既存企業のイノベーションを加速するアクセラレーション・プログラム(その2)

 
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前回述べたように、既存企業でイノベーションを生もうとするアクセラレーション・プログラムは、従来から行われてきたスタートアップ向けのアクセラレーション・プログラムの手法を応用し、企業内に導入したものである。 従って、従来から社内に有していた方法あるいは価値観とはかなり異なったアプローチが取られている。このアプローチの特徴としては、下記が挙げられる。 1)短期間での仮説検証 プログラムでは、「リーン・スタートアップ」「リーン・ローンチパッド」に代表される素早い仮説検証手法が採用されている。まず、全社的な公募を経て選ばれた案件が実証実験のフェーズに進み、数ヶ月の短期で初期の事業仮説を検証し、事業化の可能性を見極める。 従来の新規事業開発では、予め精緻な市場分析と戦略策定を重ね、十分に事業の蓋然性を高めてから投資を行って一気に事業化を図る、という手法が取られてきた。しかしながら、近年のスタートアップでの経験や経営学分野での研究の蓄積から、イノベーティブな事業の初期段階の仮説検証フェーズでは、精緻な計画策定や過剰な資源投入を避けながら、できる限り小さく速く仮説検証を行うことが成功確率の向上に有効であることが明らかとなりつつある(以前の放送でも取り上げたCreAction / Effectuationがこれに該当)ため、各社ともこの手法を取り入れてプログラムを設計している。 2)社外連携(オープン・イノベーション)の促進 既存企業でイノベーティブな製品やサービスを開発する場合、自社が保有する経営資源に囚われていると、事業の「あるべき姿」を大胆に追求することができない。従って、近年の取り組みでは、社外、特にスタートアップ企業との連携機会を積極的に探索する工夫がなされている。 IBMの調査(Global C Suite Study 2016)によると、事業成長を果たしている企業群は、他社との連携、および顧客との共創を積極的に行っているという姿が明らかとなっている。イノベーションの成功には、社外との連携がカギを握るのである。 3)外部専門家の活用 前述のように、新規事業のプロセスで自社の常識に囚われていると、魅力的な事業創造の機会を見逃す恐れがある。従って、プロセスの途中で定期的に行うメンタリング(専門家による相談)や事業化の最終判断には外部の専門家の目が入るようにし、社内の常識に囚われない判断ができることが重要である。 4)失敗や常識外れの称賛 イノベーティブな製品やサービスは、時に常識はずれであり、そのため、当初は明確なゴール(目標像)を設定することが難しく、失敗確率も高い。一方で、既存企業では「失敗は回避すべきもの」という観念に囚われている。 従って、失敗を「回避すべきもの」と捉えるのではなく、「仮説検証の過程で発見された新たな事実」として捉え、失敗にまつわる経験と情報は事業の成功確率を高めるために必要不可欠であるという考えに立ち、失敗から積極的に学ぶことが重要となる。 5)人材育成と社内風土の変革 プログラムの実施を通じて、マインドセットと行動様式を持った人材が育成され、そのような人材が社内に増えることが、イノベーションに前向きな社内風土の形成につながる。つまり、アクセラレーション・プログラムは、新たなイノベーションを生む取り組みであると同時に、それを担う人材の育成、ひいては社内風土の改革の機会でもある。 6)トップのコミットメント 以上のような"常識はずれ"な活動を、企業内の一担当部門に担わせ、結果責任を取らせるのは明らかに荷が重い。従って、まずはトップ自らがそのような取り組みの必要性を十分に理解してリーダーシップを発揮し、実行に強くコミットすることが不可欠である。 以上、既存企業内でイノベーションを生むアクセラレーション・プログラムは、従来の社内の事業プロセスや価値観と対比させると、かなり異質なものである。このような活動は、江戸時代の長崎の「出島」のようなものだとも言える。たとえ小規模であっても特別な権限や経営資源を与えて、自由度を高めて実験的な取り組みを増やすことで、事業創造の機会を増やし、成功確率を上げるとともに、イノベーティブな風土を形成していくのである。 【今日のまとめ】 企業内のアクセラレーション・プログラムは、従来の事業手法や価値観とはかなり異質なので、「出島」のような社内の仕組みと切り離した場所と仕組みで実行させることが重要である。

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