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106 第94話

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「死んだ!?小早川が?」
「おいや。自殺。あんたがさっきまでおった研究室から飛び降りた。」
「なんで?」
「わからん。」
「本当ですか…。」
「本当。いよいよヤバい感じや。三波あんた、今どこや。」
「まさにいま新幹線降りたところです。金沢駅です。」
「よしわかった。んならそのまま駅におってくれ。迎え寄越す。」
「迎えですか?」
「あぁこの手際の良さ、マジもんの仕業や。このままやとあんたの身に危険が及ぶのは時間の問題。」
三波はとっさに壁を背にした。そしてあたりを見回す。制服姿の学生、スーツを着た仕事上がりの男。携帯の液晶画面を巧みな指使いでなぞるOL風の女性。
ここを行き来すす殆どの人間が、束縛から開放されたような感じを受ける。
「駅の中ですか…。今の時間帯は人多いですよ。」
「人が多いんやったらなお結構。少ないより安全や。すぐに迎え寄越す。金沢駅のどこにおるんや。」
「あーゆうたろうのところです。」
「ゆうたろう?」
「ええ。」
「あれ?あの人形の。」
「はい。」
「わかった。待っとれ。」
新幹線乗り場から出てきた三波の姿を追っていた空閑は、駅の金沢港口で壁を背にする彼の姿を見て歯噛みした。
ーだよな…。
ー東京から金沢まで2時間半。そんだけ時間があれば携帯ひとつでちゃんフリにひと通りの状況を伝えることができる。
ー要はその状況をここでどう挽回するかということだ。
一旦外に出てしまった情報。事後に出本の蛇口を締めて得られる効果は少ない。一旦外に出た情報は独り歩きする。そして人から人へ伝播する。口止めは事が起こってからでは何の意味も持たない。ここで空閑に求められるのは、出本の情報の信憑性が疑わしいと受け手に思わせることだ。
ーしかし光定にはうまくいったが、三波にもうまくいくかどうか?この力。
ーこんな人混みのなかであいつに近づいて、いざってときに、変に騒がれたりするとどうにもならんぞ…。
ーしばらく様子でも見るか。
壁を背にする三波を見て空閑は気がついた。
電話を終えた彼はスマートフォンを触っていない。
何かを観察するように周囲を見ている。
ーなるほど誰かを待っているのか。
ーそれにしても厳重な警戒ぶりだ。これなら怪しいやつが近づくのも難しい。
ープロの指南役がいるってわけか…。
ーしかしこのまま放っておくとあいつは第三者と直接接触する。そうなると手遅れだ。
ーイチかバチかやってみるか。
一旦駅の外に出た空閑は、そのまま回り込むように移動し三波に接近した。
そして加賀人形を模したキャラクターである郵太郎の像の前で自撮りをする。
しかしそれがどうもうまくできない。
「あのーすいません。」
不意に声をかけられた三波はそちらを見る。目の前に男が立っていた。
「何か?」
「あの…写真撮ってもらえませんか。」
「写真?」
男は自分の背後にある郵太郎をさしている。
「あ、あぁ…。」
「ありがとうございます。これでお願いします。」
距離を詰めてスマホを手渡そうとする彼の様子に三波は戸惑った。瞬間、彼は目の前の男と目があってしまった。
「えーっとこのボタンを押せばシャッターが切れますんで…。」
「あ…はい…。」
シャッター音
「ありがとうございました。」
「いえ…。」
「今日手に入れた情報はすべてデタラメだ。小早川は気が狂っていた。お前は疲れている。このままおとなしく家に帰るんだ。そこでじっとしていろ。」
こう言って空閑は三波の肩を軽く叩き、その場から立ち去った。
立ち去る空閑の姿を見届けて三波もまた金沢駅を後にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おかしい…。」
「どうしましたデスク?」
「いや、キャップと連絡つかないんだ。」
「え?キャップって東京でしょ、いま。」
「ううん。もう新幹線で金沢に着いているはずなんだ。」
「え?もう?」
「うん。」
「私、見てきましょうか。駅のほう。」
「見に行って何になるのさ。子供が迷子になったわけじゃないんだしさ。」
「たしかに…。」
黒田の携帯が震える
ーえ?片倉さん?
