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耳の野外学習#1|「たたく」Tataku/Hit|Yasuhiro Morinaga

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「たたく」「ふく」「はじく」とは、楽器またはモノを鳴らすための行為である一方、働くこと、生活すること、遊ぶための、最も原始的な人間本来の生きていくための営み=技術だといえるはずだ。今回のDJミックスは、そんなことを考えながら、ここ数年アジアを中心にレコーディングしてきた民族の音楽や環境音をセレクト(アジアの音ではないものもいくつか含まれているが)し、ポストプロダクションでミキシングや電子的な加工を施しながら、リニアな音の時間を創造した。
人類学者たちは、調査地で現地語を学び、長期間地域に密着し、そこの情報をくまなく記述・記録した上で、ラボで検証・実験しながら論文や民族誌としてまとめあげていく。僕の場合は、現地の言葉もわからないし地域に密着しながら文字で記述をしていくような形も採用していない。むしろ楽器や音を軸に、その文脈や周縁を追い続けながらレコーディングしているに過ぎない。自身の目と耳を頼りに作品のゴールをゆるやかに想像しながら記録をし、素材を持ち帰ってスタジオで実験・検証しながら作品を制作していく過程は、どことなく人類学者の研究手法と似ている部分があることを以前から意識していた。
コクヨ野外学習センターがどれだけ実践者としての自分を勇気づけてくれただろう。新型コロナウイルスの感染症が収束した後もきっと、僕自身はフィールドでの活動を継続しながら、音に対する実践を技術の視点から考えていくような作品を創作していくはずだ。(2021.2.7 森永泰弘)

1:Ma’Lambuk at Rambu Solo (Funeral)Ceremony (by Toraja group)
Location: Toraja, South Sulawesi Island, Indonesia
Recorded: 28th July 2017

インドネシアはスラウェシ島のトラジャ族の葬式で奏でられる音楽。Ma’Lambukは、女性たちが竪杵で臼の縁や内部をリズミカルに叩き、参列者を葬儀に迎い入れるための音楽だ。葬儀中にうたわれる詠唱、死を嘆く哭歌、数十匹の水牛や豚の供儀、トパレンゲと呼ばれる葬儀の司会進行役の朗読が同時多発的に行われるため、わけがわからないくらい混沌とした状態のなかでおよそ1週間レコーディングを行った。「死するため(葬式をするため)に生きる」と言われているトラジャ族の渾身の儀式だ。

2: Buffalo Sacrifice (by Bahnar Hrong group)
Location: Đắk Đoa, Gia Lai, Central Highland of Vietnam
Recorded: 07th September, 2017

この曲はバナ・フロン族によるもので、水牛を供儀する儀式で演奏される音楽。ベトナムでは、少数民族たちが民族・集落・地域別に様々なゴング音楽を儀式や祝祭で演奏する。バナ族はそのなかでもゴングの演奏が上手でバリエーションも豊富な民族だ。2015年頃より東南アジアを中心に旅をして民族たちのゴング文化を集中的に記録してきたが、バナ族のゴング音楽は大勢で演奏するのがほとんどで、レコーディングするのは非常に難しかったのを憶えている。

3: Sole Oha Ritual (by Lamaholot group)
Location: Adonara island of Nusa Tenggara Timur, Indonesia
Recorded: 08th October 2018

小スンダ列島を構成するインドネシアの東ヌサ・トゥンガラ州アドナラ島に居住するラマホロ族の祝祭音楽。数十人が一列となって足首に巻いた鈴(グリン・グリン)を踏み鳴らし、コブ付きゴングと太鼓を叩きながら輪になっていく。輪の中では、男性数人がコール&レスポンスをしながら酔拳のようにフラフラと踊りながら大きな刀を振りまわすので、輪に入ってレコーディングしている最中は、いつ首がとんでもおかしくない状況だった。

4: Qilin Dance (by Naxi group)
Location: Lijiang, Yunnan province of China
Recorded: 31ST July 2014

中国神話に登場する架空の動物、麒麟(の舞)-日本では麒麟獅子舞-のための祭礼音楽。約半年ほど滞在した雲南省の麗江で、村人たちが10年振りに「チーリンの舞」を子供達に向けて行うということで、図々しくもレコーディングさせてもらった。必ずしも演奏が素晴らしいというわけではなかったが、長年中断していたこの地の伝統風習を復活させるという絶好のタイミングだったので、自分としては貴重な録音物だと言える。以後、毎年この地で「チーリンの舞」をやっているそうだ。

5: Panapang Mbaru (by Sumba group)
Location: Sumba island of Indonesia
Recorded: 17th of September 2018

インドネシアのスンバ島で記録したゴング音楽。この地のゴング文化は東南アジアのなかでも異色のものだった。近隣のバリ島やロンボック島のゴングやガムラン音楽とは異なり、スンバ島のゴング音楽は、電子音楽やサン・ラーを彷彿させるかのようなオリジナリティ溢れるコスミックな音楽がたくさんあった。ゴングの配置の仕方も独特で、何故かヴェトナム中部のチュル族のそれと似ていた。縄でゴングを縛りあげてドラムセットのように配置した状態から、撥を使って一気に乱れ打ちしていくサウンドは録音者である僕自身の身体も、知らないうちに踊ってしまうくらいノリの良いものだった。なかでも、ここに収録した音源は90年代初頭のミニマルテクノを彷彿させるようでおもしろい。ロケーションが駐車場のような場所であったことから、叩いた音色が壁に跳ね返ってくる反響をどれだけ抑えて録音できるかが腕の見せ所でもあった。現場の空気感を出しつつも音として聴きやすい質感を目指し、一切のポストプロダクション加工を行わないで済むよう、マイクのポジショニングには苦労した。

