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耳の野外学習#2|「ふく」Fuku/Blow|Yasuhiro Morinaga

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「たたく」「ふく」「はじく」とは、楽器またはモノを鳴らすための行為である一方、働くこと、生活すること、遊ぶための、最も原始的な人間本来の生きていくための営み=技術だといえるはずだ。今回のDJミックスは、そんなことを考えながら、ここ数年アジアを中心にレコーディングしてきた民族の音楽や環境音をセレクト(アジアの音ではないものもいくつか含まれているが)し、ポストプロダクションでミキシングや電子的な加工を施しながら、リニアな音の時間を創造した。
人類学者たちは、調査地で現地語を学び、長期間地域に密着し、そこの情報をくまなく記述・記録した上で、ラボで検証・実験しながら論文や民族誌としてまとめあげていく。僕の場合は、現地の言葉もわからないし地域に密着しながら文字で記述をしていくような形も採用していない。むしろ楽器や音を軸に、その文脈や周縁を追い続けながらレコーディングしているに過ぎない。自身の目と耳を頼りに作品のゴールをゆるやかに想像しながら記録をし、素材を持ち帰ってスタジオで実験・検証しながら作品を制作していく過程は、どことなく人類学者の研究手法と似ている部分があることを以前から意識していた。
コクヨ野外学習センターがどれだけ実践者としての自分を勇気づけてくれただろう。新型コロナウイルスの感染症が収束した後もきっと、僕自身はフィールドでの活動を継続しながら、音に対する実践を技術の視点から考えていくような作品を創作していくはずだ。(2021.2.7 森永泰弘)

1: Balinese Suling Gambung Ensemble
Location: Bali, Indonesia
Recorded: 6th May 2019

この音源は、インドネシアの女性演出家、カミラ・アンディー二によるバリ島の伝統思想を題材にした舞台作品「みえるもの、みえざるもの」で使用したもの。バリ島には笛や太鼓など様々な楽器を演奏できるマルチ・インストゥルメンタリストがたくさんおり、この音源以外にも島に根付く楽器や音楽を数多くレコーディングさせてもらった。これまでバリ島は観光地のイメージが強かったが、いざ行ってみると、地元の人たちでしかアクセスできないような儀式がいまだ多く存在していることを知り、バリ島に対する固定観念を払拭することができた。

2: Mongolian Sharman conducting a healing ritual
Location: Ulaanbaatar, Mongolia
Recorded: 8th March 2018

北方アジアのシャーマニズムがバイカル湖を起点に広がっていったのかもしれないと思いつき、首都のウランバートルやチャンドマニを旅してまわった。ウランバートルでは、地域のシャーマンセンターで情報を聞き取り、そこに在籍されているシャーマンの方から厄除け的な儀礼をしてもらった。これは、その際にレコーディングした音源だ。口琴や鈴を鳴らしながら、何かに取り憑かれたかのように周囲を暴れ回りながら儀式を執り行うさまは、とてもパフォーマティブであった。頭巾から垂れたお札のようなものが顔を覆い、表情が全く見えないシャーマンの佇まいは、その後訪れることになるベトナム北部のモンのシャーマンと同じで興味深かった。どうやらモンの先祖がモンゴルからやってきたという話もあながち根拠がないわけではなさそうだ。

3: Thresing (by Ede-Bih group)
Location: Buôn Ma Thuột, Đắk Lắk, Central Highland of Vietnam
Recorded:6th September 2017

オストロネシア語のマレー・ポリネシア語派に属するエデ・ビー族の女性たちによる大小の竹笛(Dinh Tut)のアンサンブル。Dinh Tutは、ゴング演奏のスキルが未熟な⼦供や若⼿の奏者たちが、普段の練習でゴングの代わりに使うものらしい。エデ・ビー族の人たちは、教会に保管されてあるゴングのセットを簡単に持ち運ぶことができないので、基本、この竹笛(Dinh Tut)を手元に置いて練習するそうだ。現地を訪問したときも、牧師にお願いして教会にあるゴングをわざわざ取りに行ってもらったのを覚えている。

4: Train
Location: Maha Sarakham, Isan region of northeast Thailand
Recorded: 12th June 2018

ユネスコによる『世界の伝統音楽コレクション:南ラオス』のLPにコンパイルされている「Lot Fay Tay Lang(The Train Goes Down The Track)」が大好きで、いつかこの曲を生で聴いてみたいという衝動に駆られ、バンコクで映画の仕事を終えた翌日、レゲエバンドでボーカルを務めるタイ人の友人とイサン地方まで行き、ケーン(マウスオルガン)奏者の大巨匠ソンバット・シムラさんを訪問してこの曲を演奏してもらった。この曲は、電車の走行音を模倣した曲で、南ラオスだけでなくタイ東北部でも馴染みの曲のようだ。ソンバットさんもこの曲を当然知っていて、彼独自の節をつけながら演奏くれたのが感慨深かった。

