九州大学のアントレプレナーシップ教育(QREC、その1)

 
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・今回から4回に渡って、九州大学のアントレプレナーシップ教育の全体像について解説したい。 ・九州大学では、2010年12月にQREC(ロバート・ファン/アントレプレナーシップ・センター)という組織が設置され、ここが全学に対してアントレプレナーシップ教育を提供している。設立10年が経過した現在は、年間に30科目以上を開講し、累計の履修者数は毎年1,500人を越えるまでになっている。ちなみに、QBS(社会人学生)の履修は、2018年度は100人を越えており、90名という定員規模に対して、1人平均1科目以上を履修していることになる。 ・設立のきっかけは、組織名にもあるように、ロバート・ファンさんという九州大学のOBで、卒業後米国に渡ってビジネスで大成功した方からの寄付だった。当時、九州大学は創立100周年に向けたキャンペーン中で、その中で、ファンさんから「大学が起業家育成に力を入れるのであれば、ぜひ協力したい」と申し出があり、教育センターを設置しようということになった。 ・その準備のために、自分が7ヶ月間、米国東海岸のボストン(正確には、ボストンを流れるチャールズ川北側のケンブリッジ市)にあるMITのアントレプレナーシップ・センターに滞在し、大学におけるアントレプレナーシップ教育のあり方をMIT以外も含めて調査し、帰国後に3人の教員(現副センター長の五十嵐先生はスエーデンのチャルマース工科大学のアントレプレナーシップ教育を、初代センター長の谷川先生は米国シリコンバレーにあるスタンフォード大学の教育をそれぞれ調査)が知見を持ち寄って、QRECの設立構想をまとめることでスタートした。 ・そもそも、アントレプレナーシップとは、変化が激しく不確実な環境のなかで、魅力的な機会を発見し、必ずしも必要な資源が揃っていなくても、そこから価値を生み出そうとする一連のプロセスだと言われている。 ・QREC設立にあたって、この「アントレプレナーシップ」というカタカナを、「起業家(企業家)精神」という漢字を用いるかについて議論があったのだが、日本語で「起業家精神」と書いてしまうと、どうしてもベンチャー企業の創業社長(ソフトバンクの孫さんのような)を思い浮かべてしまう。しかし、アントレプレナーシップの概念はベンチャー企業を立ち上げるだけではなく、大企業においても、NPO法人においても、あるいは行政や大学などの教育機関においても求められるような、もっと普遍的なものだ。従って、たとえ日本の社会にまだ馴染みがないとしても、敢えて「アントレプレナーシップ」という言葉を使おう、ということを決めた。その結果、科目名がやたらと長くなりがちだったり(「アントレプレナーシップ・ファイナンス」とか「アントレプレナーシップ・キャリアデザイン」とか・・)、あるいは、外部アドバイザーの方から「カタカナが多すぎる」という苦言を頂いたりした(笑)。 ・さて、改めて現在の世の中を見てみると、アントレプレナーシップが重要視される時代背景が見えてくる。つまり、特に21世紀に入って、インターネットに自由にアクセス出来る環境ができ、今まで手に入らなかった情報が簡単に入手できるようになった。加えて、身の回りのデジタル化が進み、そこから得られる情報を解析して、それを新しいビジネスに用い易い時代になった。従って、社会の環境が大きく変わってきており、その変化のスピードもかつてに比べて圧倒的に速くなった。そのような環境は、最近ではVUCA: Volatility(変動性)、 Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)と呼ばれる。そのため、20世紀までに培われてきた過去の経験や成功モデルが通用しない局面が一気に増えているのだ。 ・従って、自分自身が主体性を持って新しい道を切り拓き、価値を生み出そうとするマインドセットや行動様式を持つことが極めて重要になってきている。そこでカギを握るのがアントレプレナーシップなのである。 ・次回は、QRECのアントレプレナーシップ教育について解説したい。 【今回のまとめ】 ・2010年12月に設立されたQRECは、今年で10周年となる。主体性を持って新しい道を切り拓き、価値を生み出そうとするマインドセットや行動様式を獲得するうえで、アントレプレナーシップ教育は極めて重要な役割を果たしている。

2002 つのエピソード