予算2

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前回は一般企業の予算と戦略の関係についてお話ししましたが、重要なことは、予算は企業の戦略の実行に繋げるためのツールだということでした。そこで今回の話になる訳ですが、そうすると、（つまり、予算が企業の戦略実行のためのツールだとするならば、）予算上の目標は単にそれを数字的に達成することに意味があるのではなくて、飽くまでも戦略の実行に繋がるような形で達成されることに意味があるということになります。それでは予算の目標の達成を目指すにあたってどのようなことが考えるべきか、その問題を採り上げます。 一般企業に於いては、景気の浮き沈みや競合の攻勢などによって実績が予算から乖離することは珍しくありません。そうした場合、予測を変更するように簡単に予算を見直して乖離を埋めてしまうのでは、予算本来の機能を果たすことになりません。様々な打ち手によって実績が予算に近づくように、実績を改善する努力が求められます。このように基準である予算との比較を行い、実績を基準に近づけるための活動をコントローリング活動と呼びます。 企業の予算には年次（一年間）のものが多いですが、その達成のために、月次、四半期、或いは半期毎の基準点を設け、実績が予算から乖離していないか監視を行います。これらの基準点で実績が予算に届いていない場合には、適切な対応策（改善活動）を講じ、予算との乖離を埋める努力をすることが求められる訳です。但し、やみくもに対応策を取れば良いという訳でもありません。乖離が生じている原因をなるべく具体的に把握した上でそれを正す、或いは補う手段を講じることが必要で、そのために乖離の原因を分析するための管理レポートが作成されます。財務諸表にも会計原則により定められた事項がレポートされますが、これは外部者向けであって内部者である経営者や管理者の実態把握や原因究明、打ち手の検討のための情報としては不十分で、管理レポートにはより詳細な内容が含まれます。 そして原因究明のために行う作業が、差異分析です。例えば、営業利益が予算を下回った場合、それが収益の落ち込みによるものか、費用の上ぶれによるものか、或いは、どこか特定の支社の営業利益が原因かといったところから始めます。収益の落ち込みが原因であった場合、それは販売価格の低下によるものか、或いは販売量が予算を下回ったためか、さらに販売量が下回っていたとしたら、それは市場全体の落ち込みに依るものか、自社製品の市場におけるシェア低下によるのかといったことを分析します。さらにシェアが落ち込んでいたとしたら主にどこの地域の影響か、という形で原因を細分化してゆきますが、営業所単位、或いは営業所の課、係単位まで原因を遡ることも可能です。 以上のような作業を通じて原因が特定出来たら、それに対する打ち手を講じます。例えば、どこかの支店の営業力が弱いようであればそれを組織的に補強する、或いは、その地域に集中的に広告・宣伝費を投入する、更には収入の落ち込みをカバーするためにその地域の支店のコスト削減を徹底させる、などといったことが考えられます。 予算目標の達成のためにもう一つ重要なことは、予算の作り方です。目標設定に当たっては当該部署の責任者に対し上司が命ずるトップダウン方式や、部署責任者の申告によるボトムアップ方式がありますが、ボトムアップの場合、達成が容易になるよう控えめな目標設定となりがちな点に注意が必要です。これに対してトップダウンの場合、達成できなかったとしても上司から押し付けられた無理な目標だったと言い訳をしがちです。望ましいのはこの２つの中間で、その場合、部署の責任者が上司と相談をして両者が納得できる目標設定を行い、部署責任者はその目標にコミットします。これであれば言い訳をする訳にもいかず、目標達成に向けて努力をすることが期待できます。 予算では１年先という限られた期間の見通しに基づいて目標が設定されますので、変化のスピードが速い現代にあっても、多少の環境変化によって途中の段階で業績が下振れしたからといって、すぐに予算目標を修正するべきではありません。当初は想定できていなかったような打ち手も含めて、何とか目標の達成を目指すべきで、目標の変更には慎重であるべきです。その点、数年先という不確実性の高い期間の見通しに基づいて策定される中長期の計画とは異なります。中には、予算の中途変更には比較的柔軟な一方、中長期の計画は死守しようとする企業があったりしますが、これは逆です。 予算の策定も、年中行事のように漫然と行うのではなくて、予算の機能をしっかり認識した上で、戦略遂行のための重要なツールとして認識しつつ行うべきです。 まとめ：予算の策定に当たっては、上司との話し合いで目標を定め、部署の責任者がその達成をコミットすることが望ましく、期間中は逐次実績との比較を行い、必要に応じて対応策を講じることで目標の必達を目指すべきです。予算の機能を理解し、正しく活用することで戦略の遂行に繋がります。