DJミックス by 森永泰弘
Produced by 若林恵
Commissioned by コクヨ野外学習センター

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「たたく」「ふく」「はじく」とは、楽器またはモノを鳴らすための行為である一方、働くこと、生活すること、遊ぶための、最も原始的な人間本来の生きていくための営み=技術だといえるはずだ。今回のDJミックスは、そんなことを考えながら、ここ数年アジアを中心にレコーディングしてきた民族の音楽や環境音をセレクト(アジアの音ではないものもいくつか含まれているが)し、ポストプロダクションでミキシングや電子的な加工を施しながら、リニアな音の時間を創造した。
人類学者たちは、調査地で現地語を学び、長期間地域に密着し、そこの情報をくまなく記述・記録した上で、ラボで検証・実験しながら論文や民族誌としてまとめあげていく。僕の場合は、現地の言葉もわからないし地域に密着しながら文字で記述をしていくような形も採用していない。むしろ楽器や音を軸に、その文脈や周縁を追い続けながらレコーディングしているに過ぎない。自身の目と耳を頼りに作品のゴールをゆるやかに想像しながら記録をし、素材を持ち帰ってスタジオで実験・検証しながら作品を制作していく過程は、どことなく人類学者の研究手法と似ている部分があることを以前から意識していた。
コクヨ野外学習センターがどれだけ実践者としての自分を勇気づけてくれただろう。新型コロナウイルスの感染症が収束した後もきっと、僕自身はフィールドでの活動を継続しながら、音に対する実践を技術の視点から考えていくような作品を創作していくはずだ。(2021.2.7 森永泰弘)

1: Balinese Suling Gambung Ensemble
Location: Bali, Indonesia
Recorded: 6th May 2019

この音源は、インドネシアの女性演出家、カミラ・アンディー二によるバリ島の伝統思想を題材にした舞台作品「みえるもの、みえざるもの」で使用したもの。バリ島には笛や太鼓など様々な楽器を演奏できるマルチ・インストゥルメンタリストがたくさんおり、この音源以外にも島に根付く楽器や音楽を数多くレコーディングさせてもらった。これまでバリ島は観光地のイメージが強かったが、いざ行ってみると、地元の人たちでしかアクセスできないような儀式がいまだ多く存在していることを知り、バリ島に対する固定観念を払拭することができた。

2: Mongolian Sharman conducting a healing ritual
Location: Ulaanbaatar, Mongolia
Recorded: 8th March 2018

北方アジアのシャーマニズムがバイカル湖を起点に広がっていったのかもしれないと思いつき、首都のウランバートルやチャンドマニを旅してまわった。ウランバートルでは、地域のシャーマンセンターで情報を聞き取り、そこに在籍されているシャーマンの方から厄除け的な儀礼をしてもらった。これは、その際にレコーディングした音源だ。口琴や鈴を鳴らしながら、何かに取り憑かれたかのように周囲を暴れ回りながら儀式を執り行うさまは、とてもパフォーマティブであった。頭巾から垂れたお札のようなものが顔を覆い、表情が全く見えないシャーマンの佇まいは、その後訪れることになるベトナム北部のモンのシャーマンと同じで興味深かった。どうやらモンの先祖がモンゴルからやってきたという話もあながち根拠がないわけではなさそうだ。

3: Thresing (by Ede-Bih group)
Location: Buôn Ma Thuột, Đắk Lắk, Central Highland of Vietnam
Recorded:6th September 2017

オストロネシア語のマレー・ポリネシア語派に属するエデ・ビー族の女性たちによる大小の竹笛(Dinh Tut)のアンサンブル。Dinh Tutは、ゴング演奏のスキルが未熟な⼦供や若⼿の奏者たちが、普段の練習でゴングの代わりに使うものらしい。エデ・ビー族の人たちは、教会に保管されてあるゴングのセットを簡単に持ち運ぶことができないので、基本、この竹笛(Dinh Tut)を手元に置いて練習するそうだ。現地を訪問したときも、牧師にお願いして教会にあるゴングをわざわざ取りに行ってもらったのを覚えている。

4: Train
Location: Maha Sarakham, Isan region of northeast Thailand
Recorded: 12th June 2018

ユネスコによる『世界の伝統音楽コレクション:南ラオス』のLPにコンパイルされている「Lot Fay Tay Lang(The Train Goes Down The Track)」が大好きで、いつかこの曲を生で聴いてみたいという衝動に駆られ、バンコクで映画の仕事を終えた翌日、レゲエバンドでボーカルを務めるタイ人の友人とイサン地方まで行き、ケーン(マウスオルガン)奏者の大巨匠ソンバット・シムラさんを訪問してこの曲を演奏してもらった。この曲は、電車の走行音を模倣した曲で、南ラオスだけでなくタイ東北部でも馴染みの曲のようだ。ソンバットさんもこの曲を当然知っていて、彼独自の節をつけながら演奏くれたのが感慨深かった。

DJミックス by 森永泰弘
Produced by 若林恵
Commissioned by コクヨ野外学習センター

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