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174.1 第163話【前編】

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「失礼します。」
スライドドア音
「あぁ京子か。」
身支度をする三波の姿があった。
「もういいんですか?」
「まぁ、正直良いか悪いかわかんない。主治医がいなくなっちまったからな。」
京子は返す言葉を失った。
「どこまで知ってる?」
三波の質問の真意を測りかねる京子はただ首を振って応えるだけだった。
「で俺から根掘り葉掘り聞き出してやろうってことでここに?」
「そんなところです。」
彼はため息をつく。
「残念だけど、今回ばかりはお前に話せることはない。」
「どうしてですか。」
「俺らのような民間人がしゃしゃり出るのは控えた方が良い。」
「自粛ですか。」
「まぁそんなところだ。」
「三波さんもそんなことを…。」
「俺も?」
「…はい。」
「なんだその言い方。何と一緒にしてる?」
京子はネットカフェ爆破事件を報じるメディアが、地元石川のメディアに留まっていることを三波に伝えた。
「私が調べたところ、警察からの要請で報道協定を結んだとかじゃないんです。各社が自主的に報道していない。」
「報道各社が自主規制か…。」
「はい。」
「どうせそんなことしてもSNSですぐに広まる。放っておけよ。既存メディアはやっぱりクソって事で、ウチみたいなネットメディアの信用性が高まるだけ。商売的にはいいんじゃん。」
「でもあり得ないと思います。」
身支度を終えた三波はベッドに腰をかけた。
「あり得ない?」
「だってそういう事件をお茶の間に伝えるのが報道の仕事じゃないですか。」
「あの…京子…事件報道だけじゃないだろ。報道ってのは。何のために政治部とか経済部とか国際部とかあると思ってんだ。」
京子は口をつぐんだ。
「大きな組織には大きな組織なりのしきたりがあるの。それに俺らと違うんだよ、発信力も社会的影響も。」
「…。」
京子は面白く無さそうな顔つきだ。
それを横目に三波はやれやれといった風にペットボトルに口を付けた。
片倉京子は明日予定される金沢駅テロのネタは掴んでいない。これは三波が光定公信から直に聞き出した特大のネタだ。
このネタは公安特課である相馬と自分の中だけに止めた話。京子に知られることは絶対許されない。ましてやちゃんフリで報道するのは論外である。
テロの目的のひとつに大衆の不安につけ込んだ不当な要求がある。
大衆が不安になればなるほどテロの実行側にとっては要求を呑ませやすくなる。現在、全国各地でテロのような事件が発生している。ここに追い打ちをかけるように今回のネットカフェ爆破事件報道がなされたとしよう。その結果は言うまでも無い。大衆の不安を煽ることとなろう。
不安は不安を呼び込む。また同じようなことが起きる。今度はもっと重大な被害をもたらすと大衆が思い込んだら最後、恐慌状態となり制御が効かなくなる。これは治安当局が最も恐れるものだ。
そのため報道協定を結ぶというのは妥当な措置であると三波は思っていた。しかし京子調べによると、それはなされていないとのことだった。
ー報道協定を結んだとなると、どういった事件報道に協定を結んだのか、その対象くらいは身内にバレる。今次テロ事件に関してはそれすらも身内に漏らすことは許されない。だから自主規制の体をとってるだけだよ。
三波自身が報道協定を結んでいる。そんなこと目の前の京子には口が裂けても言えるはずがない。
「きっとなにか理由があるんだよ。」
「わたしはその理由を知りたいんです。」
「なんで。ただのビジネスチャンスでしょ。俺らネットメディアにとってさ。再生数稼ぐチャンスだよ。」
「もう再生数なんかどうでもいい。」
「え?どした?」
「私の特集、ボツになったんで。」
「ええっ?」
デスクの黒田に理由もなく特集をボツにされたことを京子は彼に説明した。
「このサブリミナルのことに関しては俺の方から黒田にチクっとくから心配ない。あんたは小早川を洗ってくれ。」79
ーなるほど…京子の特集にもアレ仕込まれてたか…。
