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第6期「科学技術・イノベーション基本計画」(2)

 
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 前回から、今年3月26日に閣議決定された第6期「科学技術・イノベーション基本計画」について解説しています。前回は基本計画の根拠法である科学技術・イノベーション基本法が改正され、人文・社会科学が政策対象に含められたことや、イノベーションの創出が政策の柱とされた背景について論じました。今回は、第6期基本計画の内容を検討してみます。  政策には、目指すべき方向性、ビジョンというものが掲げられますが、これについて第6期基本計画は、第5期基本計画で提唱された「Society 5.0」というコンセプトを継承しています。  この「Society 5.0」について第5期計画は、「狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続くような新たな社会」であるとし、「ICTを最大限に活用し、サイバー空間とフィジカル空間とを融合させた取組により、人々に豊かさをもたらす超スマート社会」であると説明しています。さらに、この「超スマート社会」という言い換えについては、「必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細かに対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、言語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会」と定義しています。  私は丁度5年前に、この番組で第5期基本計画について解説した際、このような誰にとっても望ましい極楽浄土のようなビジョンが、5年程度の中期計画中に実現すべきものとして書かれると、些か空想的と言わざるを得ないのではないかと疑問を述べました。  このように望洋としたビジョンだったからかも知れませんが、第6期基本計画では超スマート社会の定義には触れず、国内外の情勢変化を踏まえてSociety 5.0を具体化することを課題としています。そして、「我が国が目指す社会」の特徴を2つのポイントに渡って提示しています。  ひとつは、「国民の安全と安心を確保する持続可能で強靭な社会」というものです。ここで言われている「持続可能性」については、SDGs(2015年に国連で採択された持続可能な開発目標)の達成を見据えた地球環境を実現し、現世代のニーズを満たしつつ、将来の世代が豊かに生きていける社会を実現することと補足されています。また、社会の強靭性については、我が国の社会が、災害、感染症、サイバーテロなどの様々な脅威に晒されており、加えて米中の技術覇権争いが激化し、国際的なサプライチェーンが寸断されるリスクや、技術流出のリスクが顕在化してきたことに言及した上で、総合的な安全保障を実現するという言葉で補足しています。  もうひとつのポイントは、「一人ひとりの多様な幸せ(well-being)が実現できる社会」というものです。これについては、「誰もが能力を伸ばせる教育と、それを活かした多様な働き方を可能とする労働・雇用環境の実現」、「人生100年時代に生涯にわたり生き生きと社会参加し続けられる環境の実現」、「人々が夢を持ち続け、コミュニティにおける自らの存在を常に肯定し活躍できる社会の実現」といった言葉で補足されています。  そして、さらにこのような社会像に、「信頼」や「分かち合い」を重んじる我が国の伝統的価値観を重ねてSociety 5.0を実現するという理念を国際社会に向けて発信し、世界の人材と投資を呼び込むという方向が示されています。  第6期基本計画では、この後、政府研究開発投資の総額など具体的な政策目標に関する記述が続きますが、ここでは言及しません。お聞きになっていると、無理に腹一杯にさせられているような気がしてくるのではないでしょうか。正直な感想を言えば、これを最初に読んだ時、その自己陶酔的な文体に私は些か辟易させられました。しかし、ここには今後の科学技術イノベーション政策を転換させる重要な内容が含まれています。  第6期基本計画が、第5期までと大きく異なっている点は、政策対象が明らかに社会生活全体をカバーする範囲にまで拡張されたことに見出されます。これまでの基本計画でも、例えば第5期計画では「国民の安全・安心の確保と豊かで質の高い生活の実現」という文言が使われており、社会生活全体に関連する政策目標が掲げられてきたことはありますが、それを達成するための具体的な課題になると、自然災害への対応や、食品安全・生活環境・労働衛生等の確保といった科学技術が直接寄与できる範囲に止められてきました。ところが今度は、幸せ(well-being)の実現と言うキーワードのもとに、科学技術の振興と活用という範囲を明らかに超える多様な政策課題が提起されています。それらは明らかに科学技術イノベーション政策だけでは達成できず、雇用政策、福祉政策、社会保障政策などとの高度な連携が必要となります。その連携の方策が具体化できなければ、科学技術イノベーション政策の一人相撲に終わってしまうでしょう。  信頼や分かち合いを重んじる我が国の伝統的価値観が、国際社会に訴求できる強みになるという認識も素朴過ぎるように思われます。私は社会システムを構成する上で信頼は非常に重要な役割を果たすと思っているのですが、フランシス・フクヤマ等によって日本が高信頼社会と呼ばれたのは1990年代半ばのことであり、その価値観がそっくり現在まで遺産相続されているとは思えません。それを再構築し維持していくこと自体が重い政策課題になると考えます。  これは必ずしも否定的な意味で言うのではありませんが、第6期基本計画の目指す社会像は、小さな子供に描かせたユートピアのような印象を与えます。全ての人々の利益を両立させることなど原理的に不可能だと言うことを知っている大人には夢物語にしか見えませんが、未来は子供たちのものですから、誰もそれを頭ごなしに否定することはできません。しかし、政策というものは元来、両立がままならない現実を知った大人が考え出すべきものだと私は思います。 今回のまとめ: 第6期基本計画が目指す社会は、科学技術イノベーション政策のみでは達成不可能な課題を含んでいます。
