第三百四十九話『人生は落丁の多い本に似ている』-【山口篇】小説家 芥川龍之介-

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今年、生誕130年、没後95年を迎える文豪がいます。
芥川龍之介(あくたがわ・りゅうのすけ)。
彼の実の父・新原敏三(にいはら・としぞう)は、現在の山口県岩国市美和町の出身です。
龍之介は、母の病気にともない、幼くして芥川家に養子に出されるのですが、幼名は、新原龍之介でした。
美和町の山間にある父の菩提寺には、文学碑があります。
碑文に書かれている言葉は、「本是山中人」。
山の中の人、と書いて、山中人。
龍之介が、岩国を訪れた記憶を懐かしんで、自分自身のことを称した言葉だと言われています。
隣にある副碑文には、こんな一節が刻まれています。
「人生は落丁の多い本に似てゐる。
一部を成してゐるとは称し難い。
しかし兎に角一部を成してゐる。 芥川龍之介」
この言葉には、もともと人生に失敗やトラブルはつきもので、むしろその失敗こそ、楽しみ受け入れなくては、一冊の書物にならないのだ、という芥川の思いが読み取れます。
奇しくも、岩国の文学碑にある、この二つの言葉は、芥川の一生を象徴する言葉に思えてきます。
実の父・新原敏三と、育ての父・芥川道章は、あらゆる点で正反対な人間でした。
敏三は、渋沢栄一の耕牧舎に勤めていた実業家。
粗野で癇癪持ち。
教養に欠けるが行動的で、商売の才覚に長けていました。
反対に道章は、俳句や南画をたしなむ繊細な人格者。
礼儀正しく、作法にうるさい都会人だったのです。
母が心を病むことによって、実の親から引き離され、まったく真逆の環境に放り込まれた龍之介。
彼の内なる分裂は、やがて、たぐいまれなる観察眼を育んでいったのです。
35年の生涯を文学に捧げた小説家・芥川龍之介が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

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