「で、することなくなってキー局の様子がおかしいからそれ探ろうと?」
「はい。」
「やめとけ。」
「嫌です。」
「いまから何をどう調べるって言うんだよ。」
「それが分からないから三波さんのところに来たんです。」
「だから俺から君にアドバイスできることなんてないって言ってるだろ。」
「本当のところ何があったんですか。三波さん。」
「…。」
「デスクも誰も三波さんのこと教えてくれないんです。」
「…でも君はここに居るじゃないの。」
「それだけは教えてくれました。で、そろそろ退院する頃だろうから迎えに行ったらどうだって。」
「…。」
「あーあ、なんか立て続けに悪いことばっかり。特集は急にボツになるし、三波さんに何があったか誰も教えてくれないし、安井さんは急に会社で見なくなるし、デスクにお前なんか辞めちまえって言われるし、せっかく発掘した外注先も今後使うなって言われるし、何これ。」
「ひでぇな、確かに。」
「なにかひとつでも何があったのかくらいわかんないと、納得いきませんよ。」
三波は頷いた。
「三波さんの身に何があったんですか。」
「頭痛だよ。それを当直の先生が診てくれた。そしたらその先生が殺された。」
「光定公信先生ですね。」
「ああ。」
「三波さんを診たときの先生に何か変わったところは。」
「ないよ。ってか初めて会ってなんか変だなって思わせる人ってよっぽど変な人だぜ。」
「まぁ。」
「殺される直前の人と会って話した。俺の周りであったことはこれだけさ。デスクのことだ。そのことに俺がショック受けてるだろうからって配慮して、俺に関する情報を遮断したんだろ。」
京子はつまらなさそうな顔をした。
その彼女の反応をよそに三波は窓の外を見る。
「小降りになってきたかな…。」
「これからどうされるんですか。」
「今日はこのまま家に帰る。おととい東京出張から帰ってきて、昨日この病院に救急搬送。で、今日退院。少しは家でゆっくりさせてもらわないと死んでしまうわ。」
「私送っていきますよ。」
「え?いいの?」
「もちろんじゃないですか。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
雨が止めどなく降り続ける状況では周囲の様子も分かりにくい。しかし10分ほど前からそれは小康状態となり、視界も良くなっていた。
ここに来るまでに至るところで冠水していた。明らかに床下浸水しているような地域もあった。
京子の運転する車は別院通りの有料駐車場に止まった。
「大丈夫かよ。結構、店閉まってるぞ。」
「こんな時に電話してやってますかって聞くのも野暮だと思いません?」
「まぁ。」
「とりあえず行ってみて考えましょうよ。」
車から降りた二人は別院通りを歩く。この通りは幸い冠水状態というわけではなかった。しかしそこかしこに土嚢が積まれていた。
「雨は弱まるみたいですけど、明日ヤバめな予報出てますね。」
スマホを見ながら京子はこう言った。
「ヤバめって?」
「明日の午後から大雨の予報です。」
三波も自身の携帯を見た。確かに明日の16時くらいから大雨予報だ。
金沢駅でのテロ予定は明日。さっきまで降っていたような雨が明日も降るとなると、テロは決行されるのだろうか。
三波は淡い期待を抱いた。
「あ、電気ついてる。」
こう言って彼女は足を速めた。
三波は携帯から再び視線を前方に移す。そこにはボストークと書かれた看板があった。
ドアを開ける音
「こんばんわー。」
しばらくして奥の方からマスターが顔を出した。
「外にcloseってあったんですが、今日はお休みですか。」
「あぁ臨時休業にしました。こんな天気ですから。」
「雨、弱まりましたよ。」
「え?」
マスターは外に出た。先ほどまで外を白ませていたものが梅雨時に霧のように降る雨に変わっていた。
「収まったんだ…。」
「ええ。一時はどうなることかと思いました。」
「でも、バイトみんな帰してしまったから今日は閉めます。ごめんなさい。」
こう言って改めてたった今来店した二人を見て、マスターは誰と話しているか気がついた。
ー仁川少佐と接触していた女…。
「ワンチャン行けるかなって思って来たんですが、やっぱり駄目でしたか。」