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 前回から、今年3月26日に閣議決定された第6期「科学技術・イノベーション基本計画」について解説しています。前回は基本計画の根拠法である科学技術・イノベーション基本法が改正され、人文・社会科学が政策対象に含められたことや、イノベーションの創出が政策の柱とされた背景について論じました。今回は、第6期基本計画の内容を検討してみます。  政策には、目指すべき方向性、ビジョンというものが掲げられますが、これについて第6期基本計画は、第5期基本計画で提唱された「Society 5.0」というコンセプトを継承しています。  この「Society 5.0」について第5期計画は、「狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続くような新たな社会」であるとし、「ICTを最大限に活用し、サイバー空間とフィジカル空間とを融合させた取組により、人々に豊かさをもたらす超スマート社会」であると説明しています。さらに、この「超スマート社会」という言い換えについては、「必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細かに対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、言語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会」と定義しています。  私は丁度5年前に、この番組で第5期基本計画について解説した際、このような誰にとっても望ましい極楽浄土のようなビジョンが、5年程度の中期計画中に実現すべきものとして書かれると、些か空想的と言わざるを得ないのではないかと疑問を述べました。  このように望洋としたビジョンだったからかも知れませんが、第6期基本計画では超スマート社会の定義には触れず、国内外の情勢変化を踏まえてSociety 5.0を具体化することを課題としています。そして、「我が国が目指す社会」の特徴を2つのポイントに渡って提示しています。  ひとつは、「国民の安全と安心を確保する持続可能で強靭な社会」というものです。ここで言われている「持続可能性」については、SDGs(2015年に国連で採択された持続可能な開発目標)の達成を見据えた地球環境を実現し、現世代のニーズを満たしつつ、将来の世代が豊かに生きていける社会を実現することと補足されています。また、社会の強靭性については、我が国の社会が、災害、感染症、サイバーテロなどの様々な脅威に晒されており、加えて米中の技術覇権争いが激化し、国際的なサプライチェーンが寸断されるリスクや、技術流出のリスクが顕在化してきたことに言及した上で、総合的な安全保障を実現するという言葉で補足しています。  もうひとつのポイントは、「一人ひとりの多様な幸せ(well-being)が実現できる社会」というものです。これについては、「誰もが能力を伸ばせる教育と、それを活かした多様な働き方を可能とする労働・雇用環境の実現」、「人生100年時代に生涯にわたり生き生きと社会参加し続けられる環境の実現」、「人々が夢を持ち続け、コミュニティにおける自らの存在を常に肯定し活躍できる社会の実現」といった言葉で補足されています。  そして、さらにこのような社会像に、「信頼」や「分かち合い」を重んじる我が国の伝統的価値観を重ねてSociety 5.0を実現するという理念を国際社会に向けて発信し、世界の人材と投資を呼び込むという方向が示されています。  第6期基本計画では、この後、政府研究開発投資の総額など具体的な政策目標に関する記述が続きますが、ここでは言及しません。お聞きになっていると、無理に腹一杯にさせられているような気がしてくるのではないでしょうか。正直な感想を言えば、これを最初に読んだ時、その自己陶酔的な文体に私は些か辟易させられました。しかし、ここには今後の科学技術イノベーション政策を転換させる重要な内容が含まれています。  第6期基本計画が、第5期までと大きく異なっている点は、政策対象が明らかに社会生活全体をカバーする範囲にまで拡張されたことに見出されます。これまでの基本計画でも、例えば第5期計画では「国民の安全・安心の確保と豊かで質の高い生活の実現」という文言が使われており、社会生活全体に関連する政策目標が掲げられてきたことはありますが、それを達成するための具体的な課題になると、自然災害への対応や、食品安全・生活環境・労働衛生等の確保といった科学技術が直接寄与できる範囲に止められてきました。ところが今度は、幸せ(well-being)の実現と言うキーワードのもとに、科学技術の振興と活用という範囲を明らかに超える多様な政策課題が提起されています。それらは明らかに科学技術イノベーション政策だけでは達成できず、雇用政策、福祉政策、社会保障政策などとの高度な連携が必要となります。その連携の方策が具体化できなければ、科学技術イノベーション政策の一人相撲に終わってしまうでしょう。  信頼や分かち合いを重んじる我が国の伝統的価値観が、国際社会に訴求できる強みになるという認識も素朴過ぎるように思われます。私は社会システムを構成する上で信頼は非常に重要な役割を果たすと思っているのですが、フランシス・フクヤマ等によって日本が高信頼社会と呼ばれたのは1990年代半ばのことであり、その価値観がそっくり現在まで遺産相続されているとは思えません。それを再構築し維持していくこと自体が重い政策課題になると考えます。  これは必ずしも否定的な意味で言うのではありませんが、第6期基本計画の目指す社会像は、小さな子供に描かせたユートピアのような印象を与えます。全ての人々の利益を両立させることなど原理的に不可能だと言うことを知っている大人には夢物語にしか見えませんが、未来は子供たちのものですから、誰もそれを頭ごなしに否定することはできません。しかし、政策というものは元来、両立がままならない現実を知った大人が考え出すべきものだと私は思います。 今回のまとめ: 第6期基本計画が目指す社会は、科学技術イノベーション政策のみでは達成不可能な課題を含んでいます。
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