。  この小説はナチズムに対するレジスタンス運動の闘争をモチーフに構想されたと言われており、実際そのように読み解くこともできるわけですが、そうした歴史的事実との結ぶ付きにのみ作品の価値があるわけではないでしょう。人を殺すものと闘う唯一の方法は自分の職務に誠実であることだというメッセージは、切実に訴えるものがあります。コロナウィルス対策の下では、そもそも多くの人が職務を遂行できないという状況にある訳ですが、このパンデミックの後に、自分自身とその職務を生き残らせるために、いま休業に耐え感染防止を徹底して行うことが、自分の職務に誠実であることだと言えないでしょうか。
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