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ブックレビュー(18)平川克美『ビジネスに「戦略」なんていらない』洋泉社

 
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 今日は、平川克美さんの『ビジネスに「戦略」なんていらない』という本を紹介します。洋泉社という出版社から新書として2008年に刊行されており、現在では新本として購入することが難しいかも知れませんが、知的刺激に満ちた好著ですので、古本市場などで探して一読されることをお勧めします。  著者の平川克美さんは、略歴によると1950年のお生まれで、早稲田大学理工学部を卒業された後、翻訳サービスを提供するアーバン・トランスレーションという会社を設立し、その後も99年にはシリコンバレーでのインキュベーション・カンパニーの設立に参加し、2001年にはリナックスカフェという会社を設立するなど、実業の世界に携わってこられた方です。一方、今日ご紹介する本の旧版に当たる『反戦略的ビジネスのすすめ』を2004年に出版されてからは、『移行期的混乱』、『グローバリズムという病』など経済・経営に関するエッセーや、社会評論関係の本を多数出版されています。  内田樹さんというフランス文学者と平川さんは幼なじみであり、ともにアーバン・トランスレーションを設立した同志でもあり、共著もあって、今日ご紹介する本の巻末には内田氏との対話が収録されています。  さて本書の内容ですが、まず冒頭で著者は、ビジネスをその本質の中心で捉えることが本書のモチーフであると述べています。そして、人間がビジネスをするのではなく、ビジネスをする動物が人間なのだという視点を提起しています。つまり、ビジネスというものを、それだけ人間にとって本質的な行為として再定義してみたいというモチーフを掲げている訳です。  著者は、このようにして本書の意図を通常のビジネス書と区別した上で、ビジネス書がつまらない理由は、短期的な成功の秘訣は書かれていても、長期的な成功の意味については予め目を瞑っているからだと言います。そして、お金であれ、達成感であれ、経営者の自己実現であれ、明確な目的が事前にあるものだとする考え方そのものが、ビジネスをつまらなくさせている原因の1つだと述べています。  著者はまた、書店のビジネスコーナーに戦略本が所狭しと並んでいる状態に対して、なぜ人は自らが発明したビジネスという魅力的なコミュニケーションを戦争というつまらないアナロジーで語りたがるのかと問いかけ、その理由のひとつはビジネスが限られたリソースの奪い合いとして認識されるようになったからだろうと推論しています。奪い合いであれば、その最終形態は戦争となり、全てのプロセスは「勝つか負けるか」という結果に奉仕するだけの意味しか持たなくなります。しかし、著者はプロセスこそ重視すべきだと言います。  人は敵よりも早く戦略を手にしないと大変なことになるという恐怖心によって戦略本を買わされているけれども、まずビジネスとは基本的に顧客と向き合うところから始まるというプロセスに著者は注意を促します。そして、限られた顧客を奪い取るのがビジネスであり、そのために同業者に対して競争優位に立つための戦略が必要だという見方があるけれども、同業者とは決まったパイを取り合うのではなくパイ全体を広げる局面では利益を共有する関係にあり、つまり競争したり協力したりする関係にあるのだと述べています。  こうして著者は、ビジネスの全ての課題は、顧客と何をどのように交換したか、その結果、ビジネスの主体の側に何が残り、顧客の側に何が残ったのかということの中になる筈だと言います。この交換のプロセスは、モノやサービスとお金が交換されると同時に、技術や誠意といったものが満足や信用といったものと交換されるという二重の交換として捉え直され、そこからビジネスの過酷さも面白さも派生してくるとされています。  著者は、こうした交換を通じて組織に蓄積される信用や潜在力を「見えない資産」と呼んでおり、それこそが企業の分化や成長に大きな影響を与えるのだと言います。一方、勝ち負けのような結果だけしか見ない今日的な現象を一種のフェティシズムであるとしています。フェティシズムというのは、特定のモノや部分を倒錯的に偏愛する傾向を言いますから、こうした傾向を排除しない限り、「見えない資産」の重要性は見えてこない訳です。そして、「見えない資産」の蓄積には、戦略的、攻略的な方法は必ずしも有効ではなく、むしろ戦略的な成功は「見えない資産」の減少を引き換えにしてしまう可能性が高いという点に警鐘を鳴らしています。  本書の大きな筋立てを要約してみましたが、本書の面白さは、随所で本筋から派生して展開される議論にも見出されます。私はMBAやMOTに対する著者の捉え方には異を称えたい点もあるのですが、ビジネスの本質に関する本書の議論にはほぼ完全に同意できると思っています。「見えない資産」に関する議論などは、期せずして知識マネジメントの領域で発展させられてきた理論と多くの共通点を持っており、著者の考察が経営理論の最先端に伍するものであることを示しています。 今回のまとめ:ビジネスを顧客とのコミュニケーションという本質的な次元で捉え直し、勝ち負けの結果のみを見る戦略的思考の危うさを突いた好著です。
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