DJミックス by 森永泰弘
Produced by 若林恵
Commissioned by コクヨ野外学習センター

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55 つのエピソード

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「たたく」「ふく」「はじく」とは、楽器またはモノを鳴らすための行為である一方、働くこと、生活すること、遊ぶための、最も原始的な人間本来の生きていくための営み=技術だといえるはずだ。今回のDJミックスは、そんなことを考えながら、ここ数年アジアを中心にレコーディングしてきた民族の音楽や環境音をセレクト(アジアの音ではないものもいくつか含まれているが)し、ポストプロダクションでミキシングや電子的な加工を施しながら、リニアな音の時間を創造した。
人類学者たちは、調査地で現地語を学び、長期間地域に密着し、そこの情報をくまなく記述・記録した上で、ラボで検証・実験しながら論文や民族誌としてまとめあげていく。僕の場合は、現地の言葉もわからないし地域に密着しながら文字で記述をしていくような形も採用していない。むしろ楽器や音を軸に、その文脈や周縁を追い続けながらレコーディングしているに過ぎない。自身の目と耳を頼りに作品のゴールをゆるやかに想像しながら記録をし、素材を持ち帰ってスタジオで実験・検証しながら作品を制作していく過程は、どことなく人類学者の研究手法と似ている部分があることを以前から意識していた。
コクヨ野外学習センターがどれだけ実践者としての自分を勇気づけてくれただろう。新型コロナウイルスの感染症が収束した後もきっと、僕自身はフィールドでの活動を継続しながら、音に対する実践を技術の視点から考えていくような作品を創作していくはずだ。(2021.2.7 森永泰弘)

1:Ma’Lambuk at Rambu Solo (Funeral)Ceremony (by Toraja group)
Location: Toraja, South Sulawesi Island, Indonesia
Recorded: 28th July 2017

インドネシアはスラウェシ島のトラジャ族の葬式で奏でられる音楽。Ma’Lambukは、女性たちが竪杵で臼の縁や内部をリズミカルに叩き、参列者を葬儀に迎い入れるための音楽だ。葬儀中にうたわれる詠唱、死を嘆く哭歌、数十匹の水牛や豚の供儀、トパレンゲと呼ばれる葬儀の司会進行役の朗読が同時多発的に行われるため、わけがわからないくらい混沌とした状態のなかでおよそ1週間レコーディングを行った。「死するため(葬式をするため)に生きる」と言われているトラジャ族の渾身の儀式だ。

2: Buffalo Sacrifice (by Bahnar Hrong group)
Location: Đắk Đoa, Gia Lai, Central Highland of Vietnam
Recorded: 07th September, 2017

この曲はバナ・フロン族によるもので、水牛を供儀する儀式で演奏される音楽。ベトナムでは、少数民族たちが民族・集落・地域別に様々なゴング音楽を儀式や祝祭で演奏する。バナ族はそのなかでもゴングの演奏が上手でバリエーションも豊富な民族だ。2015年頃より東南アジアを中心に旅をして民族たちのゴング文化を集中的に記録してきたが、バナ族のゴング音楽は大勢で演奏するのがほとんどで、レコーディングするのは非常に難しかったのを憶えている。

3: Sole Oha Ritual (by Lamaholot group)
Location: Adonara island of Nusa Tenggara Timur, Indonesia
Recorded: 08th October 2018

小スンダ列島を構成するインドネシアの東ヌサ・トゥンガラ州アドナラ島に居住するラマホロ族の祝祭音楽。数十人が一列となって足首に巻いた鈴(グリン・グリン)を踏み鳴らし、コブ付きゴングと太鼓を叩きながら輪になっていく。輪の中では、男性数人がコール&レスポンスをしながら酔拳のようにフラフラと踊りながら大きな刀を振りまわすので、輪に入ってレコーディングしている最中は、いつ首がとんでもおかしくない状況だった。

4: Qilin Dance (by Naxi group)
Location: Lijiang, Yunnan province of China
Recorded: 31ST July 2014

中国神話に登場する架空の動物、麒麟(の舞)-日本では麒麟獅子舞-のための祭礼音楽。約半年ほど滞在した雲南省の麗江で、村人たちが10年振りに「チーリンの舞」を子供達に向けて行うということで、図々しくもレコーディングさせてもらった。必ずしも演奏が素晴らしいというわけではなかったが、長年中断していたこの地の伝統風習を復活させるという絶好のタイミングだったので、自分としては貴重な録音物だと言える。以後、毎年この地で「チーリンの舞」をやっているそうだ。

5: Panapang Mbaru (by Sumba group)
Location: Sumba island of Indonesia
Recorded: 17th of September 2018

インドネシアのスンバ島で記録したゴング音楽。この地のゴング文化は東南アジアのなかでも異色のものだった。近隣のバリ島やロンボック島のゴングやガムラン音楽とは異なり、スンバ島のゴング音楽は、電子音楽やサン・ラーを彷彿させるかのようなオリジナリティ溢れるコスミックな音楽がたくさんあった。ゴングの配置の仕方も独特で、何故かヴェトナム中部のチュル族のそれと似ていた。縄でゴングを縛りあげてドラムセットのように配置した状態から、撥を使って一気に乱れ打ちしていくサウンドは録音者である僕自身の身体も、知らないうちに踊ってしまうくらいノリの良いものだった。なかでも、ここに収録した音源は90年代初頭のミニマルテクノを彷彿させるようでおもしろい。ロケーションが駐車場のような場所であったことから、叩いた音色が壁に跳ね返ってくる反響をどれだけ抑えて録音できるかが腕の見せ所でもあった。現場の空気感を出しつつも音として聴きやすい質感を目指し、一切のポストプロダクション加工を行わないで済むよう、マイクのポジショニングには苦労した。

DJミックス by 森永泰弘
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