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126 第115話

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冷蔵庫を開くと、いつもそこにあるはずの牛乳がないことに気がついた。
「しまった…。」
ジャージ姿のまま椎名は外に出た。
部屋を出て徒歩三分。横断歩道の先にコンビニエンスストアがあった。
信号が青になり歩き出すタイミングで、コンビニから客が出てきた。
その客と横断歩道上ですれ違いざまに椎名は口を開いた。
「Мы готовы.」
「Спросите в туалете.便所で聞く」
コンビニに入った椎名はそのまま店のトイレに入った。
そしてその備品棚に手を伸ばす。
そこには一台の携帯電話が置かれていた。
「Офрана начинает терять свою популярность. オフラーナは仲間割れが始まっています。」
「В частности. 具体的に。」 
「Главнокомандующий настроен скептически.Никому нельзя доверять. 司令塔が疑心暗鬼になっている。誰も信用できない状態です。」
「Как они могут сделать это послезавтра? そんな状態で明後日決行できるのか?」
「Они должны это сделать. Они никак не могут повернуть назад после того, что они сделали. 奴らはやらざるを得ない。ここまでやって引き返すなんてできるわけがありません。」
「В котором часу? 時刻は。」
「В 6 вечера, я предлагаю. 18時で私から提案します。」
「Это когда ты будешь дома なるほど帰宅時間というわけか。」
「Да. И это время праздников, когда все начеку. Нет времени лучше настоящего. はい。しかもこれから休日という皆が油断しきった時間。ここを狙わない術はない。」
「Вот тогда мы и переедем. では我々もその時間に動く。」
「Где я должен быть? 私はどこにいれば。」
「Вы будете находиться в районе станции Канадзава. Я сообщу вам, где меня встретить. 金沢駅周辺にいてくれ。合流場所は追って連絡する。」
「Да.  はい。」
電話を切った彼はそれを元の箇所に戻した。
そこから出た椎名は牛乳を手にしてレジに向かう。
「274円です。」
「ディンギで。」
ディンギ音
「Спасибо.」
「Пожалуйста.」
店を出た椎名はうつむき加減で家に向かった。
「俺を鍋島そのものにする催眠をかけてもらった。」
「なんだ…それ…。」
「話すと長くなる。とにかく俺はあいつの手で鍋島能力を手に入れた。」
「待て。鍋島能力ってまさか。」
「そう。ルークが欲しがっていたやつさ。」
「実用化できたのか。」
「多分。実際俺はクイーンにもちゃんフリの三波って奴にも使って、その効果を得た。」111
ーまさか空閑が朝戸同様、鍋島のコピーとなるための実験台になっていたとはな…。
ー紀伊の差し金か…。
ーしかしあの紀伊という男も相当のクソだな。
ー陶の手下だとは聞いているが、上司がクソならその部下もクソと言ったところか。
ー朝戸ならず今度は空閑までも鍋島能力の実験台にするとは…。
ーこうも簡単に仲間を売るものか…日本の連中は…。
ーいやオフラーナ特有の使い捨ての手法か…。
ーしかし結局のところ空閑をしても完璧な実用化には至っていないってわけだ。
ー意のままに相手を操れる能力を空閑が手に入れたなら、その能力を行使された三波と光定が同じ場所で落ち合う、なんてこちらにとって都合が悪いことは起こりえない。
ー仮にそれが偶然だったとしても光定は音信不通だ。光定に何かがあったのは間違いない。
ー確かに光定は朝戸に対して特別な感情を持っている。だがそれは光定を真人間に戻すほどの要因たり得ない。
ー基本あいつはマッドサイエンティスト。
ー鍋島能力の研究自体を捨てて、別の何かに重きを置くようなことはしないはず。
ー一時的な気の迷いか…それとも転んだか…。
後方に尾行の気配を確認しながら、椎名はそのまま進む。
ーそもそもこの鍋島能力、光定公信というコミュ障の人間が研究をすることに意味があった。
ーあいつは人との接触を極度に避ける。人と接点を持たない人間は、そこから情報が漏れる危険性は少ない。
ー天宮や小早川、曽我のような色気を出すような人間がこの能力の研究の主力であることは、後々の面倒ごとを引き起こす。
ーいいタイミングだったよ。あいつらが消えたのは。
ー天宮はゆかりによって消され、曽我は光定と空閑。小早川は陶だ。
ー指示系統が全部違う。
