MITにおけるアントレプレナーシップ形成の歴史(その3)

 
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【今回のまとめ】 ・MITでアントレプレナーシップ教育を本格的に進めるために、1990年にアントレプレナーシップ・センターが設立された。ビジネススクールや工学部など学内組織が協力して設置された点が重要だ。  1990年代に入ると、学生たちのアントレプレナーシップへの関心は更に高まり、学生によるビジネスプラン・コンテストである1K(優勝賞金が1,000ドル)もスタートした(現在は賞金規模が100倍の100Kに)。ロバーツ教授は、当時の様子を「学生が自分たちでビジネスプラン・コンテストをやりたいって、研究室を訪ねてきたんだ。具体的な相談は、コンテストの優勝賞金を工面してもらえないか?ということ。その場で知り合いのベンチャーキャピタリストに電話したら快くOKしてくれて、それで1Kがスタートしたんだよ」と懐かしそうに話していた。  そして遂に、MIT内の複数の学部が協力する形で、スローン・スクール内にMITアントレプレナーシップ・センターが設立されるに至ったのである(1990年)。このセンター運営について、ロバーツ教授は以下の4つの重要点を指摘している。 1) MITキャンパス全体の関与と協働(ビジネスや工学の学生・教員の連携) 2) 教員と実務家による"デュアル・トラック"(MITのモットーである"mind and hand") 3) リアルな課題解決を伴う"アクション・ラーニング"の重視 4) 個人ではなくチームの重視(会社設立の訓練として)  MITアントレプレナーシップ・センターの立ち上げに深く関わったスローン・スクール(経営学部)と工学部には、アントレプレナーシップ関連の教員が数多く名を連ねている。設立以来30年間に、スローン・スクールだけで15名、工学部で7名に及ぶ。これらの教員は、アントレプレナーシップとイノベーションについて先端的な研究を進めるとともに、それを教育にフィードバックしてきたのだ。  また、教員のみならず数多くの実務家も教育に協力してきた。その多くは、起業経験を持つ経営者や投資家などである。高田がMITの講義に参加していた際に、多くの講義では教員と実務家がペアで登壇して講義を進める様子を頻繁に目にした。まさに、MITのモットーである"mind and hand"そのものだと言える。  その後、2006年には、スローンのMBAコースの中にE&I(アントレプレナーシップ&イノベーション)トラックが創設された。このトラックは、イノベーション・ドリブンな会社を起こすために必要な知識やスキルを獲得することを目的にしている。普通のMBA学生は、大手から大手への転職の合間にMBAを取得し、キャリア・アップを目指す。しかし、E&Iトラックで起業に焦点を当てたプログラムがスタートしたことで、今では多くの学生がこのトラックを希望している。120名のキャパに対して、常にウェイトリストができるほどの人気である。  このE&Iトラックでは、チームによる演習とリアルなプロジェクトへの参画が強く要求される。前述の「ニュー・エンタープライズ」という科目を始めとして、「シリコンバレー・ツアー」や、スタートアップのインターンシップを通じて会社の課題を解決する「E-lab」や、途上国で現地の課題を解決する「G-lab」といった実践的プログラムも提供している。さらに、大学の発明にもとづく事業化の可能性を明らかにするi-Teamという科目も人気である。ちなみに、このi-Teamの手法を参考にして、高田が担当するQBS科目「産学連携マネジメント」は、2012年にシラバスを大幅改定し、九大やその他の大学が保有するリアルな発明技術を取り上げて、その商業化計画を立案し、最後にベンチャーキャピタルにプレゼンテーションする、というスタイルの講義を行っている。

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