MITにおけるアントレプレナーシップ形成の歴史(その2)

 
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【今回のまとめ】 ・戦前〜戦後を通じて、MITの教授たちによる起業が相次ぎ、それが米国東部の産業形成に寄与してきた。その「起業」の社会的な重要性がロバーツ教授たちによって分析され、アントレプレナーシップ教育もスタートしたのである。  教授や学生たちによる旺盛な技術実用化と並行して、MITでは産学連携を組織的に支援するため、1948年の時点で、既にILP(インダストリアル・リエゾン・プログラム)がスタートしていた。ILPは、200社以上の世界の技術系大手企業がメンバーとして加盟し、MITの先端研究に関する情報提供や、受託研究のマッチング機会などを提供してきた。  教授個人の活動と組織的な支援の仕組みがシナジーを形成したことで、今ではMITの年間研究費総額の22%が民間企業からの受託研究だという(2018年、MITの研究費総額は約730億円なので約160億円が民間から)。例えば、九州大学も産学連携には熱心な大学だが、年間の研究費総額(科研費+受託研究+共同研究)約200億円のうち、民間からの収入は約26億円と13%だ(2018年財務レポートより)。圧倒的な金額の研究費が、民間からMITには流入しているのだ。  また、歴史上初めてベンチャーキャピタルを生んだのも、MIT関係者だ(名誉学長のコンプトンが1946年にARDを設立)。大学で生まれる科学技術の成果を活用し、リスクは高いが成功すると大きなリターンを得られるという、今では当たり前のベンチャー投資の原型が、MITの周辺で生まれていたのだ。  第二次大戦後、MITの教授が関わる起業数は増加の一途だった。では、教育はどうだろうか?1960年代に入って、MITの卒業生で特許や著作権に詳しい専門家が、電気工学部の学生に対して「大手企業からエンジニアがアイデアを盗まれないために」という趣旨の講義を行っていたのだが、その同じ頃に、著名な科学者・発明家で事業家でもあるリチャード・モースという人が、アントレプレナーシップの重要性に着目し、新会社を起業するための知識を提供する科目「ニュー・エンタープライズ」を、MITの産業マネジメント学部で開講するようになったのである。ちなみにこの科目は、現在もMITのスローン・スクール/アントレプレナーシップ・センターの目玉科目として継続開講されている。  こうやって、「mind and hand」をモットーとするMITが設立されて以来、先端の科学技術を企業や産業へと転換させるMITの教員や学生たちが増加し、その中で、1960年代にMIT初のアントレプレナーシップ教育がスタートしていたのである。  また、1961年にケネディ大統領のイニシアチブでNASAの宇宙開発事業が拡大した頃、「どうすれば、NASAによる大学の研究支援から、社会経済的な恩恵を生み出せるか?」という課題に対して、この本の著者であるエド・ロバーツ教授は、MITの経験に基づき、「技術ベースの新会社を設立し、科学技術を市場へと送り出す役割を担わせるべきだ」と提案したことで、"アントレプレナーシップ"という名称を冠した「MITアントレプレナーシップ・リサーチ・プログラム」がスタートした。  当時は、まだアントレプレナーシップの学問領域は確立されていなかったが、このセンターでは、技術にもとづく起業のケーススタディの蓄積を進め、最終的には宇宙工学のみならず、バイオやエレクトロニクスなど多様な産業領域で、800もの事例が蓄積され、起業家のパーソナリティや資金調達の経緯、意思決定、製品開発・・・等々の詳細な情報が分析された。  分析された事例の中には、MIT周辺の大企業からスピンオフした起業例も含まれていたことで、"イントレプレナーシップ/コーポレート・アントレプレナーシップ(企業内のアントレプレナーシップ)"の研究も進んだ。これがきっかけで、1978年にMIT同窓生の起業支援団体である「MITエンタープライズ・フォーラム」が設立されたのである。  こういったMITを中心とする多数の起業例とアントレプレナーシップの醸成は、MITのTLO(技術移転オフィス)にも影響を与えた。1980年代半ばには大学発のスタートアップの役割を重視して、従来の特許ライセンスのポリシーを変更し、スタートアップには独占権を付与できるようにし、に加えて、ライセンスの対価をスタートアップのエクイティ(発行済株式やストックオプション)で受け取れるようにして、大学発のスタートアップをサポートしたのである。

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