ー訳わからないだろうなあいつら。
ちらりと後ろを見て、またもうつむき加減に歩みを進める。
ーちょろい。特高だか何だか知らんがチョロいぞ。
ーすべてがチョロい。
ーまぁ精々お互い潰し合ってくれ。
ー明後日には面白い展開が待ってるさ。
部屋に戻った彼は牛乳パックを開け、グラスにそれを注いだ。
そしてそれを一気に飲み干す。
続いてノートパソコンを開いてメールのチェックをした。
ー片倉京子からメール…。
「明日には最終原稿と素材送りますんで。」
「はい。ですが明日の朝には届けてくださいよ。朝の7時必着です。」84
パソコンに表示されている時計は7時10分。
いま目にしている京子からのメールは7時ちょうどの受信だった。
ー本当にいままで原稿書いてたのか、あいつ…。
あきれると同時に京子の仕事に対する執着心の凄まじさに驚きを感じた椎名は、それを開き添付されている原稿にさっと目を通した。
これまで3回連続で北陸新幹線の人糞散布事件についての考察をしてきました。この事件の後にノビチョクが散布されたところから考えると、この事件はそれを想定した予行演習、もしくは実験的な意味合いが強いと考えます。
ですが、いまはそんなことはどうでもいい。
ここ数日、立て続けに全国各地でテロのような事件が起こっています。
そのすべてが普通ならトップニュースで扱われるほどの重大事件です。
これは異常事態です。ひょっとすると同時多発テロのようなものがこの国で起こっている可能性があります。
もしもそうだとしたらこの国は大変危険な状態にすでにある。
しかし私たち個人は、そういった危険から身を守る具体的な方法を持っていません。
そこで何が大切なことか。
皆で助け合うことだと思うのです。
身近な家族、余裕があれば身寄りのない隣人。これらをお互いで助け合ってください。
助け合いの精神は余裕から生まれます。
危機において最も大切なのは精神的余裕です。
精神的余裕がなければ正常な判断ができません。正常な判断がなければ危機に遭遇する確率は高まります。
しかし精神論で余裕を持てといっても難しい。
状況は時々刻々と変化します。それは私たちにとって耐えがたいストレスとなります。
そういうときはいったん情報をシャットアウトするのも一つの方法ではないでしょうか。
洪水のように押し寄せる情報。これを整理するだけで私たちの精神は削られます。
削られた精神は疲労をもたらし、正常な判断を鈍らせます。
そんな時は生き物として備わっている動物的勘に頼ることも大事なのではないでしょうか。
押し寄せる情報をいったん遮断し、動物的勘を研ぎ澄まし、危機に当たる。
そして一息ついたときに情報を得る。
こういう危機管理があってもいいのではないかと思うのです。
最近、テロのようなものが起きすぎです。
そしてこのテロの報道に私たち発信側は忙殺され、受け手のみなさんも情報の処理に困っている。
こんな時は一度立ち止まってみましょう。
そして深呼吸して自分が置かれている状況を落ち着いて見てみましょう。
生き物として生まれ備わった勘を研ぎ澄ましてみましょう。
ひょっとするとこの情報の洪水。これがテロ行為そのものなのかもしれません。
落ち着き払ったら、戸惑う人に手を差し伸べましょう。
これが秩序を保つ有効な方法なのではないでしょうか。
ーさすが片倉京子。当たらずとも遠からず。いい線ついている。
「私がこうやってちゃんフリって媒体で過去の事件をテロ目的の実験だって報道することを想定し、本来の目的から一定の人間の目を逸らそうとしている。」84
ーだがそれも一面的なもの。
パソコンを畳んだ椎名はそれを鞄にしまい、着替えだした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おはようございまーす。」
編成責任が詰めている部屋の扉を開いて入ってきたのは片倉京子だった。
「おう京子。」
「どうでした?昨日の特集の反応。」
「まぁこんなもんや。」
画面に表示されている再生回数は7千程度だった。
「結構渋い数字ですね。」
「しゃあないやろ。タイムリーじゃないんやし。」
「ですね。」
「でも大事なんだよこういう番組は。」
「というと?」
「タイムリーってのは表層的なんだ。現象としてしか捉えられない。考える力を奪う。ま、視聴者をあほにする装置ってわけだ。」
京子は彼の物言いに引っかかった。
「あほ?」
「おう。あほ。ばか。だら。」
「え?なんか当たりきついですよ。」
「なによ京子、おまえにいってるわけじゃないだろ。市井のあほばかに言ってんだ。」
この編成責任、こんな乱暴な言葉使いをする人間じゃなかったはずだ。
忙殺の日々によって荒んだ心になってしまったのか。
まさかちゃんフリ全体がそうなってしまっているのはないか。妙な不安感が京子を覆った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【Twitter】
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ご意見・ご感想・ご質問等は公式サイトもしくはTwitterからお気軽にお寄せください。