席を外した黒田はそれに出た。
「はい。黒田です。」
「まずいことになった。」
「三波ですか。」
「ああ。」
「何がどうなっているんですか。あいつと連絡が取れないんですよ。」
「わからん。ウチの若いモンに駅まで迎えに行かせたんや。ほしたらおらんがやってんて…。」
「何で…。」
「黒田。心当たりあるか?」
「いえ…。」
「実は小早川が死んだ。」
「え!?」
「んで三波にも危険が及ぶ可能性があるから、ウチの若いもんを迎えに行かせたんや。」
「でもいなかった。」
「ああ。」
「誰かに連れ去られたとかは?」
「わからん。駅構内のカメラはいま解析中や。」
「くそっ!」
「なぁ黒田。何でもいい。なにか心当たりがないか。」
頭をかきむしって黒田は考えた。
三波失踪を目の当たりにして気が動転しているのか、今日一日の彼の言動を追うも気が散ってしまう。
「待て待て。キャップ。キャップはここで記者の指揮を取れ。石大は京子に行かせろ。」
「京子?」
「うん。京子に行かせろ。」
「え…。でもあいつ特集抱えてるじゃないですか。しかも明日配信でしょ。」
「ああ。明日の配信から連チャンで3回ほど配信する予定さ、でもそれはそれ。あいつにも現場手伝ってもらおう。」
「あ…いや…この件は自分がやります。」
「なんでさ。」
「自分がやらないといけない気がするんです。」
「何そのぼやっとした理由。」
「いいから!俺がやりますよ!」55
「まさか…。」
「何ぃや。」
「また大学病院に行ったとか…。」
「いやそれはない。石大には近づくなって俺は口酸っぱく言った。本人もそれは了承済みや。」
「じゃあ…。」
「あ、待て。キャッチや。折り返す。」
電話を切った黒田は休憩コーナーのソファに力なく座った。
「…なんだ。だとしたら何が考えられる…。」
「おいどした?」
力なくうなだれる様子の黒田を見かけ、心配になったのか通りがかった安井が声をかけた。
「ヤスさん…。」
「なんだお前、随分としょぼくれて。今朝からの俺に対する失礼な言動。少しは反省でもしたか。」
「三波が行方不明になりまして。」
「あ、そう…うん?え?いまなんて言った?」
「三波と連絡が取れなくなったんですよ。」
「連絡が取れないって?」
「メールもSNSも電話もだめです。」
「電話も?」
「おかけになった電話は…って感じです。」
「マジかよ…。」
黒田はその言葉には答えずにうなだれた。
「待てよ黒田。考えすぎかもしれねぇぞ。三波あいつ取材中とかで取り込んでて連絡がつかないだけかもしれないぞ。早まるなって。」
「いやあり得ないんです。この状況で連絡がつかないことが。」
「あり得ない?」
「はい。」
黒田の携帯が震えた。
「はい。」
「拉致られたわけじゃない。三波は自分でどこかに消えた。」
「え?」
「カメラの解析結果が出た。あいつは西口の郵太郎のところで迎えを待っとった。けど何を思ったんかわからんけど、
どっかに行ってしまった。」
「なんで…。」
「わからん。アイツ自身、身の危険を感じとった。ほやから俺はとっとと金沢に帰るように言った。こっちからの迎えの件も了解済みやった。ほうなんにこれや。」
「よほどなにか気になることが起こったか…。」
「自分の身に降りかかる危険をかなぐり捨てるほどの何かが?」
「しかしだとすると、その徴候みたいなものがカメラに写っていてもおかしくないはず…。」
「あ、まて黒田。」
「はい?」
「俺、いまその映像を見とるんやけど…。あれ?なんか代わりに写真撮ってやっとる。」
「写真を撮る?」
「おう。なんか観光客か知らんけど郵太郎とツーショットみたいな感じの写真を撮ってやっとる。」
「それは関係ないでしょう。」
「ほうやよな…。いや、でもこの直後やぞ三波がここからおらんくなるの。」
「写真撮影して三波は居ても立っても居られない状態になって、その場から立ち去った…。んな馬鹿な。」
「バカみたいやけど…一応こいつ調べてみるか…。」
とりあえず警察としては三波の行方を調べる。ちゃんフリはできるだけことを大きくしないでほしい。そう言って片倉は電話を切った。
「黒田。大丈夫か。」
「あ…ええ…。」
「わかった。三波だな。俺の方でもあたってみる。」
「すいません。」
「なんでお前が謝んだよ。」
「…。」
「俺らは仲間だろ。」
安井は拳を黒田に向けて握った。
黒田はそれに応えるように彼もまた拳を握って、彼のそれを軽く叩いた。
ため息をついた黒田の目に空席のキャップ席が映りこんだ。
「キャップ。きっと片倉さんがなんとかしてくれる。頑張ってくれ。」
