スエズ運河の事故から①

 
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3月の末に、台湾の巨大なコンテナ船がスエズ運河で座礁し、国際物流の大動脈であるスエズ運河が閉鎖されたことがニュースで報じられたので、まだ記憶に新しいかと思います。特に、世界のトレードにとってスエズ運河の役割について、あるいはなぜ今回の事故を起こした台湾の企業の運航するコンテナ船は、船を所有する船主が日本の企業であり、またパナマ船籍なのかについて、今日と明日でお話をしたいと思います。 スエズ運河の幅よりも大きな本当に巨大な船で、世界最大のコンテナ積載量24,000個型の船に近い大きさです。まず事故の概要についてお話をしたいと思います。世界有数の台湾の海運企業であるエバーグリーンの運航するコンテナ船「エバーギブン」と言うコンテナ船が、3月23日にマレーシアのタンジュン・ペラパスからスエズ運河経由でロッテルダムに向かう途中で、スエズ運河で座礁し、横向きになって運河を封鎖することになりました。この船の全長は399.94メートル、総トン数は21万9千トンと言う巨大なコンテナ船舶でしたので、完全に運河の通行が止まることになり、最大で422隻の船舶が通行できなくなったと言うことです。事故原因は、当時の強風による砂嵐あるいは人為的なミスなどが言われていますが、現在原因が究明中です。 この事故だけで、422隻の船が運河を通行できなくなったということです。スエズ運河は、パナマ運河と並んで、世界の貿易や国際物流の大動脈であり、一昨年の2019年には、年間で18,880隻が通行しました。つまり1日あたり約50隻が通過をすることになりますから、3月23日の座礁から、28日のサルベージの成功までに、それだけの船に影響したことになります。ここまで多くの船がスエズ運河を利用するのは、やはりそれだけメリットが多いからです。皆さん世界史でも勉強されたように、スエズ運河は1869年にフランス人のレセップスによって開通しました。もしこの運河がなければ、ヨーロッパからアジアまでのトレードは、まさに大航海時代のように、アフリカ最南端を経由することになり、大幅に航行距離が伸びることになります。 例えばオランダのロッテルダム港と日本の横浜港間の距離で言えば、約2万1千キロがスエズ運河経由することで、2割程度短縮すると言われています。この距離の短縮によって、時間的にも、燃料費や船舶・船員にかかる人件費などの節約にも繋がってきますし、当然ながらそれだけ早く貨物が届けられる効果は、とても大きいといえます。 スエズ運河は、19世紀の1969年に開通と言いましたが、2015年8月には大幅な拡張工事を終えています。それはより大きな船が通行できるようにするために、拡幅工事や水深を深くするなどの工事が行われた結果です。グローバルな規模で調達と供給が行われるグローバル・サプライチェーンのもとで、ますます需要が伸びていることになります。 そのように考えると世界の貿易がこれほどまでにスエズ運河などに依存しているということになると、今回の事故のようなリスクはとても高くなります。アジアとヨーロッパ間の貿易の大動脈とすれば、これがなければまたアフリカ最南端周りになるのかと懸念されます。実際にそのような事態も今までに発生しています。例えば、1956年にエジプトのナセル大統領が、スエズ運河の国有化を宣言して、第2次中東戦争が発生したり、その後もエジプトとイスラエルの間にこの地域で武力衝突が起こるたびに、スエズ運河の船舶の安全航行が脅かされてきました。 そのバイパスとしては、アフリカ最南端周りだけではなく、シベリア・ランドブリッジというシベリア鉄道を経由してコンテナ貨物などを輸送したり、アメリカン・ランドブリッジと呼ばれる北米経由の輸送が考案され、実際に実施されてきました。しかし、アジアからヨーロッパに貨物を輸送するのに北米経由では、あまりにも時間がかかってしまいます。例えば日本からコンテナ船で北米西岸に輸送し、貨物列車に載せ替えて北米大陸を横断し、再度コンテナ船で東海岸からヨーロッパに輸送するなどという複雑で時間のかかる方法は、有事の際だからです。 中東の紛争も終わると誰もこのような輸送経路は選択することはありませんが、実際にアメリカン・ランドブリッジを使ってみた結果、アジアと北米の東海岸の間の輸送については、意外にもコンテナ船と貨物列車の組み合わせが、時間短縮にもなるということで、アメリカン・ランドブリッジの一部を使ったミニ版ということで、ミニ・ランドブリッジというサービスがすっかり定着しています。今や世界最大の複合輸送サービスです。 窮地に陥っての新たな工夫が、新しいサービスを生み出したということになります。今回の事故を受けて、早速にロシアから北極海航路についてのアピールが出されました。北極海航路というのは、この番組でも取り上げたことがありましたが、地球温暖化に伴って夏の間に北極海が結氷しなくなったために、年間で年によっては、7ヶ月程度船舶が航行できることから、ヨーロッパとアジアのトレードに、北極海航路を利用するというものです。砕氷船を先頭に護送船団方式を組む方法とか、ロシア国内の法律の整備が待たれていましたが、いよいよこれもスエズ運河以外の選択肢として考えられるということです。まさに、新たなイノベーションであり、新たなチャンスですね。 今日のまとめです。3月末にスエズ運河で起きた巨大なコンテナ船の座礁事故のことから、世界の物流の大動脈であるスエズ運河についてと、その代替輸送手段についてお話をしました。明日は、今回の事故のもうひとつの焦点である、日本のオーナーが所有するパナマ船籍のコンテナ船を台湾の海運企業が運航することの意味についてお話をしたいと思います。

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