皆さんのご意見が本当に励みになります。よろしくおねがいします。
すべてのご意見に目を通させていただきます。
場合によってはお便り回を設けてそれにお答えさせていただきます。
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126 第115話

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「しまった…。」
ジャージ姿のまま椎名は外に出た。
部屋を出て徒歩三分。横断歩道の先にコンビニエンスストアがあった。
信号が青になり歩き出すタイミングで、コンビニから客が出てきた。
その客と横断歩道上ですれ違いざまに椎名は口を開いた。
「Мы готовы.」
「Спросите в туалете.便所で聞く」
コンビニに入った椎名はそのまま店のトイレに入った。
そしてその備品棚に手を伸ばす。
そこには一台の携帯電話が置かれていた。
「Офрана начинает терять свою популярность. オフラーナは仲間割れが始まっています。」
「В частности. 具体的に。」 
「Главнокомандующий настроен скептически.Никому нельзя доверять. 司令塔が疑心暗鬼になっている。誰も信用できない状態です。」
「Как они могут сделать это послезавтра? そんな状態で明後日決行できるのか?」
「Они должны это сделать. Они никак не могут повернуть назад после того, что они сделали. 奴らはやらざるを得ない。ここまでやって引き返すなんてできるわけがありません。」
「В котором часу? 時刻は。」
「В 6 вечера, я предлагаю. 18時で私から提案します。」
「Это когда ты будешь дома なるほど帰宅時間というわけか。」
「Да. И это время праздников, когда все начеку. Нет времени лучше настоящего. はい。しかもこれから休日という皆が油断しきった時間。ここを狙わない術はない。」
「Вот тогда мы и переедем. では我々もその時間に動く。」
「Где я должен быть? 私はどこにいれば。」
「Вы будете находиться в районе станции Канадзава. Я сообщу вам, где меня встретить. 金沢駅周辺にいてくれ。合流場所は追って連絡する。」
「Да.  はい。」
電話を切った彼はそれを元の箇所に戻した。
そこから出た椎名は牛乳を手にしてレジに向かう。
「274円です。」
「ディンギで。」
ディンギ音
「Спасибо.」
「Пожалуйста.」
店を出た椎名はうつむき加減で家に向かった。
「俺を鍋島そのものにする催眠をかけてもらった。」
「なんだ…それ…。」
「話すと長くなる。とにかく俺はあいつの手で鍋島能力を手に入れた。」
「待て。鍋島能力ってまさか。」
「そう。ルークが欲しがっていたやつさ。」
「実用化できたのか。」
「多分。実際俺はクイーンにもちゃんフリの三波って奴にも使って、その効果を得た。」111
ーまさか空閑が朝戸同様、鍋島のコピーとなるための実験台になっていたとはな…。
ー紀伊の差し金か…。
ーしかしあの紀伊という男も相当のクソだな。
ー陶の手下だとは聞いているが、上司がクソならその部下もクソと言ったところか。
ー朝戸ならず今度は空閑までも鍋島能力の実験台にするとは…。
ーこうも簡単に仲間を売るものか…日本の連中は…。
ーいやオフラーナ特有の使い捨ての手法か…。
ーしかし結局のところ空閑をしても完璧な実用化には至っていないってわけだ。
ー意のままに相手を操れる能力を空閑が手に入れたなら、その能力を行使された三波と光定が同じ場所で落ち合う、なんてこちらにとって都合が悪いことは起こりえない。
ー仮にそれが偶然だったとしても光定は音信不通だ。光定に何かがあったのは間違いない。
ー確かに光定は朝戸に対して特別な感情を持っている。だがそれは光定を真人間に戻すほどの要因たり得ない。
ー基本あいつはマッドサイエンティスト。
ー鍋島能力の研究自体を捨てて、別の何かに重きを置くようなことはしないはず。
ー一時的な気の迷いか…それとも転んだか…。
後方に尾行の気配を確認しながら、椎名はそのまま進む。
ーそもそもこの鍋島能力、光定公信というコミュ障の人間が研究をすることに意味があった。
ーあいつは人との接触を極度に避ける。人と接点を持たない人間は、そこから情報が漏れる危険性は少ない。
ー天宮や小早川、曽我のような色気を出すような人間がこの能力の研究の主力であることは、後々の面倒ごとを引き起こす。
