112.1 第100話【前編】

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自宅に帰ってきた三波はベッドに倒れ込んだ。
「痛ぇ…。頭痛ぇぞ…。なんだこれ。」
「今日手に入れた情報はすべてデタラメだ。小早川は気が狂っていた。お前は疲れている。このままおとなしく家に帰るんだ。そこでじっとしていろ。」94
「何しやがったあいつ…。さっきまではそこまでじゃなかったのに、ここに来て何だこの頭痛…。おとなしくしてろって、このまま寝てろってのかよ。」
身を起こそうとすると自身の後頭部に鈍い痛みが走る。
「あ、痛っ!」
彼は突っ伏した。
「やべ…これあれかな…。脳梗塞とかかな…。だったら洒落になんねぇぞ…。」
三波は携帯を手にした。
「すいません…。頭が割れそうなんで救急車、お願いできませんか…。」
電話を切った三波は薄っすらと目を開く。
自分の部屋の天井がぼんやりと見える。
白いそれにカーテンの隙間からわずかに差し込む日差しが影をつける。
瞬間、彼の意識はとんだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「なんでこのタイミングであなたがそんなことを。」
「ちゃんフリの中の協力者が、自分の身内から被害者を出すことは許さんって鼻息荒くしてるんだ。」
「その手の管理はあなた自身で完結してください。大川さん。」
「自分の手に負えない状況だからビショップ。あんたにこうやって報告してるんだ。今までの動画をすべて元の状態のものに差し替えるって言い出している。」
携帯を持つ方の逆の手で、空閑は自分の頭を抱えた。
「…困る。すっごい困る。」
「こっちだって困ってる。そっちが三波に勝手に手を出すからこんなことになった。こっちは死にものぐるいでちゃんフリの中をグリップしていたんだ。それを引っ掻き回したのはそっちのほうだ。オトシマエはビショップ、そっちでつけてもらわないと困る。」
大川の言い分は正しい。
だが何が正しいか、何が誤りか。そんなことを今は議論している場合ではない。
「三波はいまどこにいる。」
「家。」
「家?」
「ええ自宅のはずです。そこで休んでます。」
「なんだ…ベッドに縛り付けてたりするのか。」
「んなことするわけ無いでしょ。自分の意志で自宅に帰ったんです。」
「自分の意志で帰る?」
「はい。」
「ただ家に帰るだけの人間が突然消息不明になるか?」
「何もかもが鬱陶しくなって急に外部との連絡を断つ奴だっています。」
「なんだそりゃ。随分と都合のいい言い訳だな。お前にとって。」
「そりゃそうですよ。俺にとって都合のいい状態にしたんですから。」
「は?」
「ま、そういうことです。その中の人間にはこうでも言って鎮めておいてくださいよ。」
「そう言ってもそいつは三波の家にカチコミに行くぞ。」
空閑はため息をつく。
「そうなったらそうなったで、俺の力がどれだけのモンかわかるから、逆に良いんじゃないんですか。」
「え?」
「カチコミかければいいよ。でもきっとあいつは出ない。」
「なんでそう言い切れるんだ。」
「くどくど説明する暇はありません。いま俺が言ったように、その中の人間に言ってみてください。」
「…わかった。」
電話を切る音
「三波の持っているネタよりも三波自身の安否のほうが今は重要になっている。ネタ元の安否確認をする前にそのネタをばら撒くようなことするかな…。裏取りとかもしないといけないだろうし…。」
こういった瞬間、空閑は動きを止めた。
「裏取り?」
「待てよ…三波が小早川と接触したこと。このこと自体が何かの裏取りだとしたら…。」
即座に空閑は電話を掛ける。
「やったか。」
「やることはやった。」
「どうやった。」
「三波は自宅に引きこもっている。」
「引きこもる?」
「あぁ引きこもるように仕向けた。」
「なんだそれは…家に帰るだけだったら外といくらでも連絡取れるだろうが。」
「心配ない。それはできないように暗示をかけている。」
「暗示?」
「あぁ。」
「暗示…ってなんだ。」
「暗示だ。」
「まさかクイーンに。」
「とにかく三波については一応心配のない状況は作った。おれが電話をお前にかけたのは別の用向きがあってな。」
「なんだ。」
「ルーク。お前んところにスパイいないか。」
「スパイ?」
「あぁ。」
「ふと思ったんだ。今回の三波の背乗りの段取りの良さ、動きの良さ、プロの指南役がいると見て間違いないってお前言ってたろ。」
「ああ。」
「プロなら今回のミッションの最大の目的は三波の無事の帰還じゃない。三波が得たネタそのものと、それの裏取りだ。」
「そうだ。」
「しかしそれはあくまでも三波が主体だったらと考えたときに成り立つシナリオだ。」
「というと?」
「仮に三波がそのプロによって使用される立場だったらとしたらどうだ。」
「あ…。」
「三波は自分の取材のために小早川と接触した体になっている。しかし、それは三波の指南役のプロがすでに持つネタの裏取りだったとしたら。」
「ちゃんフリによる報道という三波の目的はヤツ自身の連絡途絶によって未達成。が、指南役の目的は三波の取材によってすでに達成している可能性がある。か。」
「ルーク。三波はお前ら警察の網を見事かいくぐって動いた。お前のところにその指南役がいるとすれば、今回の件しっくり来るような気がするんだが。」
紀伊は自身の記憶を総動員して心当たりのあるものを洗う。
ここ数日自分と接点を持った人物を思い出し、その人物の一挙手一投足を分析する。
疑わしい人物がいた。
百目鬼だ。
急に自分に接近してきたと思えば捜査一課に鍋島能力の存在を匂わせてみて、その出方を見てみろと言う。そして片倉からの離反も促す。
この一連のテロまがいな事件の背後に鍋島能力の実験結果がある。その因果関係を知っているのはキング、ビショップ、クイーン、ナイトそしてルークと呼ばれる自分の5名しかいない。
「ルーク?」
「あ…。」
「思い当たるのか。」
「…この商売してりゃ、心の底から信頼できる人間なんていない。周りを疑えばきりがない。」
「ということは。」
「心当たりがないことはない。」
「どうすんだ。」
「なんとかするさ。」
「できるのか。」
「やる。やらないと後がない。」

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