従量制とダイナミック・プライシング

 
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今日は、物やサービスの値段をどうやって付けていくかというお話をしたいと思います。どんなに優れた製品を開発しても、あるいは素晴らしいサービスを提供しても、そこから対価を得られなければ商売としては成立しません。対価を得る方法にはいくつかパターンがあります。大きく分けると、従量制と定額制があります。従量制は恐らく一番馴染みのある方法だと思うのですが、要するに提供する量に従って金額が変わるという形です。リンゴ1個が100円だとすると、2個買えば200円、10個買えば1,000円という形になります。あるいは、地下鉄やバス、タクシーなどでは、初乗り料金に加えて、乗車距離とか時間に応じて料金が加算されていきます。このように、物を買ったりサービスを消費した量に従って課金する仕組みのことを従量制というわけです。 従量制のメリットの1つは、消費者にとって仕組みが分かりやすいという点にあります。事業者にとっても、物の生産やサービスの提供に従って費用は増えていきますので、それを回収するという点でも従量制は合理性が有ります。例えば、リンゴやキャベツなどの食材をスーパーが販売する際には、キロ当たりいくらだとか個数当たりいくらという形で仕入れているはずです。したがって、販売する時も1個当たりいくらという形で値段を付けていかないと割に合わないということが生じるわけです。一般に、販売価格に対する原価の比率(原価率)が高い商品の場合、従量制で販売設定をする方が事業者としては赤字を避けやすいということになります。逆に言うと、例えばファミリーレストランなどのドリンクバーは、ドリンクを何杯飲んでも料金は一定。つまり定額制という形が多いわけですが、これが可能なのはドリンクの原価率がかなり低いからという背景があるわけです。 では、この従量制の価格体系において、単価をどのように決めるべきなのでしょうか。多くの製品やサービスは決まった価格で販売されています。例えば、コンビニのおにぎりは1個125円とか130円。ミネラルウォーターだったら1本120円ですよね。公共交通機関であれば、天神から博多駅までが210円だとか、天神から福岡空港までならば260円といった具合です。単価は固定ですから、消費者にとっても事業者にとっても予測が立てやすいといったメリットが有るわけです。 これに対して、単価を柔軟に変動させる方法も有ります。これをダイナミック・プライシングと言います。例えば、天候などに左右されやすい生鮮食品では、日々値段が変わるのが普通です。悪天候や物流障害などが発生して供給が少なくなると、野菜のお値段は数割増しになったり、場合によっては数倍になったりするということは普通のことだと思います。つまり、市場の状況に応じて、動的に値付けがされているというわけなのです。 このメカニズムを様々な商品やサービスに広げようという試みが最近なされています。例えば、すぐ思いつく例としてホテルの宿泊料や航空券の値段は時期によって大きく変動します。これは、ホテルの客室や航空券の座席を1つの商品としてみた時に、在庫ができないという特徴があるからです。このような商品は購入されなければ施設の維持や運用にかかる費用が無駄になってしまいますから、宿泊日や搭乗日が近づいてきても売れ残っている場合には、値引きしてでも販売してしまいたいのです。逆に、夏の旅行シーズンですとかコンサートのイベントによって需要が集中的に発生しても、短期的には客室とか航空機の座席はほとんど増やせません。そういったケースでは、需要が供給を上回って価格が上昇していくというわけです。ヨーロッパのホテルでは、その街で大規模なイベントがあるとコンベンション価格と言って、宿泊料が2倍、3倍になるということが少なくありません。 需要と供給に応じて動的に価格を動かしていこうという取り組みは、野球場や劇場の座席でも始まっています。従来は例えば、S席12,000円、A席8,000円、B席5,000円といった具合に、舞台からの距離に応じてゾーン別に固定的な価格になっていたと思います。それに対して近年では、日々の予約状況と過去の実績に基づいた売れ残り予測を加味して、座席毎に価格を刻一刻と変化させて収益を最大化しようという試みがなされているのです。例えば、三井物産やぴあなどが株主となっているダイナミックプラス株式会社という会社があるのですが、ビックデータとAIを用いて、スポーツチケットや音楽ライブ、演劇チケット、ホテルやツアー販売、航空券などのダイナミック・プライシングのサービスを提供して注目を集めているのです。 今日のまとめです。販売する商品や提供するサービスの量に従って、代金を徴収する仕組みを従量制と言います。従量制において、商品やサービスの単価を市場の需給に応じて動的に変動させるダイナミック・プライシングが注目を集めています。ダイナミック・プライシングは、生鮮食品やガソリン価格などで従来から取り入れられてきましたが、近年ではホテルや航空券、スポーツ観戦や演劇など、サービスの在庫の利かないビジネスにおいて導入が試みられています。

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