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BR20 ブックレビュー(20) ジェリー・Z・ミュラー(松本裕訳)『測りすぎ―なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?』みすず書房

 
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今回のまとめ: 評価のための測定基準に執着することが危険な結果をもたらすという本書の指摘は、今日の日本でも重く受け止められるべき警告です。  今回はジェリー・ミュラーの『測りすぎ―なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?』という本を紹介します。著者のジェリー・ミュラーという人は、アメリカ・カトリック大学で歴史学教授の職にある人で、思想史や経済史を専門にしている研究者です。  原著は"The Tyranny of Metrics"というタイトルで2018年に刊行されています。タイトルを直訳すれば「測定基準の暴挙」ということになるでしょうが、私は「測りすぎ」という邦語訳タイトルの面白さに惹かれて読んでみました。すると期待に違わず大変興味深い内容の本でした。  この本の基本的なメッセージは、評価ための測定基準に対する執着は危険な結果をもたらすというポイントに要約できると思います。著者は本書の冒頭で、アメリカで製作された『ザ・ワイヤー』というテレビ・ドラマの内容を紹介しています。このドラマはクリエイター達が実体験に基づいて製作し、メリーランド州のボルティモアを舞台に、警察、学校、市の行政などが機能不全に陥っている様子を映し出したものだということです。そこで繰り返し取り上げられるテーマが、「説明責任」(アカウンタビリティ)の証明として設定された測定基準を達成するために、効率を犠牲にする様々な手段が用いられるというものです。例えば、警察は「検挙率」という測定指標が下がることを避けたがり、殺人課の刑事が死体の発見を阻止しようとさえする。学校は、生徒たちのテストの点数を上げられないと閉鎖される恐れがあるため、特定の科目のテスト対策教育だけに集中し、他の科目は無視するようになるといった有り様です。  さらに著者はイギリスの『ボディーズ』という病院を舞台にしたテレビ・ドラマを上げ、外科医が手術の成功率を維持するため、難しい症例を扱うことを避ける戦略をとるという話に言及しています。その結果、手術が難しい疾患を抱える患者は、手術を受けることもできずに確実に死に向かう訳です。  これらはテレビ・ドラマの話ですが、著者はそこで描き出されている現象は現実に存在すると述べています。実際、本書の後半では大学、学校、医療、警察、軍、ビジネス・金融、慈善事業と対外援助といった様々な機関や活動に関するケース・スタディの結果に基づいて、この点が証明されていますが、その前に、この測定基準の暴挙はどこから発生したのかが考察されています。  著者はその起源の1つを、フレデリック・テイラーが1911年に提唱した「科学的管理法」に見出しています。科学的管理法には、作業の分業化と標準化を進めた上で各作業の標準的なアウトプットを決定し、この基準を上回る作業を行った工員には高い報酬を支払い、下回れば報酬を下げるという成果主義的な思想があるのですが、著者は、このテイラー主義と呼ばれる管理思想が、やがてアメリカの軍事組織などにも染み込んでいった経緯を描き出しています。さらに「測定できないものは、管理できない」という考え方を公理とする経営コンサルタントが台頭することによって、この測定への執着が方向付けられたと述べています。  本書の内容から少し離れますが、経営学の組織論とか組織行動論に関する知識が、テイラー主義的な管理思想を否定する反証を積み上げることによって形成されてきたことを考えると、これは経営学の進歩とは逆行する方向だったと言わざるを得ません。それから「測定できないものは、管理できない」という考え方を誰が言い始めたのかは分かっていません。ただ、ピーター・ドラッカーだとする説があるようですが、私が知る限りドラッカーはそういう馬鹿げたことは言っていないし、むしろ早くから逆の立場に立った主張を展開しているという点は注意しておきたいと思います。  さて、著者は歴史学者である自分が測定基準の暴挙について書くことになった動機について、私立大学の学科長を務めた経験を通じて関心を持ったのだと述べています。契機になった変化は、アメリカの教育省に設置された委員会が、2006年に公表した報告書の中で、大学の認証評価について、より強い説明責任とより多くのデータ収集が必要であると主張し、各地の認証機関に対して実績成果を評価の軸に据えることを命じたことから発生したようです。この指示が大学の管理部門に下りてきて、著者は実績を測定するための多くの統計的情報を提供するために時間の大部分を割くようになり、研究や教育、職員の指導などの仕事に使う時間を取られてしまったと述べています。この著者自身の経験は、大学に関するケース・スタディの中で多角的に検証されています。  本書は、全篇を通じて、測定できるものが必ずしも測定に値するものだとは限らないということ、測定のコストがメリットより大きくなったり、本当に注力すべきことから労力を奪ったり、ゆがんだ知識を提供するかも知れないということに警鐘を鳴らしています。  ここで取り上げられている問題は日本にとって対岸の火事ではなく、今将に直面している問題だと言えるのではないでしょうか。少なくとも大学に関するケース・スタディの中で著者が述べていることは、私にとって身につまされるものでした。本書の末尾には、どのように測定基準を用いるべきかを判断するためのチェック・リストが付いています。ご自身の問題と思われる方には是非一読されることをお勧めします。
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