「安井君が編集室で何をやってるのかどんな手段を使ってでもいい。すぐに突き止めろ。」
「手段を選ばず…ですか…。」
「これ以上の詮索は無用。いいな。これは社長命令だ。」
「すぐにとは具体的に…。」
「本日中。」78
遠くにある安井の背中を見て、黒田は自分にしか聞こえない程度の声でつぶやいた。
「俺は俺の仕事をすることにするよ。」
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「おいや。自殺。あんたがさっきまでおった研究室から飛び降りた。」
「なんで?」
「わからん。」
「本当ですか…。」
「本当。いよいよヤバい感じや。三波あんた、今どこや。」
「まさにいま新幹線降りたところです。金沢駅です。」
「よしわかった。んならそのまま駅におってくれ。迎え寄越す。」
「迎えですか?」
「あぁこの手際の良さ、マジもんの仕業や。このままやとあんたの身に危険が及ぶのは時間の問題。」
三波はとっさに壁を背にした。そしてあたりを見回す。制服姿の学生、スーツを着た仕事上がりの男。携帯の液晶画面を巧みな指使いでなぞるOL風の女性。
ここを行き来すす殆どの人間が、束縛から開放されたような感じを受ける。
「駅の中ですか…。今の時間帯は人多いですよ。」
「人が多いんやったらなお結構。少ないより安全や。すぐに迎え寄越す。金沢駅のどこにおるんや。」
「あーゆうたろうのところです。」
「ゆうたろう?」
「ええ。」
「あれ?あの人形の。」
「はい。」
「わかった。待っとれ。」
新幹線乗り場から出てきた三波の姿を追っていた空閑は、駅の金沢港口で壁を背にする彼の姿を見て歯噛みした。
ーだよな…。
ー東京から金沢まで2時間半。そんだけ時間があれば携帯ひとつでちゃんフリにひと通りの状況を伝えることができる。
ー要はその状況をここでどう挽回するかということだ。
一旦外に出てしまった情報。事後に出本の蛇口を締めて得られる効果は少ない。一旦外に出た情報は独り歩きする。そして人から人へ伝播する。口止めは事が起こってからでは何の意味も持たない。ここで空閑に求められるのは、出本の情報の信憑性が疑わしいと受け手に思わせることだ。
ーしかし光定にはうまくいったが、三波にもうまくいくかどうか?この力。
ーこんな人混みのなかであいつに近づいて、いざってときに、変に騒がれたりするとどうにもならんぞ…。
ーしばらく様子でも見るか。
壁を背にする三波を見て空閑は気がついた。
電話を終えた彼はスマートフォンを触っていない。
何かを観察するように周囲を見ている。
ーなるほど誰かを待っているのか。
ーそれにしても厳重な警戒ぶりだ。これなら怪しいやつが近づくのも難しい。
ープロの指南役がいるってわけか…。
ーしかしこのまま放っておくとあいつは第三者と直接接触する。そうなると手遅れだ。
ーイチかバチかやってみるか。
一旦駅の外に出た空閑は、そのまま回り込むように移動し三波に接近した。
そして加賀人形を模したキャラクターである郵太郎の像の前で自撮りをする。
しかしそれがどうもうまくできない。
「あのーすいません。」
不意に声をかけられた三波はそちらを見る。目の前に男が立っていた。
「何か?」
「あの…写真撮ってもらえませんか。」
「写真?」
男は自分の背後にある郵太郎をさしている。
「あ、あぁ…。」
「ありがとうございます。これでお願いします。」
距離を詰めてスマホを手渡そうとする彼の様子に三波は戸惑った。瞬間、彼は目の前の男と目があってしまった。
「えーっとこのボタンを押せばシャッターが切れますんで…。」
「あ…はい…。」
シャッター音
「ありがとうございました。」
「いえ…。」
「今日手に入れた情報はすべてデタラメだ。小早川は気が狂っていた。お前は疲れている。このままおとなしく家に帰るんだ。そこでじっとしていろ。」
こう言って空閑は三波の肩を軽く叩き、その場から立ち去った。
立ち去る空閑の姿を見届けて三波もまた金沢駅を後にした。
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「おかしい…。」
「どうしましたデスク?」
「いや、キャップと連絡つかないんだ。」
「え?キャップって東京でしょ、いま。」
「ううん。もう新幹線で金沢に着いているはずなんだ。」
「え?もう?」
「うん。」
「私、見てきましょうか。駅のほう。」
「見に行って何になるのさ。子供が迷子になったわけじゃないんだしさ。」
「たしかに…。」
黒田の携帯が震える
ーえ?片倉さん?