また来ますと言って側を後にしようとしたとき、マスターに呼び止められた。
「ワンオペで良ければどうぞ。」
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スライドドア音
「あぁ京子か。」
身支度をする三波の姿があった。
「もういいんですか?」
「まぁ、正直良いか悪いかわかんない。主治医がいなくなっちまったからな。」
京子は返す言葉を失った。
「どこまで知ってる?」
三波の質問の真意を測りかねる京子はただ首を振って応えるだけだった。
「で俺から根掘り葉掘り聞き出してやろうってことでここに?」
「そんなところです。」
彼はため息をつく。
「残念だけど、今回ばかりはお前に話せることはない。」
「どうしてですか。」
「俺らのような民間人がしゃしゃり出るのは控えた方が良い。」
「自粛ですか。」
「まぁそんなところだ。」
「三波さんもそんなことを…。」
「俺も?」
「…はい。」
「なんだその言い方。何と一緒にしてる?」
京子はネットカフェ爆破事件を報じるメディアが、地元石川のメディアに留まっていることを三波に伝えた。
「私が調べたところ、警察からの要請で報道協定を結んだとかじゃないんです。各社が自主的に報道していない。」
「報道各社が自主規制か…。」
「はい。」
「どうせそんなことしてもSNSですぐに広まる。放っておけよ。既存メディアはやっぱりクソって事で、ウチみたいなネットメディアの信用性が高まるだけ。商売的にはいいんじゃん。」
「でもあり得ないと思います。」
身支度を終えた三波はベッドに腰をかけた。
「あり得ない?」
「だってそういう事件をお茶の間に伝えるのが報道の仕事じゃないですか。」
「あの…京子…事件報道だけじゃないだろ。報道ってのは。何のために政治部とか経済部とか国際部とかあると思ってんだ。」
京子は口をつぐんだ。
「大きな組織には大きな組織なりのしきたりがあるの。それに俺らと違うんだよ、発信力も社会的影響も。」
「…。」
京子は面白く無さそうな顔つきだ。
それを横目に三波はやれやれといった風にペットボトルに口を付けた。
片倉京子は明日予定される金沢駅テロのネタは掴んでいない。これは三波が光定公信から直に聞き出した特大のネタだ。
このネタは公安特課である相馬と自分の中だけに止めた話。京子に知られることは絶対許されない。ましてやちゃんフリで報道するのは論外である。
テロの目的のひとつに大衆の不安につけ込んだ不当な要求がある。
大衆が不安になればなるほどテロの実行側にとっては要求を呑ませやすくなる。現在、全国各地でテロのような事件が発生している。ここに追い打ちをかけるように今回のネットカフェ爆破事件報道がなされたとしよう。その結果は言うまでも無い。大衆の不安を煽ることとなろう。
不安は不安を呼び込む。また同じようなことが起きる。今度はもっと重大な被害をもたらすと大衆が思い込んだら最後、恐慌状態となり制御が効かなくなる。これは治安当局が最も恐れるものだ。
そのため報道協定を結ぶというのは妥当な措置であると三波は思っていた。しかし京子調べによると、それはなされていないとのことだった。
ー報道協定を結んだとなると、どういった事件報道に協定を結んだのか、その対象くらいは身内にバレる。今次テロ事件に関してはそれすらも身内に漏らすことは許されない。だから自主規制の体をとってるだけだよ。
三波自身が報道協定を結んでいる。そんなこと目の前の京子には口が裂けても言えるはずがない。
「きっとなにか理由があるんだよ。」
「わたしはその理由を知りたいんです。」
「なんで。ただのビジネスチャンスでしょ。俺らネットメディアにとってさ。再生数稼ぐチャンスだよ。」
「もう再生数なんかどうでもいい。」
「え?どした?」
「私の特集、ボツになったんで。」
「ええっ?」
デスクの黒田に理由もなく特集をボツにされたことを京子は彼に説明した。
「このサブリミナルのことに関しては俺の方から黒田にチクっとくから心配ない。あんたは小早川を洗ってくれ。」79
ーなるほど…京子の特集にもアレ仕込まれてたか…。