ーいいタイミングだったよ。あいつらが消えたのは。
ー天宮はゆかりによって消され、曽我は光定と空閑。小早川は陶だ。
ー指示系統が全部違う。
ー訳わからないだろうなあいつら。
ちらりと後ろを見て、またもうつむき加減に歩みを進める。
ーちょろい。特高だか何だか知らんがチョロいぞ。
ーすべてがチョロい。
ーまぁ精々お互い潰し合ってくれ。
ー明後日には面白い展開が待ってるさ。
部屋に戻った彼は牛乳パックを開け、グラスにそれを注いだ。
そしてそれを一気に飲み干す。
続いてノートパソコンを開いてメールのチェックをした。
ー片倉京子からメール…。
「明日には最終原稿と素材送りますんで。」
「はい。ですが明日の朝には届けてくださいよ。朝の7時必着です。」84
パソコンに表示されている時計は7時10分。
いま目にしている京子からのメールは7時ちょうどの受信だった。
ー本当にいままで原稿書いてたのか、あいつ…。
あきれると同時に京子の仕事に対する執着心の凄まじさに驚きを感じた椎名は、それを開き添付されている原稿にさっと目を通した。
これまで3回連続で北陸新幹線の人糞散布事件についての考察をしてきました。この事件の後にノビチョクが散布されたところから考えると、この事件はそれを想定した予行演習、もしくは実験的な意味合いが強いと考えます。
ですが、いまはそんなことはどうでもいい。
ここ数日、立て続けに全国各地でテロのような事件が起こっています。
そのすべてが普通ならトップニュースで扱われるほどの重大事件です。
これは異常事態です。ひょっとすると同時多発テロのようなものがこの国で起こっている可能性があります。
もしもそうだとしたらこの国は大変危険な状態にすでにある。
しかし私たち個人は、そういった危険から身を守る具体的な方法を持っていません。
そこで何が大切なことか。
皆で助け合うことだと思うのです。
身近な家族、余裕があれば身寄りのない隣人。これらをお互いで助け合ってください。
助け合いの精神は余裕から生まれます。
危機において最も大切なのは精神的余裕です。
精神的余裕がなければ正常な判断ができません。正常な判断がなければ危機に遭遇する確率は高まります。
しかし精神論で余裕を持てといっても難しい。
状況は時々刻々と変化します。それは私たちにとって耐えがたいストレスとなります。
そういうときはいったん情報をシャットアウトするのも一つの方法ではないでしょうか。
洪水のように押し寄せる情報。これを整理するだけで私たちの精神は削られます。
削られた精神は疲労をもたらし、正常な判断を鈍らせます。
そんな時は生き物として備わっている動物的勘に頼ることも大事なのではないでしょうか。
押し寄せる情報をいったん遮断し、動物的勘を研ぎ澄まし、危機に当たる。
そして一息ついたときに情報を得る。
こういう危機管理があってもいいのではないかと思うのです。
最近、テロのようなものが起きすぎです。
そしてこのテロの報道に私たち発信側は忙殺され、受け手のみなさんも情報の処理に困っている。
こんな時は一度立ち止まってみましょう。
そして深呼吸して自分が置かれている状況を落ち着いて見てみましょう。
生き物として生まれ備わった勘を研ぎ澄ましてみましょう。
ひょっとするとこの情報の洪水。これがテロ行為そのものなのかもしれません。
落ち着き払ったら、戸惑う人に手を差し伸べましょう。
これが秩序を保つ有効な方法なのではないでしょうか。
ーさすが片倉京子。当たらずとも遠からず。いい線ついている。
「私がこうやってちゃんフリって媒体で過去の事件をテロ目的の実験だって報道することを想定し、本来の目的から一定の人間の目を逸らそうとしている。」84
ーだがそれも一面的なもの。
パソコンを畳んだ椎名はそれを鞄にしまい、着替えだした。
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「おはようございまーす。」
編成責任が詰めている部屋の扉を開いて入ってきたのは片倉京子だった。
「おう京子。」
「どうでした?昨日の特集の反応。」
「まぁこんなもんや。」
画面に表示されている再生回数は7千程度だった。
「結構渋い数字ですね。」
「しゃあないやろ。タイムリーじゃないんやし。」
「ですね。」
「でも大事なんだよこういう番組は。」
「というと?」
「タイムリーってのは表層的なんだ。現象としてしか捉えられない。考える力を奪う。ま、視聴者をあほにする装置ってわけだ。」
京子は彼の物言いに引っかかった。
「あほ?」
「おう。あほ。ばか。だら。」
「え?なんか当たりきついですよ。」
「なによ京子、おまえにいってるわけじゃないだろ。市井のあほばかに言ってんだ。」
この編成責任、こんな乱暴な言葉使いをする人間じゃなかったはずだ。
忙殺の日々によって荒んだ心になってしまったのか。
まさかちゃんフリ全体がそうなってしまっているのはないか。妙な不安感が京子を覆った。
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