第百九十六話『自分の弱さから逃げない』-【岐阜篇】作家 島崎藤村-

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「木曽路はすべて山の中である。あるところは、岨(そば)づたいに行く崖の道であり、あるところは数十間(すうじゅっけん)の深さに臨む木曽川の岸であり、あるところは山の尾をめぐる谷の入り口である。一筋の街道はこの深い森林地帯を貫いていた」。
有名な書きだしで始まる、小説『夜明け前』。
作者は、現在の岐阜県中津川市馬籠出身の島崎藤村です。
彼は生まれ故郷の様子を、まるで鳥が谷間を飛びながら眺めるように描写しました。
馬籠は、木曽路の宿場町。
かつてはにぎわいを見せていた街道も、島崎の幼年時代には、鉄道や国道の新設にともない、さびれつつありました。
彼がこの地に暮らしたのは、幼少期の数年でしたが、木曽山中の景色や匂い、伝統や人々の暮らしは、人格形成に多大な影響を与えたと言われています。
北アルプスの一角。
山脈に挟まれた谷での生活は、厳しい寒さとの闘いが常でした。
山肌を縫うように道がうねっている。
屋根には風雪に耐えるように、重い石がのっている。
ひとびとは、自然と向き合い、自然と喧嘩せぬよう、置かれた環境の中で必死に生きていく。
彼は、こんな言葉を残しています。
「弱いのは決して恥ではない。その弱さに徹しえないのが恥だ」。
生まれると、兄弟それぞれに乳母がつくような名家の出身でしたが、気が弱く、人の目が気になり、まわりの人の言葉を信じることができない、繊細な子ども。
いつも、他人と自分の違いばかりを数えあげ、疎外感に打ちのめされていました。
そんな島崎が、明治、大正、昭和を生き抜き、しかも、浪漫主義の詩人、自然主義文学の大家、偉大な歴史小説家と、絶えず自分の変革を遂行したのです。
彼が大切にしたのは、自分の弱さでした。
弱さから逃げないことで彼は自分を律し、成長のための努力を惜しまなかったのです。
文豪・島崎藤村が、人生でつかんだ明日へのyes!とは?

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