簡単には答えの出ない事態に耐える「ネガティブ・ケイパビリティ」の重要性（その２）

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【今回のまとめ】 　ネガティブ・ケイパビリティは、学問の探究や芸術家の創作活動、戦略家が直観を得るうえで有効だ。そのためには、好奇心を持ち続けること、怒りや悲しみといった持続性のある感情を大切にすること、少数派であることを厭わないこと、などが重要だ。 ・前回は、様々な社会の状況や自然現象、苦悩に意味付けし、それを分かろうとする「ポジティブ・ケイパビリティ」と、どうにも答えの出ない、対処しようもない事態に耐える「ネガティブ・ケイパビリティ」について紹介した。今回は、「ネガティブ・ケイパビリティ」の重要性について更に考えてみたい。 ・前回解説したように、ポジティブ・ケイパビリティには、良い面もある一方で、目の前の陳腐な解決策に拙速に飛びついたり、画一的な思考やマニュアル化に囚われて自分自身の頭で考えなくなったり・・、といった問題がある。特に、近年のIT化の進展によって、必要な情報が詳細なレベルで瞬時に手に入る環境が、ポジティブ・ケイパビリティを増長しているようにも見える。 ・このような状況だからこそ、ネガティブ・ケイパビリティの重要性を強く意識して、自身の洞察を深めることを心がけることが大切だ。箒木先生の著書の内容も踏まえると、ネガティブ・ケイパビリティには以下のような点で有効性がある。 １． 学問における洞察 ・問題解決を急がない、問題をじっくり設定する、簡単に見切りをつけない ・学ぶほど未知の世界が広がる ２． 芸術家の創造性 ・曖昧に耐え、切れ切れのものが均衡し、一体となるのを待ち受ける能力を持つ（≠段取り ３． 戦略家の直観 ・本質を見抜く瞬間的なひらめきを、長い洞察と熟慮のうえで獲得する ・また、ネガティブ・ケイパビリティを持つうえで重要なこととして、下記が挙げられる。 • 好奇心を持ち続ける - 好奇心＝問いの原動力 - 時には流れに任せる（偶発や一期一会の重要性） - 素人の状態からスタートすることを厭わない（創作に向かう芸術家・作家） • 怒りや悲しみを大切に - 持続性を伴う強い動機となり、粘り強く洞察を深められる • 少数派であることの重要性 - 多数派の常識に囚われない、深い洞察が得られる - 少数派は、価値観が定まらない混沌のなかで、粘り強く耐え続ける - その結果、物事を正しく見る目を持ちやすい ・例えば、イノベーティブな事業を提案するスタートアップの創業メンバーには、事業のゴールもまだハッキリ見えず、共感者も少ない状況で、試行錯誤を繰り返しながら事業を構想し、実現に向けて前進させるので、ネガティブ・ケイパビリティを持つことが効果的に作用するのではないかと考えられる。