席を外した黒田はそれに出た。
「はい。黒田です。」
「まずいことになった。」
「三波ですか。」
「ああ。」
「何がどうなっているんですか。あいつと連絡が取れないんですよ。」
「わからん。ウチの若いモンに駅まで迎えに行かせたんや。ほしたらおらんがやってんて…。」
「何で…。」
「黒田。心当たりあるか?」
「いえ…。」
「実は小早川が死んだ。」
「え!?」
「んで三波にも危険が及ぶ可能性があるから、ウチの若いもんを迎えに行かせたんや。」
「でもいなかった。」
「ああ。」
「誰かに連れ去られたとかは?」
「わからん。駅構内のカメラはいま解析中や。」
「くそっ!」
「なぁ黒田。何でもいい。なにか心当たりがないか。」
頭をかきむしって黒田は考えた。
三波失踪を目の当たりにして気が動転しているのか、今日一日の彼の言動を追うも気が散ってしまう。
「待て待て。キャップ。キャップはここで記者の指揮を取れ。石大は京子に行かせろ。」
「京子?」
「うん。京子に行かせろ。」
「え…。でもあいつ特集抱えてるじゃないですか。しかも明日配信でしょ。」
「ああ。明日の配信から連チャンで3回ほど配信する予定さ、でもそれはそれ。あいつにも現場手伝ってもらおう。」
「あ…いや…この件は自分がやります。」
「なんでさ。」
「自分がやらないといけない気がするんです。」
「何そのぼやっとした理由。」
「いいから!俺がやりますよ!」55
「まさか…。」
「何ぃや。」
「また大学病院に行ったとか…。」
「いやそれはない。石大には近づくなって俺は口酸っぱく言った。本人もそれは了承済みや。」
「じゃあ…。」
「あ、待て。キャッチや。折り返す。」
電話を切った黒田は休憩コーナーのソファに力なく座った。
「…なんだ。だとしたら何が考えられる…。」
「おいどした?」
力なくうなだれる様子の黒田を見かけ、心配になったのか通りがかった安井が声をかけた。
「ヤスさん…。」
「なんだお前、随分としょぼくれて。今朝からの俺に対する失礼な言動。少しは反省でもしたか。」
「三波が行方不明になりまして。」
「あ、そう…うん?え?いまなんて言った?」
「三波と連絡が取れなくなったんですよ。」
「連絡が取れないって?」
「メールもSNSも電話もだめです。」
「電話も?」
「おかけになった電話は…って感じです。」
「マジかよ…。」
黒田はその言葉には答えずにうなだれた。
「待てよ黒田。考えすぎかもしれねぇぞ。三波あいつ取材中とかで取り込んでて連絡がつかないだけかもしれないぞ。早まるなって。」
「いやあり得ないんです。この状況で連絡がつかないことが。」
「あり得ない?」
「はい。」
黒田の携帯が震えた。
「はい。」
「拉致られたわけじゃない。三波は自分でどこかに消えた。」
「え?」
「カメラの解析結果が出た。あいつは西口の郵太郎のところで迎えを待っとった。けど何を思ったんかわからんけど、
どっかに行ってしまった。」
「なんで…。」
「わからん。アイツ自身、身の危険を感じとった。ほやから俺はとっとと金沢に帰るように言った。こっちからの迎えの件も了解済みやった。ほうなんにこれや。」
「よほどなにか気になることが起こったか…。」
「自分の身に降りかかる危険をかなぐり捨てるほどの何かが?」
「しかしだとすると、その徴候みたいなものがカメラに写っていてもおかしくないはず…。」
「あ、まて黒田。」
「はい?」
「俺、いまその映像を見とるんやけど…。あれ?なんか代わりに写真撮ってやっとる。」
「写真を撮る?」
「おう。なんか観光客か知らんけど郵太郎とツーショットみたいな感じの写真を撮ってやっとる。」
「それは関係ないでしょう。」
「ほうやよな…。いや、でもこの直後やぞ三波がここからおらんくなるの。」
「写真撮影して三波は居ても立っても居られない状態になって、その場から立ち去った…。んな馬鹿な。」
「バカみたいやけど…一応こいつ調べてみるか…。」
とりあえず警察としては三波の行方を調べる。ちゃんフリはできるだけことを大きくしないでほしい。そう言って片倉は電話を切った。
「黒田。大丈夫か。」
「あ…ええ…。」
「わかった。三波だな。俺の方でもあたってみる。」
「すいません。」
「なんでお前が謝んだよ。」
「…。」
「俺らは仲間だろ。」
安井は拳を黒田に向けて握った。
黒田はそれに応えるように彼もまた拳を握って、彼のそれを軽く叩いた。
ため息をついた黒田の目に空席のキャップ席が映りこんだ。
「キャップ。きっと片倉さんがなんとかしてくれる。頑張ってくれ。」
「安井君が編集室で何をやってるのかどんな手段を使ってでもいい。すぐに突き止めろ。」
「手段を選ばず…ですか…。」
「これ以上の詮索は無用。いいな。これは社長命令だ。」
「すぐにとは具体的に…。」
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