「で、することなくなってキー局の様子がおかしいからそれ探ろうと?」
「はい。」
「やめとけ。」
「嫌です。」
「いまから何をどう調べるって言うんだよ。」
「それが分からないから三波さんのところに来たんです。」
「だから俺から君にアドバイスできることなんてないって言ってるだろ。」
「本当のところ何があったんですか。三波さん。」
「…。」
「デスクも誰も三波さんのこと教えてくれないんです。」
「…でも君はここに居るじゃないの。」
「それだけは教えてくれました。で、そろそろ退院する頃だろうから迎えに行ったらどうだって。」
「…。」
「あーあ、なんか立て続けに悪いことばっかり。特集は急にボツになるし、三波さんに何があったか誰も教えてくれないし、安井さんは急に会社で見なくなるし、デスクにお前なんか辞めちまえって言われるし、せっかく発掘した外注先も今後使うなって言われるし、何これ。」
「ひでぇな、確かに。」
「なにかひとつでも何があったのかくらいわかんないと、納得いきませんよ。」
三波は頷いた。
「三波さんの身に何があったんですか。」
「頭痛だよ。それを当直の先生が診てくれた。そしたらその先生が殺された。」
「光定公信先生ですね。」
「ああ。」
「三波さんを診たときの先生に何か変わったところは。」
「ないよ。ってか初めて会ってなんか変だなって思わせる人ってよっぽど変な人だぜ。」
「まぁ。」
「殺される直前の人と会って話した。俺の周りであったことはこれだけさ。デスクのことだ。そのことに俺がショック受けてるだろうからって配慮して、俺に関する情報を遮断したんだろ。」
京子はつまらなさそうな顔をした。
その彼女の反応をよそに三波は窓の外を見る。
「小降りになってきたかな…。」
「これからどうされるんですか。」
「今日はこのまま家に帰る。おととい東京出張から帰ってきて、昨日この病院に救急搬送。で、今日退院。少しは家でゆっくりさせてもらわないと死んでしまうわ。」
「私送っていきますよ。」
「え?いいの?」
「もちろんじゃないですか。」
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雨が止めどなく降り続ける状況では周囲の様子も分かりにくい。しかし10分ほど前からそれは小康状態となり、視界も良くなっていた。
ここに来るまでに至るところで冠水していた。明らかに床下浸水しているような地域もあった。
京子の運転する車は別院通りの有料駐車場に止まった。
「大丈夫かよ。結構、店閉まってるぞ。」
「こんな時に電話してやってますかって聞くのも野暮だと思いません?」
「まぁ。」
「とりあえず行ってみて考えましょうよ。」
車から降りた二人は別院通りを歩く。この通りは幸い冠水状態というわけではなかった。しかしそこかしこに土嚢が積まれていた。
「雨は弱まるみたいですけど、明日ヤバめな予報出てますね。」
スマホを見ながら京子はこう言った。
「ヤバめって?」
「明日の午後から大雨の予報です。」
三波も自身の携帯を見た。確かに明日の16時くらいから大雨予報だ。
金沢駅でのテロ予定は明日。さっきまで降っていたような雨が明日も降るとなると、テロは決行されるのだろうか。
三波は淡い期待を抱いた。
「あ、電気ついてる。」
こう言って彼女は足を速めた。
三波は携帯から再び視線を前方に移す。そこにはボストークと書かれた看板があった。
ドアを開ける音
「こんばんわー。」
しばらくして奥の方からマスターが顔を出した。
「外にcloseってあったんですが、今日はお休みですか。」
「あぁ臨時休業にしました。こんな天気ですから。」
「雨、弱まりましたよ。」
「え?」
マスターは外に出た。先ほどまで外を白ませていたものが梅雨時に霧のように降る雨に変わっていた。
「収まったんだ…。」
「ええ。一時はどうなることかと思いました。」
「でも、バイトみんな帰してしまったから今日は閉めます。ごめんなさい。」
こう言って改めてたった今来店した二人を見て、マスターは誰と話しているか気がついた。
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